現在 5
「─違うやんっ!」
「あはは─…」
テレビから笑い声が聞こえてくる。
それを無表情のまま見ながら、夕飯を食べる。
「ごちそうさま」
静かに手を合わす。
今日のポトフは我ながらおいしかったなぁ。
ちょっと満足しながら、食器を片付けに行く。
私は自炊が好きで。
…と言っても、小さな頃親はほとんど私に何も作ってはくれなかった。
だから幼いながら自分で作るしかなく。その結果料理をするのが好きになった。
お菓子も大抵なら作れる。
何だかんだ言って、ひとり暮らしすると自炊ってホント大事なんだよね。
テレビの楽しそうな声を背中で聞きながら、片付けを始める。
片付けが終わると、そのままベランダへと出た。
カチッ。
タバコに火を付け、煙を吐く。
夜空を見ながら、タバコを吸うのが好きなひととき。
今日も星はキレイに光っている。
夜空を見ていると、自分はちっぽけな存在に思えた。
この広い地球上で、私の存在はなんて小さいんだろう。と。
悩みなんてどうでもよくなる。
私なんかこの世にいなくたっていい。
だって今まで何もいいことなんてなかった。
どうして生きているのだろう?
どうして私を存在させているのだろう?
何も必死に今を生きることもない。
休む道を選んだっていいのだ。
思いは全て。夜空に吸い込まれていく。
タバコの煙もまた、夜空に吸い込まれるように消えた。
私も夜空に吸い込まれればいいのに。
寒っ。
夜の風はまだまだ寒い。
残りのタバコを吸うと、部屋へと戻る。
明日はバイトは休みかぁ。
バイトが休みの日が、一番苦痛だ。
家のことをしたってすぐに終わってしまう。
それなら働いて、何も考えない方が生きることには楽だ。
ゆっくり立ち上がって、キッチンで温かいコーヒーを作る。
ファッション雑誌を見ながら、コーヒーを飲む。
やっぱり春物の服欲しいな。
ペラペラとページをめくる。
少しくらいなら買えるかな?
明日天気がよかったら、買い物に出掛けよう。
そう思うと気分がウキウキしてきた。
さっきタバコを吸いながら、生きることを否定してたくせに─。
ホント人間て単純だ。
ひとりで苦笑いすると、残りのコーヒーを飲み干した。