5話:黒服
リブ:村長
ビン:情報局員
「コム、おはよう……」
羊を連れて、いつものようにコムの家。
ドアを開ける瞬間はいつだって緊張するの。
「コム、おはよう……」
返事がないのはいつもの事だけど……
今日はちょっと「空気」が違った。
「コム……」
ベットに向かうけど、
「コム……」
毛布はぺちゃんこで、コムの姿はない。
いつもはわたしが起すまで眠っているのに……
部屋という部屋を探してみたけれど、コムの姿はなかった。
すぐに「納屋」を思い出して行ってみたけれど……納屋にもいなかった。
「どうしたんだろ……」
船は遭難でなくしているから、足はないから……
羊が草を食んでいる牧場を見渡してみる。
でも、人影は見当たらなかった。
「コム……」
家に戻って、部屋に明かりを灯けてみると、机にメモが置かれていた。
『ダリマに行く』それだけ書かれたメモ。
(どうやって?)
もう、何がなんだかわからなかった。
「ラン、なんとか言ったらどうだ?」
今日も学校でいじめられる……でも、全然気にならなかった。
いじめなんかよりも、コムがいなくなってしまった方が気になってしまう。
メモに書かれた「ダリマ」。
首都ダリマとユフナを結ぶ船便をコムとバットはやっていた。
(まさか、また船便を始めるのかな?)
「ラン、コラ、聞いてるのかよオイっ!」
男子が髪を引っ張るのに、ようやく我に返った。
「え、あ……ごめんなさい……聞いてなかった」
「てめ、コラっ!」
ゲンコツが一発落ちてきた。
取り巻きの男子達も手を出してくる。
(あ……)
叩かれながら、コムが言っていた意味がちょっと解るような気がした。
今、どんなにいじめられても、全然気にならないような気がした。
今まで叩かれたり髪を引っ張られたりするのにどんなに恐怖を感じたか。
でも、今は、そんな事よりコムの事が心配だった。
「なんだよ無視しやがって」
ビンタを食らって顔が振れた。
いつもなら泣きだすところだ。
でも、振られた視線の先に窓があった。
窓の向こうには、隣の世界……そしてバットの狼煙。
(まさか……)
「ちっ……つまんねーな、行くぞっ!」
男子達は行ってしまった。
三人の背中を一度は見たけど、すぐに窓に目が戻った。
目を細めて確かめてみる。
バットの狼煙が見えた。
(まさか……コムは……)
あの日、手渡された資料。
もう、かなり読み込んだ。
空を飛ぶ……その理屈もなんとなくわかった。
たくさんある計算式の意味も、ある程度は理解できたつもり。
最初手渡された時は理解できるか不安だったのも、今は先に読み進めたいくらい。
(コムは空を飛んで……あっちに行くつもりじゃ?)
納屋の飛行機の骨組み。
資料の中の図面通りのそれは……まだ確かめてないけど、図面通りに作ってあればちゃんと飛べそうな気がした。
(コムはまさか、ダリマで材料を仕入れて来るんじゃ?)
飛行機は骨組みだけだ。
機体を完成させるためには、まだまだ部品が足りなかった。
空気を、風を受けて宙を舞う為には骨組みに布を張らねばならない。
あとは動力。
機体の後方に大きなプロペラとそれを回すエンジンが必要だ。
(コムはそれで……ダリマに行ったのかな?)
