過去 家族
私の両親は仲が悪かった。
いや、悪いと言うのではなく冷めていたのかも知れない。
父と母の3人家族だった私は、ふたりに嫌われていた。
それゆえ家の中に私の居場所などなかった。
両親はいわゆる「デキちゃった婚」で、19歳の時に私が出来た。
でもお互い愛し合っていたのではなく、身体を求めた結果に私が出来てしまったそうだ。
それに仕方なく結婚し、産んだ。
母は何かと、決まって口癖のように幼い私に言った。
「お前さえ出来なければ」と。
父も機嫌の悪い日は私に虐待をし、怒鳴り散らす。
「お前が出来なければ、こんな暮らしをしなくてよかったんだ」と。
私が殴られようとも、母は一度も私を助けたことはなかった。
冷たい目でただその光景を見ているだけ。
一度も授業参観や運動会などに出席せず。
一度も誕生日やクリスマスを祝ってもらったことはなかった。
幼いながらに、楽しそうに祝ってくれた話をしている周りの子達が、羨ましかった。
私が中学二年になった頃。
突然母が消えた。
男と駆け落ちをして、父と私を捨てたのだ。
父はそのことに怒り狂い、酒に溺れ、私への虐待はさらに増していった。
虐待を避けるため、夜中に家に帰る。
そんな生活が続いた。
しかし父はお酒が祟ったのか。
仕事中に倒れ、今では入院している。
どこかに癌があり、ほぼ手遅れだと言う。
だから今は延命のため、ずっと病院にいるのだ。
私が父のことを詳しく知らないのは、父に関心がないからだ。
父の母方に聞いた話しか知らない。
父が私のことを嫌っていたように。
私も父が大嫌いだ。
だからこの先どうなろうと、知ったことではない。
母のことも同じ。
今更捨てた人のことを捜して会いたいなんて、思えない。
家族なんか嫌い。
家族の愛なんて、信じない。
だって、家族の愛なんて知らないんだから─。