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異世界の学園がもはやギャルゲー  作者: ヘルプ
物語は、新たな展開へ
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1年生の教室へ


「助かるよ。君が来てくれると言ってくれて」



新しい教室へと向かいながら、アオウ先生は黒く長いポニテを揺らして笑顔で俺を振り向いた。

その下には、ライム色の髪のライムロファがちょこちょこと先生の後をついていっている。


「そうですか」


言葉を返しながら、俺の心の中は未だにもやもやとした複雑な感情が渦巻き、心ここにあらずだった。

そんな俺の心情を悟ってか、先生は明るい表情を崩さないまま、俺に尋ねた。


「どうしたの? 元気ないね」


「いや……」


俺が言葉を濁していると、そうこうしているうちに、目的の教室へと到着してしまう。


「元気出しなよ。何か悩みがあるんなら、相談に乗るし。それに、きっと、この子たちと触れあえば、元気もらえると思うよ」


「……はい」


言って、アオウ先生は俺を元気づけてくれる。

ポジティブな先生だった。


「じゃあ……入ろうか」


アオウ先生は言うと、扉をガラガラと開けて、先にライムと共に教室の中へと入ってしまう。


教室内は授業が始まっているからか、騒いでいる声は聞こえず、みな一様に席へと座り、大人しく先生が来るのを待っていた。


「夜霧くうん。みんな、待ってるよー」


教壇の上から、アオウ先生が俺に手を振ってくる。


「……」


……やはり入らなければいけないのか。


初めての教室に入る瞬間というものは、何度やっても、慣れる気配がない。


俺はこんなんで、本当に変われるのだろうか……?


そんなことを思いながらも、俺はなんとか中へと足を踏み入れる。


小さなお友達たちが、俺をまじまじと、見つめている。


相変わらずの色とりどりな髪色、髪型が俺を向かい入れる。


いつもと違うのは、その身長がだいぶ低いという点のみ。年齢も幼い分まだ、入りやすい。


なにせロリ。俺を変な目で見てきたりはしない。

それだけが救いだ。


「では、何回もやらせちゃって申し訳ないけど、自己紹介、お願い出来るかな……? えーっと、このクラスで新しく過ごすことになった、夜霧くんです。みんな、静かに聞いてあげてね」


……やはり、そうなるのか……。


また自己紹介だよ……。何度やれば気が済むんだ……。


思いながらも、仕方ないと俺は諦める。


ごくりと息をのみ、クラスを見回す。


ライムロファは、俺から見て右端最前列、教室側から見て窓際最前列の席に座っていた。


俺の席は、たぶん、空席になっている、窓際最後尾、例の主人公席だ。


いや、主人公じゃなくても、俺の身長から考えれば、一番後ろの席が妥当だろう。


「……」


変な目で見られなくても、例えそれがロリでも、衆目の的というのは、緊張してしまう。上がってしまう。


俺はもう一度息をのむと、おもむろに口を開いた。


「……俺の名前は、夜霧千夜と言います。……えー……一週間だけ、このクラスでお世話になります。……皆さん、仲良くしてください。……よろしくお願いします」


俺は無事に自己紹介を終える。

終えると、先生が口を開く。


「はい、ありがとう。じゃあみんな、拍手!」


パチパチパチパチパチ。


「……」


あれ? ……言えた。

……普通に言えたんだが……。



俺は記憶が消し飛ぶこともなく、ロリたちが見てくる中、普通に窓際一番奥の席まで歩いて行き、そこに腰を下ろした。

隣には、またしてもピンク髪で、しかしゆるふわロングの、おっとりしてそうなロリが俺を見ることなく、手元に持った大きめな茶熊のぬいぐるみとたわむれていた。


俺は顎に指を添え、思考する。

かつて、自己紹介に10分を要した新米教師がいた。

その先生のラスト自己紹介を見て、俺はああやればいいのかと納得した。

それに加え、今日は相手がロリだった。緊張度も、だいぶ下がる。

それで、なんとなく、出来てしまったのではないかと、俺は考えた。


……まあ、なんにせよ、上手くできたに越したことはない。



「……」



……こうして、なんのオチもなく、俺はこのクラスの一員になった。






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