考え事をしているうちに学校が終わってしまった。
「ただいま……」
「おかえり……どうした、元気がないようだが」
「ううん、なんでもない、お父さん」
「そうか……ちょっと休んだらいいんじゃないか」
「うん……そうだね……うん」
「羊は夕方行けば大丈夫だよ」
父は笑って言うと、
「役場に戻るよ」
「うん……じゃあね」
村長をやっている父。
いつもは村役場でラジオを聞いて天気図を描いている。
役場の仕事は他にもあったけれど、天気図はユフナの村の漁師の最大関心事項。
嵐が近付いているのに海に出ようものなら、世界の端から落ちてしまう。
父が行ってしまって、一人二階の部屋にこもる。
コムがいれば、すぐさま家に向かうところだけど……
ダリマに行ってしまって留守の今、コムの家に行く気には全然ならなかった。
預かった資料をひもとくとペラペラとめくる。
今日はなんだか身が入らなかった。
せっかくコムと一緒にいる時間ができたと思ったのにこの様だ。
「つまんないな……」
でも……コムの家の中を思い浮かべた。
急に壁にかかった「電話」が浮かんでくる。
「もしかしたら電話掛かってくるかも!」
このユフナの村には電話はこの家とコムの家だけだった。
役場だって無線機なのに、コムの家には線が引かれている。
村で二台目の電話を引く時、ちょっと騒ぎになったくらいだ。
全力で走って行ってみる。
集まってきた羊達を押し退けて家に入ってみたけれど、電話が鳴る事はなかった。
「そうだよね……」
大体都合よく電話が鳴るなんて筈がない。
でも、鳴る鳴るって思って来たから、気持ちが落ち込んでしまった。
トボトボとコムの家を出ると、牧場に座り込んだ。
羊達がなぐさめるのか……塩が欲しいのか……集まってくる。
そんな中の一匹を抱きしめて、青い海を見つめた。
「コム……」
海の先には世界の端があって……隣の世界があって、バットの狼煙が見えた。
距離があるから、本当に気にしないとわからないような狼煙。
村で知っているのは、多分わたしとコムだけだ。
(こんな事になるなら、教えない方がよかったのかな)
最初、狼煙を見つけて、バットと思った時……
咄嗟にこれをコムに教えたら、元気になるって思った……
確かにコムは元気になったけれども……
(どうしてダリマに行っちゃうの……)
夕日に染まる海を見つめてみたけれど、船の一隻も浮かんでいなかった。
羊を追って、いつものように牧場に向かった。
コムのいない牧場なんて、行く気にもならない……
でも、一歩一歩踏みだすのは、ちょっとだけコムが戻ってきてるのを期待して。
家に入って、ベットにうずくまっているコムを思い描いてみる。
(そんな事……ないよね)
いくら妄想してみても……すぐに現実に戻ってきてしまう。
朝日にキラキラする海を見ると、船がちらほら見えた。
明け方にかけて漁に出ていた船だと思う。
そんな船の中に、一つだけ見慣れない船が見えた。
ライトもなく、黒塗りの船。
すぐに目がいったのは、船の引く白波だった。
船のスピードが速いのか、白波が長くはっきりと見える。
羊を牧場に連れていくと、すぐさま村に戻って、波止場に向かった。
父・リブも波止場の桟橋に立って、例の船を見つめていた。
「お父さん」
「ラン……牧場に行ったのでは?」
「うん……船が……」
「ランも見たのか?」
「あれ……だよね?」
「ああ……そうだ」
黒塗りの船が近付いてくる。
漁船や、コム達が船便で使っている船とは全然違った。
それにエンジン音が全然違う。
村にある船とは全然違う、静かでリズミカルなエンジン音だった。
モーターみたいな音だと思った。
「お父さん……あの船は?」
「あれは……」
父はそこまで言ったものの、唇を結んでしまった。
「お父さん……」
「ラン……」
「うん?」
「あれは……情報局って言ったらわかるか?」
「情報局……」
ピンと来なかった……けど、父の表情でなんとなく察した。
「よく……わからないけど……その……政府の人?」
「うん……警察のすごいの……って感じでいいかな」
「なんとなくわかる」
「ランは家に戻って、母さんに客が来たって伝えてくれ」
