表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の学園がもはやギャルゲー  作者: ヘルプ
物語は、新たな展開へ
105/124

その女、アイシルフィー


「俺が悪い、俺が悪い、俺が悪い……」


HR後。男子トイレ。

用を足した俺は、洗面鏡で自分の顔を見ながら、自分に活を入れていた。

息が重い。アイのことを考えると、心が落ち着かず、腹がぎゅうと痛くなってくる。

憂鬱になる。気分が重くなる。


これから、アイと気まずい関係のまま、このクラスで過ごさなくてはならなくなるのは御免だ。


だから俺は、一刻も早く、やらなければならない。話し掛けなければならない。

仲直りしなければならない。


俺が転入した初日、腹を空かせた俺に、まだ話したこともなかった相手に、勇気を出して話し掛け、一つのおむすびを恵んでくれたのは誰だったのか。


そう、アイシルフィーだ。


アイシルフィーがいたから、俺は一週間、この教室でなんとかやりきることが出来たのだ。

アイが隣じゃなかったら、俺は今頃、どうなっていたかわからない。

それくらい、アイには感謝しているのだ。


だから。


「……」


俺は蛇口を捻ると、すくった水を何度も頭にかけ、熱くなった自分の頭を冷やす。

かかる水は冷たく、脳に染み入るようだった。


ついでに顔も洗い、目を覚ました。

そして大きく深呼吸をすると、トイレから出て、教室に戻った。


一番奥の、自分の席へと向かう。

窓からは光が差し、窓際付近の机が照らされていた。


「……」


自分の席が近付く。アイの姿が近付く。


ドクン。

ドクン。

ドクン。


心臓が大きく跳ね上がる。


「ふぅーー……」


重い息が漏れる。


話し掛けないまま、自分の席に到着した。


座らない。立ったまま。膠着する。タイミングをうかがう。


トイレに行ったのと、活を入れていた為、1限まで時間はもう1分とない。

しかし、1言2言なら十分な時間。


窓から射し込む光が温かい。


「……」


俺は一度大きく息を吸い込むと。


「……」


隣の席へと視線をずらし。


そして。


……席へと着席した。


キーンコーンカーンコーン。


鐘の音が、虚しく心を揺さぶる。


タイムオーバーだった。


俺の姿は真っ白になっていた。


その後のことは覚えていない。


気がつくと、1限が終わっていた。


……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