俺、学園通います
「学園に行け」
威厳のある居住まい。鼓膜を震わせるような重低音。
俺がここに連れてこられて、最初に発せられた言葉がそれだった。
「我が息子よ」
目の前で偉そうな椅子に腰掛けているそいつが言う。
薄暗く気味の悪い小部屋。薄らぼんやりと霧のようなものが立ちこめている。
俺は目の前で鎮座ましましている、背丈は人間と大して変わらない、全身真っ暗闇な人物と向かいあっていた。俺は、ただ呆然と、その場に棒立ちで立ち尽していた。
「誰が息子だ」
俺に向かって発言するその男に、俺は聞く。
「お前だ。我が邪神の息子よ」
邪神と名乗るそいつが返す。口がどこにあるのかわからない。どこか機械じみた重低音が部屋に響いて霧散する。そして俺には父親も母親もいる。俺が邪神の息子であるはずも、親がこの目の前の人物であるはずもなかった。
「息子? 俺には父親も母親もいる」
息子と言い張る邪神に対して、俺は言い返した。
「そいつらは本当の父親と母親ではない」
邪神が厳かにそれを言い返す。
「なに? ……そうなのか?」
俺は問う。
「お前は十数年の間、向こうで養子として育てられたのだ。我が息子よ」
邪神が言う。
「そうなのか……」
「ああ……」
そこで俺は会話を切り、薄い霧に包まれた小部屋で対峙する2人の間に、微妙な空気が流れる。
邪神はその沈黙を破るように、言葉を発した。
「……我が息子よ。今からお前はこちらの世界で学園に通うのだ。よいな」
その言葉と共に、邪神から邪悪なるドス黒いオーラがえげつなく燃えさかり、俺はそのオーラに気圧される。一滴の汗が頬に流れ落ち、自分に拒否権がないことを悟る。拒否したらどうなるのか……一瞬そのような考えが浮かんだが、下手を打って殺されでもしたら困る為、やむなく俺は従うことにした。
「……なんかよくわからんが」
「よいな」
「あ、ああ……」
……こうして俺は学園に通うことになった。