お腹を空かせてはいけない部屋

作者：秋桜星華

しいなここみさまの「してはいけない企画」参加作品です。

　親友の美沙が一日だけマンションの部屋を留守にするというので、私が留守番をすることになった。

　留守番とはいっても、じつはお願いしたのは私のほうだ。彼女の豪華なマンションの部屋にぜひとも住んでみたかったのだ。

「置いてあるものは動かさないでね。ゲーム機は好きに使っていいわよ。蛇口も好きにひねってね。フェレットとも好きに遊んで。スマホも見ていいわよ」

　私を連れて、美沙は部屋の中を案内してくれた。

　そして、真っ白な身体をしたフェレットがいた。かわいい。こんな子と一緒に暮らせるとか幸せだ。

「汚したらちゃんと掃除してね？　ベッドのシーツは私が帰るまでに取り替えて」

「ベッドの上でお菓子なんて食べないわよ」

　私はそんなつもりは本当になかった。

「ただ、いつもの安アパートとは違う暮らしがしてみたいだけだから」

　キッチンへ案内すると、美沙は冷蔵庫を開けた。

「中に入ってる食料品、自由に食べていいわよ。賞味期限の近いものから片付けてね？」

　開けられた冷蔵庫の中を見て、私は盛大に驚いた。

「高級食品がいっぱい！　これ、好きに食べていいの？」

「うん」

「わぁい♪」

「ただひとつ、空腹にだけは絶対にならないで」

「え！？」

「お腹を空かせないで」

「お腹を空かせると……どうなるの？」

「わからない」

「わからない……って？」

「この部屋に入る前に、管理人さんに言われたの。『この部屋ではけっしてお腹を空かせるな』って。『おそろしいことが起こるから』って──。だから、冷蔵庫も満タンでしょ？」

「ど……、どんなおそろしいことが？」

「わからないわ。知りたいならお腹を空かせてみればいいじゃない」

　脅されて、そんな勇気はもてなかった。

「……やめとく」

「それじゃお留守番、お願いね」

　美沙はまるで海外旅行にでも行くみたいな大荷物を身の回りに出現させると、部屋をすうっと出ていった。

　◇　◇　◇

「へへ……。ブルジョワ気分」

　私はふかふかのベッドの上で飛び跳ね、ゲーム機で遊び、蛇口をひねり放題にひねり、フェレットと遊び、スマホをチェックし、冷蔵庫の高級食品をフェレットと一緒に食い尽くすと、やることがなくなった。

　ぎゅるるる～

　急に、お腹がなった。

「おかしいな、さっきまでフォアグラ食べてたのに」

　とはいえ、自分ではお腹が空いているようには感じられない。まだ大丈夫だろう。

　――そう思って、食後の眠りの誘惑に身体を預けた。

　◇　◇　◇

　あぁ、腹減った……

　そう思いながら眠りから覚めるのを感じた。

　パッと目を開けると、胸の上にフェレットが乗っていた。

　白い、かわいいフェレット……

　あぁ、白い、きれい、かわいい、美しい、そして。

　――おいしそう。

　いつのまにかこちらをつぶらな瞳でみつめるフェレットの、首元をつかんでいた。

このネタ……すみません(__)

オチがこれしか思いつかなくて……！

追記

とんでもない誤字がありました。

猫いないのに猫と遊んでました。