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異世界の学園がもはやギャルゲー  作者: ヘルプ
物語は、新たな展開へ
118/124

5限目 学活 ラスト ライム・ロファ ①


「ううん……」


5限目。学活。


折り紙交換会終了まで、残り2分。もう時間がない。

ないのだが……。


俺は窓際最前席にいるライムの元に行こうとし、まだ行かずにいる。

なぜなら、座っているライムの元には、1人の少女が折り紙を渡そうとしているからだ。

邪魔をしてはいけない。


俺はその様子を、窓際最後尾の自分の席から見ていた。


しかし、ライムはそれを受け取らない。

受け取らないばかりか、見ようともせず、話し掛けられても、うんともすんとも言わず、俯いていた。


どうして受け取らないのか、どうして返事をしないのか。

それは、人見知りだからなのだろうか……。


少しして、そのロリは諦めて戻っていってしまった。


俺も行こうと思っていたが、その足が動かない。


しかし、残り1分。


今にも周りに囲まれている先生が席につくよう、合図を送ろうとしている。


時間もないし、もう、席に座ってしまってもいいのだが……。


俺は残った2枚の折り紙を手に持ち、悩む。


いや、でも……行くか。


せっかく折ったんだし。


そう思い、俺は急ぎ足でライムの元へと向かった。


ライムの小さな背と頭が近付く。

小さい。他の子に比べて、さらに一回り小さめな体躯。


机の横まで来た。ライムは俯きがちに机を見ている。


どくん。

どくん。

どくん。


……話し掛けてもいいのだろうか。しかし、見て貰えるのだろうか。肩にとんとんと、手を置いて呼びかけてもいいのだろうか。


わからない。ここまできて、何もわからなくなる。


机の上には、ライムが折ったのであろう、俺と同じようなチューリップや、その他よくわからないものが折られていた。


ライムが俺に気付く。

いや、気付いていたのかもしれない。

しかし、びくっとさせたまま、俺を見上げはしない。


「……あ」


俺はあ、と声が出ていた。


「……あの、これ」


俺は咄嗟に、劇画風の人面犬折り紙をライムの机に差し出していた。

ライムはそれをじっと見つめるが、何も言わず、取ろうともしない。

気まずそうに、ただ時が過ぎるのをじっと待っているかのように、そこに座っている。


しかし、その顔のインパクトが凄いからか、すぐに視線を逸らすこともなく、見つめている。

……咄嗟にこっちを出してしまったが、正解だったかもしれない。


そう思い。

俺はそれをライムの机の上にそっと置くと、室内のチャイムが鳴り、先生が手を叩いた。


「みんな-、席に戻ってくださーい」


「……いらない?」


生徒たちが戻っていく中、俺は最後に、返事が貰えるかわからないが、迷惑だったかもと思い、いらなければ自分であとで処分するため、そう聞いていた。


「……」


ライムはおそるおそる俺を見上げると、すぐ視線を机に落とした。


……駄目か。


そう思ったが、次には、ライムは首を小さく横に振った。


「……じゃあ、あげる」


反応があったことにほっとしつつ。

そう言って、流石にほとんど周りが席についていたので、俺は急いで自分の席に戻った。


アオウ先生は俺とライムを見ていたが、すぐに授業終了の号令をかけた。



「それでは、今日の授業はお終いです。みなさん、帰りの用意をしてくださーい」



こうして、俺の今日の学園生活は終了した。



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