帰らざる時の果て その6
凡字で作られた寺院。そこには覇王、仁王と名乗る二人の死を越える星、死超星の騎士がいた。ジャック・ギャザリスとマリアは、ミサト、ボスコの異変に気づき、寺院を訪れていた。
[フー。芳醇な香りと甘い匂い。取れたてのドングリは違うな。ジャック!少し持って帰ろう。アレ?ジャック?……いない………まったくあいつらどこ行ったんだ?オーイ。ミサト、ボスコ。どこに行ったか知らねえか?][どこでも良いじゃない?アタイらは日向ぼっこしてるんだから。黙ってな。昼寝の邪魔だよ][ンダ。オラ、ここにいるだ。あいつらなんか知らねえだ][なんだ?昼寝か。だからやる気が奪われているのか?ン?やる気?………思い出した!ショットガンナーを見かけた場所!確かにこんな磁場だった!二人の男と話していてショットガンナーが何かの契約をして………ジャックやマリアも嗅ぎ付けたか。こうしちゃいられない。俺も行くぞ!………アッ!その前にドングリ、ドングリ!道中、腹が減っては困るからな]パトレシアはドングリを袋一杯詰め、ありったけを口に詰め走った。
[クンクン。臭うぞ!ジャックだ!それに甘いローズの香り。マリアだ!捕らえた]
パトレシアは高台から寺院を見下ろす。
[イタ!あいつらだ!さてとジャックは?………あの野郎、何やってんだ?マリアも。例の二人から放たれた十字架に捕らわれてる。オーイ!ジャック!大丈夫かー?今行くぞ!][………覇王の兄弟。あいつは何故、凡字が効かない?][わからん。あの馬は何者なんだ?]カラカラカラ………パトレシアの袋からドングリが落ちた。[仁王。あの木の実は?][間違い無い。ポタラの木の実。俺達の凡字を中和させる生命力][神々より伝わる伝説の木の実]
ングッ。パトレシアは溜め込んだ口一杯のドングリを飲み込む。[ウオー!力が溢れて来る。ジャック!今助けに行くぞ!]パトレシアは覇王、仁王に向かって走る。[ウオー!ドリャ!ドリャ!ドリャ!ドリャー!気合いだー!]前足で二人を蹴り上げ、落ちてきた所を後ろ足で蹴り飛ばす。[グフッ…………ポタラ。なんて力だ!]ガシュッ。パトレシアは二人の上に股がる。[さあ、ジャックとマリアを放すんだ。それにミサトとボスコのやる気も還すんだ][ワッ………わかった!わかった!]二人は術を解いた。
[つたく。馬!お前勘違いしてないか?俺達はだな………][ヨセ!仁王。見事な腕前だ。その毛並み、筋肉。ジャック。お前の馬か?][パトレシア?お前、何故ここに?][気になって駆けつけたんだよ!ジャック。お前の臭いを辿ってな][臭いを辿った?馬よ。ポタラの木の実にはそんな力が?][覇王、仁王とか言ったな。お前達はここで何をしている?][………すまない。誤解させてしまった様だな。俺達は黄泉帰りの術を使える。だが、それにはこちらもそれなりの試練を与えなくてはいけないのだ。その者が本当に黄泉帰り、つまり生き返るに相応しいか計らなくてはいけないのだ。誤解があったなら許して欲しい。我々も君達を誤解していた。単純に凡字を荒らしに来たと誤解していた][それより馬よ。そのポタラの実を何処で見つけた?][へ?ポタラの実?コレ、ドングリだよ。なあ、ジャック。ドングリだよな。俺の好物だよな]パトレシアは袋一杯の木の実を見せた。[ドングリ?………違うな。ドングリはそんなに匂わない。だから見つけるのがむずかしいんだ。コレは違う。パトレシア。1つ良いか?][アッ……アア。1つだぞ。俺の木の実なんだから。1つにしとけ]カリッカリッ。[旨い!コレがポタラの実か?どんな効力があるんだ?][ポタラの実は凡字を中和させる。太古の昔、神々が生命の木を黄泉に授けた。その木は千年に一度、ポタラの実がなる。その木の実を見つけた者こそ、真の黄泉帰りに相応しい。つまりパトレシア。お前は黄泉帰りに相応しい馬だ][待ってくれ。じゃーさっき食べたジャック・ギャザリスも?][同じく相応しい。さあ、行くが良い。生命の星に戻るのだ。タイムリミットは1日。それ以内に戻ってこい。でなければお前達は永遠の闇に閉ざされる。黄泉の掟を破った罰でな][待ちな!アンタラだけを行かせる訳にはいかないよ。アタイも行くさ。それにミサトやボスコ。皆で戻るんだ]
三人はミサトのいた場所に戻りポタラの実を渡した。[ハー!俺の木の実が四個も…………アレ?木が枯れてる。あの………なんだっけ?][神々よ。生命の木を授けてくれてありがとうございます。我々が生命の星に戻る事をお許し下さい]ジャックは手を組んで神々に祈りを捧げた。[ネェ。何があったの?][ンダ。オラ達にもわかるように説明してけれ]
ジャックとマリアは寺院に向かう途中説明した。
[へー。そんな事があったの?][凡字に生命の木。不思議な世界だべな]
[よし。集まったな。旅人よ。我々からも頼みがある。3年前、この寺院を訪れた男がいた。彼の名はショットガンナー。奴を連れ戻せ。ジャック。お前にこの数珠を授けよう。コレで奴の魔力を無効に出来る。アドニスに、神の遣いに渡して欲しい。期限はわかっているな][待ってくれ。俺達はアインシャーク三世やアドニスに用があるんだ][彼等なら既にウエストホースにいる。つまり行き先は同じだ。皆、ショットガンナーを目指している][ソリャー都合が良いなあ。ジャック。離ればなれになるより纏まって行動出来るしな][決まりだ!行くぞ皆!]
パトレシア、ジャック、ミサト、ボスコ、マリアの五人はチーム黄泉帰りとして、再び生命の星に降臨した。たった1日の出来事だった。
帰らざる時の果て 完結。
次回、集結の絆。