1話 主人公の素質
冒険者を目指すアマタはなんやかんやで魔王へと変貌する・・・!
この世界の魔王は被親告制だ。
誰かに魔王と決められた時から魔王になる。
もちろん、十人二十人の数では認められないだろう。
それこそ、大きな一つの村全員が魔王と認めるくらいは必要だろう。
僕はアマタ、捨て子だ。
今、僕が住んでいる村の前に捨てられていたらしい。
偶然僕を拾ってくれた今の家族にはとても感謝している、アマタという名前もとても気に入っている。
今日はその恩を返すことができるかもしれない日だ。
今から僕は、魔術の素質を診てもらう。
この村は代々、優秀な冒険者を排出してきたことで有名になっている。
中でも、村の秘術により素質を図ることができるのはこの村だけだろう。
剣技体技など色々な素質があるが、それら中でも魔術の素質だけは生まれ持ってなければ一生魔術を使うことができない。
しかし、魔術の素質が少しでもあればほぼ全ての魔術を扱うことができるようになる。
僕は魔術の素質が少しでもある可能性を伸ばすために色々な努力をしてきた。
魔術以外のほぼ全ての素質を諦め、魔術に関することはなんでもやった。
時には変な目で視られたり、笑いものにされたりもした。
僕の家族はよくこんな事を許してくれたと思う。
しかし、今日この日それらがすべて本当に正しかったのか証明される。
お願いだ、僕の家族に恩返しをさせてくれ。
「次、アマタ。台の上に乗りなさい」
僕の番だ。
僕は不思議な台の上に乗った。
心のなかはずっと祈っている。
お願いだお願いだお願いだお願いだ。
僕が祈っている周りで複数の大人たちが詠唱し始めた。
すると台が浮き始め、周りで円状の棒がいくつも回り始めた。
それがとても綺麗で僕は祈ることも忘れ、ずっと目で棒を追いかけていた。
やがて棒は動きを遅め、いつの間にか棒が止まるのと同時に台も元の場所へ戻っていた。
「――アマタよ」
その声で現実に引き戻される。
そうだ、僕の結果はどうなったんだ。
「僕は魔術を使えるのですか!?」
声が出ていた。
結果を早く知りたかった。
そして
「――――魔術は、使えない。」
その言葉で絶望した。
僕の今までは何だったんだろう。
ずっと一人で使えるわけもないものにしがみつき、そして踊っていただけだったのか。
そう思っている時、
「――君は召喚術が使えるようだ」
少しの希望が見えた気がした。
全く聞いたことのない素質だったが、
今までの行動は無駄では無かったのだと思えた。
「召喚術ってなんですか?」
僕は知りたかった。
それが僕の家族へ恩返しする道標になると信じて。