船室から人が出てきた。
船で仕事をする人間らしからぬ服装……黒服だ。
村にスーツ・ネクタイなんて格好をするのは結婚・葬式の時くらい。
そんな服装の人物が船から出てきたから無気味だ。
それにサングラスをかけていて、余計表情がわからない。
「早く」
「うん」
踵を返すと、家まで走った。
玄関先には母が待っていて、
「ラン……走ってどうしたの」
「お母さんこそ家の外で……」
「さっきお父さんが電話を取って、血相変えて出て行ったから」
「お父さんが……お客さんが来たから準備してて……って言ってた」
「お父さんに会ったんだ」
「うん……船が来てたよ」
母はにこやかに笑いながら、家に入ろうとした。
「情報局の人……らしいよ」
父の言っていた言葉を伝えた……だけだったが、母の表情は急に険しくなる。
そして向き直ると、
「ラン、学校に行きなさい……そして……」
「そして?」
「情報局の人とは出来るだけ顔を合わせないようにしなさい」
なんとなく、母の言葉は予想していた。
そんな言葉にただ頷くと、
「うん……あの人達はしばらく村にいるんだよね?」
「解らないけど……多分……ね」
「お父さんやお母さんの迷惑にならないように……学校か牧場にいる」
「うん、そうして、情報局の人とは関らない方がいいわ」
さっき、船上に現れたスーツ姿の人を思いだした。
学校、終われば牧場に直行。
母の言葉に従って、出来るだけ家には近寄らないようにした。
一瞬、コムの家で夜を過ごすのも考えた。
でも、結局は夜、羊を連れて家に戻る事にした。
「ただいま」
「おかえりなさい……お客さんに挨拶して」
前掛けで手を拭いながら出てきた母はいつもの調子で言った。
でも、それはいつもの調子に見えて、ちょっとだけ違う何かを感じた。
リビングにはテーブルが出されていて、食事が並べられていた。
「ラン、こっちだ」
父の言葉に促されて、父の隣に腰をおろす。
向かいには黒服の人が二人座っていた。
一人は……髭を生やしていて、部屋の中だというのにサングラスをかけている。
もう一人の人はサングラスをしていないで顔が見えた。
オールバックで固められた髪が艶々としている。
色白で……若いと感じた。
「ラン、挨拶しなさい」
「はい、お父さん……はじめまして」
どんな挨拶をしていいか……迷いながら、ともかく頭を下げた。
一瞬怒られるかと思ったけど、父は何も言わなかった。
おじぎをして、顔を上げると、
「はじめまして……お父さんから、我々の身分についての説明は受けてるね」
頷く、そしてちらっと父に目をやった。
怒ってはいなかったけれども、父の顔は青冷めていた。
「村長のリブさん……わかってるんだ」
若い黒服の言葉に父は言葉がなかった。
「朝、娘さんと一緒に波止場にいただろう」
「……」
「娘さんに言葉をかけたのを、ちゃんと見ていたんだ」
父は黙っていた。
でも、わたしの視界から見た父の横顔は引きつっている。
「情報局の者です……任務でこのユフナに来ました」
じっと見つめる若い黒服。
父はそんな視線から目を逸らそうとしなかった。
「あの距離からでも……唇は読めるんですよ……任務の性格上でね」
若い黒服の口調が次第にトーンを下げて、厳しくなっていくのを感じた。
彼は視線をわたしに向けると、
「情報局……わかるかな……なので……」
彼はそこまで言ってから、一瞬口ごもったが、
「名乗れないところだが……私はビン……よろしく」
それだけ言うと、ビンは父に向き直って、
「村長には部屋を準備していただいて感謝している」
「ギリア国民の義務ですから……」
「ではもう一つ……この村で船便の仕事をしている子供がいるはずだ」
わたしも父も、肩がピクリとした。
「どうしている?」
「死んだ」
父の言葉はすぐだった。
しかし、ビンもすぐに、
「証拠は?」
言われてわたしは動いた。
嵐の翌朝、コムの船の残骸が流れ着いたのをとっていた。
そんな残骸を持ってきて、
「コムの船は嵐でバラバラになって……」
「そうか……」
わたしの手から残骸を受け取ったビンは、隣にいるサングラスと一緒に見ながら、
