壊れ始める東京
数日後…
いつも通り仕事を終え、
誰も待っていない小さなアパートに帰る。
見たい番組があるわけではないけれど、
とりあえず、テレビのスイッチを入れる。
飯作らなきゃ。
そう思ってから、動き出すのには数分かかる。
母が他界してから、
ずっと料理はしているので自炊には慣れた。
ただ、どうしても作るって決めてから、
動き出すのが、だるくて仕方ない。
そんなことを考えていると、
テレビの画面が急に切り替わり、
アナウンサーの人が慌ただしい感じでニュースを伝える。
『番組の途中ですが、臨時ニュースです。
たった今、東京都の西久留米市で警察官の男性が、殺害されました。
警察の調査では、首を何者により噛みちぎられたような後があった。との情報です。
犯人は依然、今も逃走中で、行方はわかりません。
周辺の住民の方達は、くれぐれも外出を控えて注意して下さい。』
西久留米って…近所だ。
見覚えのある場所が写し出されていた。
まさか、近所でこんなにも物騒な事件が起きるだなんて…
しかも首を噛みちぎるって何事だ?
猟奇的な殺人は多数あっただろうが、
首を噛みちぎるなんて、精神的に相当狂っていたのであろう。
いや…待てよ。
昔やったゲームでは、人間が人間食ってたよな?
でも、それは死体が蘇った屍が人間を食べ彷徨うようなストーリー。
現実では、まずあり得ないと思うけど…
気味が悪いので、チャンネルを変えた。
料理の準備をしようとしたその時…!
ドンドンドン。
ドンドンドン。
おれの家のドアを何者かが叩く音…
恐る恐るドアの覗き穴を見ようとした時…
『おーい!いるのは、わかってるだから開けてくれよ!』
その声でわかったおれは、ドアを開ける。
『おじゃまするよー!
にしても夏も終盤なのに、東京はあちーな!
なんだよこの熱帯夜、ヒートアイランドですか?』
勝手に人の家に上がるなり喋りぱっなしのこいつは、
中学からの友達で錦山 亮太郎
暇しては、おれの家に訪ねてくる暇人の極みみたいなヤツだ。
大学も辞めて、バイトをやってるみたいだけどあんまりバイトに行ってる姿を見たことがない…
『飯ないの?飯!』
亮太郎が、勝手にテレビの前に座り、
おまけに、かなり図々しいことを言う。
ちょっとイライラしながら、おれは言った。
『ねーよ!だいたいにてめーの分なんか用意するわけねーだろ!』
すると、亮太郎は
『なんだよ。ないんかー。
んぢゃ、なんか食いに行こうぜ!』
『うーん。まあ、いいけど。
準備するから、ちょっと外で待ってて。」
『うぃー!早くしろよ!』
すると、亮太郎はドアを空け外に出る。
正直おれ的にも、そっちの方がありがたい。
あまり作る気分にもなれなかったし、
外食するにしても、1人では行きにくから。
タイミング的にはちょうど良かった。
おれが、準備を終えて財布、タバコ、携帯を持ったことを確認し、タバコを吸いながら
外に出る。
まさかこの後に起こる悲劇をこの時の、おれらは予想もしていなかった。