華族
立浦は翔太にいろいろな質問をした。
毎日毎日暇さえあれば翔太のもとに来て、どうでもいい話しをする。
『友だちになるのは断る』といったのに、いままで以上にまとわりついてくる。
悩みはなんだ、
なんで女の子に興味がないんだ、
『女の子が嘘を見抜く』という話に、どうして動揺したのか。
翔太は曖昧な返事をしていたが、あまりにもしつこいので「妹がいうこと聞かないんだ」と短く答えた。
羽矢の名前や一緒に住んでいることは全部隠した。
立浦は「妹、中学生?」と訊いてきた。
翔太は答えなかった。羽矢のことは絶対に教えてはいけない。
「中学生だったら反抗期だよ。もうちょっと経てば大人しくなるって」
菅原も同じことをいっていた。
「高校生になれば素直になる」
じゃあ、来年もこの状態か。
翔太が何もいわずにいると、立浦がまあまあ、と肩をたたいてきた。
「大変だなあ、兄っていうのは」
翔太は気になったので、「おまえは兄弟いないのか」と訊いてみた。
すると、ひとつ瞬きをして、いった。
「よくわからない」
「え?」
「なんか、みんなバラバラで、全然話しとかしない」
「なんだそれ?」
立浦は首をちょっと横に傾げた。
「母親が病院に入院してるってことは知ってるけど、父親とか兄弟とかのことは知らない」
翔太は不思議に思った。
「家族のこと知らないってちょっとおかしくないか」
翔太がいうと、立浦は「だって知らねえんだもん」と答えた。
「あ、でもマナーがなってないとかはいわれたりする」
「マナー?」
「そう。だから女と遊んでる。うるせえよ、オレの勝手だろって」
すねたようにいった。
立浦の親はどうやら厳しい性格らしい。
「それにあいつだってたくさん女と付き合ってるくせに」
また立浦がすねたようにいった。
『あいつ』とは誰のことかわからなかったが、翔太は思った。
もしかして、立浦は金持ちの息子なのではないか。
この堂々とした態度。話し方。
マナーに厳しいということもある。
たぶんそうだろう。
何かまずいことが起こっても、ふつうの家じゃ立浦家には勝てないんだろうな、と翔太は思った。