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真実

瀧川翔太たきがわしょうたと、妹の羽矢はやは、仲の良い兄妹だ。

翔太は羽矢を可愛がり、いつも隣にいた。

羽矢は、毎日翔太の背中についていった。

ちょっとからかわれて泣かされたりもしたが、慕っていた。

ずっとそのまま、笑って生きていけると信じていた。


だが、幸せは永くは続かなかった。


その話を聞いたのは、翔太が11歳の時だった。

その夜はなぜか寝付けず、翔太はもそもそと布団の中で右を向いたり左を向いたりしながら起きていた。

見ると時計の針は12時を過ぎていた。

二段ベッドの上では、羽矢がすやすやと寝息をたてている。

このままずっとこうしていても仕方がない、何か飲みに行こう、と思い、翔太はこっそりベッドから降りた。

部屋のドアをそっと開いた。よかった。父さんも母さんも寝てるようだ。

そろそろと足音をたてないように廊下を歩き、キッチンのドアを開け、冷蔵庫からオレンジジュースの缶を取り出した。

その時だった。

足音が聞こえたのだ。

びっくりして、翔太はジュースの缶を落としそうになった。

すばやく食堂テーブルの下に隠れると、父と母が何となく沈んだ顔でキッチンに入ってきた。

なぜか嫌な予感がした。


流し台の前に立つと、突然母親が首をふるふると横に振った。

「もう羽矢も8歳なんだから、本当のこといいましょうよ」

その言葉に、父親は腕を組んでうーんと唸った。

「俺はまだいわないほうがいいと思う……」

「じゃあ、いついうのよ」

「それは……」

「早いほうがいいわよ」

「だけど……」

どうやら父親の方が負けているようだ。

いわないって……、本当のことって……?

翔太の嫌な予感が、むくむく膨れ上がっていく。

そして、次の父親の言葉で、翔太は目の前が真っ黒になった。


「羽矢はうちの子じゃないってこと、翔太にいったらかわいそうじゃないか」


目の前が真っ黒になる代わりに、頭の中は真っ白になった。

胸がどきどきとした。

羽矢の可愛い笑顔が頭の中に浮かんだ。


羽矢がうちの子じゃない!?


翔太は思わず声に出しそうになった。


うちの子じゃない……。

ということは、オレの妹じゃないってこと……!?


翔太の嫌な予感が、胸の中で爆発した。


その後も両親は何か話し合ったようだが、翔太はほとんど聞けなかった。

ふたりが出て行き、キッチンの灯りが消えると、翔太はよろよろとテーブルの下から出てきた。


羽矢はうちの子じゃない。

オレとは血が繋がってない。

妹じゃない。


冷たかったジュースは、ぬるくなっていた。

翔太はトイレに行き、それを流した。


結局、翔太はその夜は一睡もできなかった。

羽矢の寝ている部屋にも入れず、トイレの中で朝を迎えた。









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