目覚めは悪夢から
「う、うわ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!! ……あぁ」
俺は咄嗟に飛び起き、そして、現実に引き戻される。
周りには化け物などいようはずもなく、ただの畳張りの宿屋の一室。
窓から朝日が射し込み、寝間着を濡らす汗びっちょりの火照った身体が、次第に冷やされていくのを感じる。
夢うつつの状態から、少しずつ、意識が現実味を帯び始める。
リアルに発狂してしまったことに、羞恥がこみ上げてきて、数秒、両手で頭を抱えた。
誰かに聞かれなかっただろうか。……聞かれていたら、まずい。
「……くそ、夢かよ」
今までの俺を襲う恐ろしい出来事の数々が夢だったことに安堵するも、同時に、自分がどうしてこんなところにいるのか、今更ながらに、アイデンティティーを疑い始めてしまう。
自分というものが、わからなくなる。
俺はどうしてこんなところで、学園生活を送っているのだろうか……。
陽光が重いまぶたを刺激する。目の下のクマを照らす。
ここは現実。
全て、現実以外のなにものでもない。
「……」
邪神は絵日記を俺に寄越したあの日以来、何の念も飛ばしてこなくなった。
邪神が今、何をしているのか、俺にはさっぱりわからない。
絵日記も面倒くさくて、まったく書いていない。
しかし何も言われない。先週また学園内で魔眼を使ったが、それに対してのお咎めもない。
何をしているのだろうか、あいつは。
何がしたいんだろうか、真剣に。
話し掛けてきたらきたで面倒くさいが、こうも音沙汰がないと、逆に気になってくる。
「……だめだ」
朝から変な夢を見てしまったせいで、気分が重い。
気分が重いせいで、そしてまだ記憶混濁している寝起きも相俟って、昨日の嫌な出来事が思い出される。
俺のせいで、レレイナが、ローゼに……。
あぁ……学園、行きたくねぇ……。
考えるだけで、憂鬱になる。頭がぎりりと痛くなる。
「くっそぉ……」
てゆうか、レレイナと、顔合わせずれぇ……。
憂鬱が晴れない。涼めない晴れない。
俺は頭を重くしたまま布団から出ると、立ち上がり、壁に掛けてあるブレザーに着替える。
朝から最悪だ。
ファックだ。
……しかし、俺は行かなければいけない。あの学園に。そんな気持ちにさせられてしまう。
通わなければ、俺の存在意義が、なくなってしまう。
「通うしかねぇ……」
それに、今週俺が通うのはいつもの教室ではなく、小学1年生の教室。
どうせ1人で部屋で過ごしていたって、悶悶と鬱になるだけだ。
なら、行った方がいい。
俺はブレザーに袖を通すと、着替えを終える。
始業時間が遅めなおかげで、時間には大分余裕がある。
「……」
俺は今一度、布団に入ると、二度寝の体勢に入った。