「確かにそれらしい……」
ビンはわたしの方を向いて、
「明日、彼の家に案内してくれないかな」
嫌……だったけれども、拒否出来ないのを空気で感じて頷いた。
羊を連れてコムの家に向かった。
ずっと後からビンが一人、着いてくる。
牧場に到着する……道から近い場所にコムの家。
そして、ちょっと下った所、半分牧草に埋もれるようにして納屋。
本能が納屋に連れて行くなと言っていた。
納屋には骨組みだけとはいえ、飛行機があるのだ。
「あっちかな?」
ビンはすぐに納屋の方を指差して聞いてきた。
「はい」
ダメ……本能で思いながら、何故か納屋の方を言った。
「わたしはこれで……」
「ああ……ちょっといいかな?」
「はい? なんですか?」
「君は……ランは……羊を放ったらかしに?」
「はい……この辺は村に近いし、羊を襲うような動物も鳥もいませんから」
「うん……そうか……あそこに入った事はあるの?」
これには首を横に振った。
ビンは頷きながらコムの家を指差して、
「こっちはコムの家じゃないのか?」
「さぁ……わたしは学校で会うだけだし……」
「……」
「コムは船で仕事をしていたから、よく知らないし」
「でも、ここは彼の家の……牧場では?」
「牧場自体は村の物です」
「うん……そうか……なんであっちの方が家だって思うの?」
「え?」
「だって、詳しく知ってるわけでもないのに、あっちだって言うから」
一瞬心臓が止りそうになった。
ちらっと……でもしっかりと、納屋を見つめた。
納屋は半分牧場に埋もれるように建っている。
斜面に建てられているから、そんな感じなのだ。
屋根にはツタも伸びていて、本当に埋もれているように見える。
「あのレール、見えます?」
「うん? レール?」
納屋の表から海に向かってレールが伸びていた。
海に向かっているとはいっても、ここは断崖絶壁の上の牧場だ。
レールはそんな崖ギリギリまで敷いてあるだけで、海に繋がっているわけではない。
「コムは……船で荷物を運ぶ仕事をしていたから……」
「……」
「あのレールで荷役してたと思うから……」
「なるほど……小さなクレーンがあれば、かえって村の桟橋より楽かもな」
ビンは納得したのか、口元に笑みを浮かべると、
「ありがとう、後はいいよ」
「ありがとう、後はいいよ」
ランの顔を一瞬だが見つめた。
(ウソをついているふう……でもないが……)
一人、家に向かって帰るランの後ろ姿を見送りながら俺は、
(後でこっちの家も確かめればいい)
情報局で調べもついていたから、最初からどっちも調べる気でいた。
草でちょっと滑る牧場を下りながら俺は納屋の前に立った。
ドアに掛けられた鍵を切ってしまうと、細めに開けて中を確かめる。
特に仕掛けがあるようでもない……薄暗い中に入って背筋が凍った。
「な……」
次第に目が暗さに慣れて、そこにある「何か」が見えてくる。
船……最初は思った。
でも、すぐに違う事に気付かされる。
「これは……」
軍の開発している「飛行機」だった。
まだ極秘で、情報局でも一部が知っている程度の筈。
そんな代物が目の前にあった。
「なんで……こんなものが……」
飛行機……俺は図面でしか見たことがない。
船のような胴体を持ち、しかしその胴体に翼が生えているのだ。
今、目の前にあるそれは骨組みなのだけれども、それに鳥の姿を重ねる。
鳥にも体があり、翼が生えている。
俺は図面でしか見たことのない飛行機を舐めるように観察した。
いろいろな角度から確かめ……そして写真を撮った。
最初は不穏分子のアジトを破壊、報告するために持ってきた写真機が大活躍だ。
俺は図面でしか知らない飛行機だけれども、写真を撮りながら、
(これが空を飛ぶのか……)
思わずにおれなかった。
目の前にあるのは「骨組みだけ」なのだ。
(鳥の骨格標本は見た事あるんだが……)
目の前にある「骨組み」が羽ばたけるようには、とても思えなかった。
(どうやって飛ぶんだ?)
翼は胴体にしっかりと取り付けられていて、鳥が羽ばたくように上下に動かす事は出来ないのがわかる。
(どうやって飛ぶんだ?)
