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異世界の学園がもはやギャルゲー  作者: ヘルプ
物語は、新たな展開へ
106/124

サウファ・コロン ③


「うーーー……」

「どうしたの?」


1限が終わった。いや、終わっていた。

俺は心の中で鬱になりながら、机に突っ伏していた。


あれだけHR後のトイレで自分を奮い立たせておいて、この結果。このざま

休み時間はまだ何回もあるというのに、俺は1限開始前の1分間で、自信を喪失してしまった。


しかも俺はまだ、気から来る腹痛に悩まされている。とても腹が痛い。便意はなくなったが、頭痛や憂鬱や心のもやもやが俺を襲っている。


早く話し掛けなければ、そう思うのに、行動に移せない。バカ過ぎる。


アイシルフィーは勇気を出して話し掛けてくれた。

だから今度は、俺から話し掛けなければいけないというのに。

本当に愚か者だ、俺は。


「……」


それはそうと、俺の目の前には、水色ショートヘアのサウファコロンが、どうしたの? と言って、不思議そうに俺を見ている。

よくわからないが、俺の様子に疑問を持って、来てくれたらしい。


背は低く、高校生、というよりは少女、と言った方が正しい身なり。羽の形の髪飾りを付け、丸く大きな水色の純朴な瞳を俺に差し向けている。


俺はサウファを腕の合間から確認すると、おもむろに顔を上げた。


「どうしたの?」


サウファは再び、どうしたの? と質問してきた。


「……腹が痛いんだ」


俺は言った。


「どうして?」


サウファは聞いた。


「……俺は今、悩んでいる」

「なにに悩んでるの?」

「……」


俺はその問いかけに、言葉に詰まる。

隣にはアイシルフィーがいるのだ。

アイシルフィーとの関係について、なんて、言えるわけがなかった。


「どうして悩んでるの?」


サウファは、追い打ちをかけるように聞いてくる。

俺は頭を悩ませながら、聞いた。


「……サウファは、悩んだことはないのか?」

「どうして?」

「……気になるから」

「わからない」

「……」


即答だった。即答でわからないだった。


「でも」


サウファは、でも、と続ける。


「あるかもしれない」


そう、サウファは言った。


「わからないけど、あるかもしれない。って……どっちなんだ」


俺は頭を悩ませながら聞いた。


「わからない」


サウファは淡々と言った。


「じゃあ、嬉しかったことは?」


俺は聞いた。


「わからない」


「楽しかったことは?」


「わからない」


「悲しかったことも……ないのか?」


「それは、ある」


「……」


「とても、悲しいことはあった」


「……そうなのか」


「うん」


「……」


俺はその悲しいことがなんなのか、とても気になった。

しかし、俺が言っては何だが、何でもかんでもわからないと言う少女が、悲しいことはあるっていうのが、ある意味不可解で、聞いていいものなのか、判断しかねる。


「……」

「……」


俺とサウファの間に微妙な沈黙が流れていると、その時、キーンコーンカーンコーンと、次の授業が始まる合図の鐘がなった。

生徒たちが慌てて自分の席へと戻っていく。


「じゃあね」


サウファは最後に手を振って、自分の席へと戻っていった。



「……」



悲しいことがなんなのか。

それを聞くことは出来なかったが。

サウファにも、多分、悩みがあったのだろうと、一番前の席に座るその小さな背中を見て、俺は思った。



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