答え
羽矢が教室に入ると、クラスメイトが何人もやってきた。
「なんで学校来なかったの?」
「みんな心配してたんだよ!」
優しいみんなの声を聞いて、羽矢は感動して泣きそうになった。
「ありがとう。もう大丈夫だから」
本当は全然大丈夫ではない。けれど、これ以上みんなに迷惑をかけたくはなかった。
休み時間に兄がいる女の子を探し、声をかけた。
「もしお兄ちゃんとケンカしたら、みんなどうする?」
どきどきしながら訊いてみる。
すると、こんな答えが返ってきた。
「そんなの決まってるじゃない。ぶん殴りよ!思いっきり平手打ち!」
「あたしはお母さんにいって代わりに叱ってもらうよ」
「彼女とデートしてるところ、隠し撮りするとか」
どれも羽矢には無理なことばかりだ。
「どうしたの?なんか悩みでもあるの?」
菅原秋奈という子が話しかけてきた。平手打ちをする、といっていた子だ。
「ううん。ちょっと……。ケンカっぽいことしちゃって」
「ケンカっぽいこと?」
ぐいぐい訊いてくる。
「話しができないっていうか」
ふうん、と秋奈はいって「そうかあ。それは大変ね」といった。
ただケンカの内容を知りたかっただけという顔だ。
結局、答えは出なかった。
羽矢の悩みはさらに大きくなった。