最後のココミハル
「……行くか」
昼食を食べ終え、弁当をしまう。
昼食後は、校長室に行き、そしてロリの教室に行くことになっている。
アイとも仲直り出来たことだし、もうこの教室に未練を残していかずに済む。
俺の心は、優しきアイの優しい言葉のおかげで、グロらず、なんとか澄み渡っていた。
と、その時、俺の背後からなにやら柔らかい感触がのしかかってくる。
「やあ!」
「わあ」
見れば、顔の横にすぐココミハルの顔があった。グリーンの瞳。黒茶の腰まで伸びた長い髪。頂の斜をゴムで結い、そこから長いテイルが伸びている。今にも口が触れそうな距離。
首の前に両手が回され、抱きつかれる形になる。
「ど、どうした……?」
俺はおっかなびっくり聞いた。
「遊ぼ!」
ココミハルは、いつもの如く、以前と変わらぬ調子で言った。
「……遊んであげたいのは、山々なんだが……」
遊んであげたいが……。
しかし。
俺は、これから、ロリの教室に行かなきゃいけないんだ……。
「遊んで?」
ココミハルが、甘えた口調で言ってくる。
「……遊んであげたいのは、山々なんだが……」
そう、遊んであげたいのは、山々なんだ……。
だが、俺はこれから、ココミハルがいっぱいいる教室に行かないといけない……。
「パパ」
「ぱ、パパ……!?」
……遊んであげたいのは、山々……パパ!?
「それって……俺のこと?」
「うん、パパ」
「俺……パパ?」
「パパ、遊ぼ!」
……俺、パパになったのか……。
いや、そんなわけがないだろう。ココミが、勝手にそう言っているだけだ。
それならば、気にしないのが、吉だ。
それよりも、俺はこれから、行かなければならない場所がある。
だから、俺は言いたくはないが、言った。
「俺はこの後、別のクラスに一週間、行かなきゃならないんだ……だから、ごめんな……」
「え……?」
ココミハルの表情が、一瞬で落ち込む。
俺はココミハルを悲しませてしまったことを悟る。
しかし、これは決まってしまったこと。俺には、どうしようもない……。
「うぅ……」
ココミハルが悲しそうに呻く。
そして、俺から離れると、自分の席に戻っていってしまった。
「うっ……」
デジャビュ。
いや、以前のアーシャと同じ経験。
俺は胸が痛くなる。
まただ……。
最後の最後で、俺は、ココミハルを悲しませてしまった。
しかし、俺は、行かなければならない。
「……ふぅ」
俺は席を立つと、アイに別れを言って、教室を出た。