フィルムが無くなるまで撮影してから、我に返った。
今回の任務は不穏分子のアジトの破壊。
納屋に置かれた燃料缶の中身を撒いて火を放った。
一瞬飛行機を確保するべきか……迷ったが、写真があればすぐに同じ物が作れる。
躊躇した時は、命令に素直に従った方がいい……そう思った。
炎が天井を舐め始めたのを確かめて外に出ると、今度は家に向かった。
歩きながら、
(確かコムとバット……だったな)
ドアに鍵はかかっていなかった。
真っ暗な室内、明かりをつけてみたけれど、殺風景な部屋だった。
ただ、目についたのは「電話」。
(そう言えば……電話があるんだ)
この村には村長の家とここにしか電話はない。
辺境の地で……コムとバットは一応船便の仕事をしているのだ。
命令では、不穏分子のアジトを破壊する事……だ。
しかし、この部屋の中にはテーブルやベット、台所があるばかり。
「電話……」
俺は受話器を取って、ハンドルを回した。
しばらく待っていると、交換が出て、
『どちらにお繋ぎしますか?』
俺は情報局の番号を伝えると、ブッと音がして、しばらく沈黙が続いた。
『こちらバー・楽園』
「こちらビン」
『こっちは寒いが……』
「ホットワイン」
『ふん……』
「人肌で……」
馬鹿げた合言葉だ。
電話の向こうでガタガタと机を動かす音がする。
『どうした……ユフナにいるんじゃ?』
「ああ、今はユフナだ」
『おお……確かにユフナの番号だ……どうした?』
「任務終了した……と、言いたいところだが……」
『どうした?』
「今、問題のコムとバットの家にいるんだ」
『で?』
「アジトは破壊……だったが、このアジトはそのままにしたい」
『何でだ?』
「コムとバットが見つかっていない」
『先日の嵐で船が世界の端から落ちた……って聞いてるぞ?』
「ともかくだ……この電話のある家はそのままにしておきたいんだ」
『様子見か……』
「ああ、で、この番号を監視できるか?」
『了解、盗聴監視する』
俺は手元のカメラを見て、すぐさま現像して電話回線で送るか迷った。
しかし写真に撮ったのは飛行機・最新兵器。
迂闊な事で隣国エラの情報局に捕まれては事だ。
このフィルムは自分でダリマまで持ち帰り、報告しようと思った。
「以上だ、よろしく頼む」
俺はそう言うと、受話器を置いて、部屋の中を改めて見回した。
(何が掛かるか……楽しみだな)
羊を連れ帰るために牧場へ……
「燃えてる!」
納屋から煙があがっているのに駆け出した。
「燃えてるっ!」
煙は家の方からも上がっていた。
「なんでっ!」
駆け着けた時には……もう燃え落ちた後だった。
骨組みだけになった納屋。
天井に渡された鉄筋の梁だけが以前の屋根の形を思い出させてくれる。
まだくすぶっている納屋の跡に足を踏み入れたけど、飛行機は跡形もなかった。
「家っ!」
視線を上げて、斜面を駆け上がった。
コムの家のドアを開ける。
煙で充満する部屋に一歩足を踏み入れて、それ以上入れなかった。
口をハンカチで覆って、窓という窓を開ける。
明かりをつけて部屋を見渡した。
煙が晴れる。
「火は……ないみたい」
よくよく見るとベットの下から煙が上がってくる。
ベットをよく見ると、動かせて……床が開くようになっていた。
「納屋に繋がってたんだ……」
ちょっと開けると、ちょっとだけ煙が上がってきた。
「どうして火事なんかに……」
すぐに情報局の黒服・ビンの姿が浮かんだ。
「……」
なんで納屋を燃やしたのか……飛行機が原因だとは思った。
「どうして燃やしちゃうんだろう……」
その時、電話器のベルが鳴った。
すぐに受話器を耳にやる。
『ラン……いてくれてよかった』
「コムっ!」
『メモにはダリマに行くってだけしか書いてなかったからな』
「もうっ! いきなりいなくなってっ!」
『はは、ごめんゴメン……いろいろあってさ』
「もうっ! もうっ!」
『いてくれてよかった……でさ……』
「コムっ、聞いてっ!」
『うん? なんだ?』
「納屋がっ! 飛行機が燃やされたのっ!」
『は?』




