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始まり

中学校は思っていた以上に楽しいところだった。

憧れだった制服を着てみた。

白いシャツに紺色のネクタイ、黒のコート。

「お兄ちゃん、かっこいい!」

「似合ってるわよ」

羽矢にいわれ、翔太は少し照れた。

母親の言葉は全て聞き流した。

あの夜から、翔太は母を信じられなくなった。

「着づらいなあ」

「すぐ慣れるわよ。ほら、外に出て。羽矢も。記念に写真撮りましょう」

「別にそんなことしなくていい」

冷たくいった。

「お兄ちゃん、恥ずかしいんだ」

羽矢はにやっと笑った。


家の庭に出て、翔太と羽矢は写真を撮った。

「アルバムに入れておきましょ」

母がにっこりと笑った。翔太は何もいわなかった。




中学に通って、翔太は毎日うきうきしていた。

制服を着ると少し大人っぽくなった気がする。

勉強は難しくなったけれど、翔太は勉強嫌いではなかった。

そして何よりも楽しかったのが、部活動だった。

野球部、サッカー部、バスケットボール部などの体育系のものもあれば、文芸部、家庭科部、英語部という室内系のものもあり翔太はどれにしようか迷っていた。


昔から翔太はあまり運動が得意ではない。

とりあえず体育系はやめておこう、と決めていた。


部活紹介の用紙を見ていると、突然後ろから声をかけられた。

「よう!おまえ、B組の瀧川か?」

違うクラスの男子だった。得意科目が体育だとすぐにわかる体つきだ。翔太より一回り大きい。

後ろから太陽が当たっているように輝いた笑顔で、ものすごく感じがいい。

翔太が一番付き合いたくないタイプの男子だ。

翔太が少し後ずさりしながら

「そうだけど」

というと、男子はおお!と嬉しそうにいった。

「おまえがあの瀧川か!オレ、菅原武すがわらたけしっていうんだ。よろしくな」

まるで何年も前から仲良くしているような気さくな姿に、翔太はすごいなあ…と思った。

翔太は運動も苦手だが、友だち作りも苦手だ。何を話していいのかわからなくなるのだ。

たぶん毎日羽矢の面倒ばかりみていたからだと翔太は思っている。


それより、『あの瀧川』ってなんだろう……。


「あの瀧川って何のこと?」

翔太がいうと、菅原はびっくりした顔になった。

「ええ!?知らねえの!?おまえ、いっつもテストでいい点とるじゃん。おまえのことすげえっていってるやつ、いっぱいいるんだぞ」

「そうかな」

「いいなあ!オレなんか、毎回60点とかだぜ?羨ましすぎる!」

翔太は運動や友だち作りは不得意だが、勉強はわりとできるほうだ。


そんなふうに見られてたのか。

知らなかった。

友だちがいないんだからわかるわけない。


「なあ、オレに勉強教えてくんね?」

菅原がお願いのポーズをした。

それを見て、翔太は何となく嫌な予感がした。

「オレは友だちと話すのが苦手なんだ。それにオレじゃなくても頭がいいやつはたくさんいる」

しかし菅原は完全に無視で、こんなことをいい出した。

「それでさ、一緒にサッカーやろうよ!サッカー部入ろう!ルール教えてやるから」

もう完全に翔太は友だちのひとりになっているようだ。


本当に、オレの「嫌な予感」は当たるなあ……。

翔太はいいや、と断った。

「オレ運動できないし」

「そんなの関係ねえよ!楽しければいいんだよ!絶対勝たなきゃいけないなんて思ってたら、何もできねえよ」

入ろうよ入ろうよ、と何度も翔太の顔に太陽の笑顔を見せる。


翔太は少し考えた。

確かに、嫌なこともちょっとはやらなきゃだめかな。

部活もまだ決めてないし。


翔太が黙っていると、菅原が肩をたたいてきた。

「よし!決まりだ!サッカーのルール、みっちり教えてやる」

なぜか翔太の部活がサッカー部になった。


まあ……

いいか……。


「わかった。サッカーやるよ。ルール教えてくれ」

翔太がいうと

「じゃあテスト勉強にも付き合ってくれよ」

菅原はにやっと笑った。



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