表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の学園がもはやギャルゲー  作者: ヘルプ
1年生の教室編
122/124

クク・エクレー ②


「ぐがー……ぐー……、…………―――はっ!」


耳に入ってくる、再びの喧噪によって俺は目を覚ます。

口から出ていたよだれを拭い、机に垂れていたよだれをなんとはなしに拭う。

ぼんやりとした意識のまま、顔を上げ、黒板上の時計を確認する。

気付けば、2限が終わっていた。


「っ……痛てててて」


首が痛い。周りを見回そうとした瞬間、激痛が走り、首が動かせなくなる。

俺は首の辺りをさする。どうやら無理な体勢で寝ていたせいで、首に負荷がかかっていたようだった。

……やべぇ、前が向けねぇ……。

右を向いたまま、動かせない。


右には、桃色ゆるふわロングのクク・エクレーが茶色い熊のぬいぐるみを抱えたまま、顔だけを俺に向け、不思議そうに俺をじっと見ていた。

桃色の大きな瞳が、上目遣いに俺を見つめる。


「……」

「ふみゅみゅ」


ククは俺と目が合うと、ふみゅみゅと言いながらぬいぐるみに顔を埋めた。

そして再び、ぬいぐるみから顔を出し、あごをくっつけた状態で、俺と目が合う。


「……」

「……(じー)」


ククと目が合うこと、十数秒。

俺はどうしたらいいのかわからず、しかし顔を前に向けることも出来ず、俺は右を向いたまま、ククと目が合ったまま。

そうしている間にも、少しずつ首痛が浸食してくる。首がってくる。


「……(いてぇ……)」

「……おくび、いたいの?」


俺が苦痛に顔をゆがめると、ククがそれに気づき、甘い癒し声で、首を傾ける。


「……ん? あ、ああ。痛い」


俺が声をかけるより先にククが話し掛けてくれたことに少し驚きながらも、俺は首の痛みに耐えながら、返した。


「だいじょうぶぅ? あ、そうだ!」


口を横に引いたような甘ったるい言葉で俺を心配すると、そうだ! と言って立ち上がったかと思えば、俺の方に一歩近付いた。

ククの幼く愛嬌のある顔が近付き、俺はドキリとする。


「え、あ、……なに?」


俺はドギマギしながら聞いた。


「あのね~」


満面の笑みで立つククは、手に持っている茶熊のぬいぐるみを俺の首へと近づけていった。


「こうやってね、いたいいたいの飛んでけ~って言ってなでなですると、いたいのが飛んでいくんだよ~」


言って、ククはぬいぐるみの手の部分を、俺の首筋に当ててなでなでしてくる。


「あ……っ」


ぬいぐるみの生地は柔らかく、なんと表現すればいいのか、しょわしょわとしたなで回しで、く、くすぐったい……あ、あひ……。


「くしゅぐったかった?」


ククが慣れない口の動きで、くしゅぐったかったと聞いてくる。か、かわいい……と思ったが、俺はそれを口にするのがはばかられ、喉の奥に押し込める。


「あ、いや……大丈夫」


俺は手のひらを軽くあげ、大丈夫の意を表する。


「よしよし」


ククはぬいぐるみの手を持ち上げて、首の辺りをよしよしとさする。


「はい。これでなおりましたよ~」


ククは看護婦のように言って、ようやっと俺の首からぬいぐるみの手を離した。

俺は首を少し前に向けてみる。

激痛が走った!


し、しかし……せっかくククが、俺を治してくれる呪文をかけてくれたのだ。

ここは、治ったことに、しておくか……っ。ああやっぱ無理。


俺は無理矢理顔を前に向けようとして、またすぐ右に戻し、言った。


「ああ……ちょっと治ったかも。ククのおかげだ。ありがとう」


「うん♪」


ククは俺の首が治ったことに笑顔を浮かべる。

どうやら、ククは喜んでくれたようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