ミリア・パレット ②
「ふぅ……」
2限後、休み時間。
3限まではあと少し。首はまだ痛む。
俺は前を向こうとしては右を向き、前を向こうとしては繰り返していた。徐々に前を向けてきているような気はする。
さっきまで右隣で俺におまじないをかけてくれていたククは、ロリたちがたむろしている教室前の方に行ってしまった。
前の席の赤髪ロングちょんまげのティナも、同じく教室前へと行っている。斜め前の紫髪の子も同様。俺の席の周りには誰もいない。
考えてみれば、俺は1限後の休み時間に積極的に話し掛けると決意したはずだが、この首痛が起こったせいで、まだ話し掛けに行けていない。
……まあ、もう少し、治ってからでいいか……。
……そう思い、俺は先に首を治すことに専念する。
と。
誰かが俺を見ている視線を感じる。見れば、教室の後ろ扉付近から俺を見ているロリが1人。
あの子は確か、俺がチューリップ鶴をあげた、金髪ロングの、えー、誰だ……あの子の椅子、廊下側から2番目、前から2番目に座っている……目を細め、なんとか視認する。
……ミリア・パレット。というらしかった。
ミリアは、俺の視線に気付くと、はにかみながら駆け寄ってきた。いや、駆け寄ってきてくれた。
「あ!」
ミリアは俺の目の前で立ち止まり、言った。
「あ」
俺もあ、と言った。
正直、可愛かった。
「ほら!」
ミリアはほらと言って、後ろ手に隠し持っていたものを俺の前に出した。
それは、俺が昨日あげた鶴だった。
まだ持っていてくれたのか……。
「あ、俺があげたやつ」
「うん! ぱたぱたー」
ミリアは俺の目の前で嬉しそうに鶴を斜めに揺らし、鶴が飛んでるように見せかける。
「おお」
それを見て、こんなものでも喜んでくれるのかと、俺は嬉しさがこみ上げる。
チューリップ鶴を見てこれ違うと言って怒ったココミとは大違いだ。
「かわいい」
ミリアははにかみながら言った。
「そ、そう?」
「うんっ!」
「そ、そうか……」
ミリアの嬉しそうな顔に嬉しくなりつつも、俺はまだ自分を出し切れていない。
こういう子供には、もっと心を開いて接したい気持ちがあるが……なかなか上手くいかない。
本当だったら、よしよし良い子だ~可愛いな~ほんとうにミリアは~なんて言って褒めてやりゲフンゲフン。
キーンコーンカーンコーン。
その時、3限が始まる室内チャイムが鳴った。
時が経つのは早いものだ……(しみじみ……)。
「なっちゃった」
そう言って、ミリアは自分の席へと戻っていった。
前の方に集まっていたロリたちも、自分の席へと戻っていく。
黒髪ロングポニテのアオウ先生が教室に入ってきて、ククやティナ、紫髪の子も戻ってくる。
「それじゃあ、3時間目の授業、始めるよー」
クラスの生徒たちが全員座っているのを確認したアオウ先生は、授業開始の合図をし、3限が始まった。