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お客が入って来たことを知らせる音が鳴る。
「いらっしゃいませー」
陳列しながら挨拶する。
「どれにするぅ?」
「俺コーラ飲みたいから、お前お茶にしろよ。小腹すいたからおにぎりも買うし」
「えー。私も炭酸がいい~」
「俺の飲めばいいだろ」
「そうだね。じゃあ生茶にしよ~」
カップルが仲良く話しながら、ジュースを選んでいく。
それを少し冷めた目で見る。
アホらし…。
自分の飲みたい物を買えばいいじゃん。
どうしてあんなに言いなりみたいに、依存するんだろう?
どうせ後でお茶じゃなくて、炭酸を買えばよかったって後悔するのに。
陳列が終わると、お客が増えてきた。
レジが込み出してきたので、私ももうひとつのレジに向かう。
会計に並ぶお客を何組もさばく。
お客が減っていき、次のお客で私のレジの方は最後。
「お待たせしました」
置かれた商品を会計する。
「お会計は648円です」
男は700円を出した。
「700円頂きます。52円のおつりになります。お確かめ下さい」
淡々と作業をこなし、おつりを財布に入れたの見てから袋を渡す。
男は袋を受け取ったが…。
何故かその場から歩き出さない。
不思議に思って男の顔を見ると、俯いて何か言いたそうにしていた。
何…?
「あのっ!」
急に大きな声で声を掛けられる。
「…はい?」
「結構ここのコンビニに入られてますよね…?」
男は顔を上げて、私の顔をまっすぐ見てくる。
その顔は真っ赤に染まっていた。
「入ってるのは入ってますが…?」
私はずっと怪訝な表情で男を見る。
何が言いたいのよ…?
「よ、よかったら友達からお願いします!」
そう言って小さく折られた紙を渡された。
無言で紙を受け取ると、男は更に顔を赤らめた。
「じゃ、じゃあお願いします」
嬉しそうに少し微笑むと、足早に店から出て行った。