表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/38

悪魔

翔太がいつものように教室に行くと、何人かの女子たちが集まって何か話しをしていた。

集まりの中にいた一人の女子が泣いていた。その周りで数人の女子が彼女をなぐさめたり、悔しそうな顔をしたりしている。

特に気にせず、自分の席に着いた。

鞄からノートやファイルなどを取り出していると、突然後ろから声をかけられた。同じクラスの男子だった。でも名前はよく覚えてない。影が薄いからだ。

「あのさ、立浦興たてうらきょうってやつ、知ってるか?」

ひそひそ声で訊いてきた。

『タテウラキョウ』

初めて聞いた名前だ。

「知らないよ」

そう答えると、「じゃあ、教えてやるよ」といってきた。

別に教えてくれなんて頼んでないんだけど。

心の中で思った。


「立浦興ってつい先週ここに転入してきた男で、すごい問題児みたいなんだ」

「問題児?」

「そう。すごい女好きで、ここに来てもう2人も被害者が出てる」

先ほど泣いていた女子を思い出しながら「ふうん」と適当に答えた。

「可愛い女の子にすぐにナンパして、たっくさんの女子と付き合って、いらなくなったらすぐにポイっと捨てちゃって、あとはもう赤の他人なんだって」

「へえ」

確かに問題児だ。

「おまえも気をつけろよ」

そういって、その男はさっさと立ち去った。

オレは女の子じゃないんだけど。

また心の中で思った。



昼休み、翔太が図書室で本を探していると、誰かの視線を感じた。

振り返ってみると、一人の男子が椅子に座ってこちらをじっと見ていた。

すぐに立浦興だとわかった。

痩せていて、足が長く、スタイルがいい。

女の子に好かれそうなタイプだ。

目が合うと立浦はゆっくりと立ち上がり、近づいてきた。

「ちょっといいか」

これまた女の子に好かれそうな声だ。

掠れたような声。ハスキーボイスというものだ。

男の翔太がこう思うのだから、女の子が一発で落ちてしまうのもわかる。

「なんだよ」

「おまえ、名前なんていうんだ」

「名前?」

「そうだ」

「………瀧川翔太だけど」

翔太が答えると、立浦興はこくりと小さく頷いた。

「なんだよ」

もう一度翔太が訊くと、立浦は何もいわずにさっと後ろを振り返り、すたすたと歩いて行った。


なんだ?あいつ…………


翔太はわけがわからなかった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