仲間
翔太は家に帰って、羽矢と母にサッカー部に入ることを教えた。
ふたりともびっくりした。
「お兄ちゃんがサッカー!?できるの!?」
「わかんない」
「翔太は運動嫌いだから、ちょっとは体動かしたほうがいいかもね」
翔太は、はあ、とため息をついた。
あの時はまあいいや、と思っていたけれど、今はやっぱり断ればよかったと後悔している。
「なんでやるなんていっちゃったんだ……」
独り言をいって、またため息をつく。
「がんばれ!お兄ちゃん!」
羽矢が応援してくれたけれど、翔太の気分は曇っていた。
翌日さっそく菅原が翔太のところにやってきた。
「部長に会いに行くぞ」
翔太の気持ちも考えず、菅原が部室にうきうきしながら歩いていく。
その菅原の後に、翔太が重い足でついていく。
サッカー部の部長は、大歓迎してくれた。
「一緒にがんばろうな」
部長も太陽の笑顔を持つ人だった。
「オレ、全然運動だめです」
「そんなことどうでもいいよ。気にしないで」
部長がいうと
「楽しいのが一番だ!」
とまた菅原が強くいった。
菅原はサッカーのルールはもちろん、ボールの蹴り方のこつや、リフティングも教えてくれた。
「いいぞ瀧川!いまのすごくいい蹴り方だった!」
目をキラキラさせながら菅原が応援してくれる。翔太は嬉しかった。
毎日毎日練習を繰り返していくうちに、翔太はサッカーがうまくなっていった。
でも、まだ試合には出られるような技術は持っていない。リフティングもすぐにボールが下に落ちてしまう。
「いいんだ、いいんだ。それで。がんばることが大事なんだ。楽しいって思うのが大事なんだ」
サッカー部に入部している人たちはいい人ばかりで、翔太も気軽に部活に行ける。
なんか、サッカーって面白いな。
そう思うようになってきた。
ボールを思い切り蹴ると、気分がスッキリする。
日々の嫌なことを、ボールが全部吸い取っていくような感じ。
翔太はサッカーが好きになった。
やってよかった。
菅原に感謝した。
「瀧川って、勉強もできるし運動もできるんだ」
すごーい!とたくさんのクラスメイトに尊敬された。
学校に行ってみんなと一緒にいるのが楽しい。
『今日のサッカー話』を聞いて、羽矢や母が喜んでくれるのが嬉しい。
早くサッカーやりたい。
授業中もずっとサッカーのことばかり考えていた。




