05話「商人と地図と」
若干、単語がたくさん出てきます…!
後書きにまとめておくので、良かったら見て整理していただければと
心地よく一定のリズムで揺れる馬車……いや、竜車だったか。その荷台から手綱を握るレーガドンナの背中を眺めていた。
そうしながら、心の中で言葉にならないモヤモヤを何とか言葉にしようと頭を捻っていた。
「そうか、ついに分かったぞ! 」
ようやくその正体が分かって、胸のつかえがスッキリと取れた。
レーガドンナは相変わらず前を向いたままだ。
「どうして見ず知らずの俺にここまでしてくれるんだ? 」
レーガドンナはこちらを振り向かずに、当たり前かのように言った。
「俺は仮にも商人だぞ。商人ってのは人を見る目が大事なんだよ」
正直よく分からなかった。でも、こんな風にとにかく良くしてくれるのはありがたい。それと同時に少しだけ照れくさくもある。
レーガドンナの目に俺はどう映ってるんだろうか。
ふと、レーガドンナが左腕を気にしているのが目に付いた。
「少し暗くなってきたが、今日はもう少し先まで進む。魔獣が出るかもしれんが、まぁ大丈夫だろう」
そう言われて気がついた。辺りは既に薄暗くなり始めていた。
魔獣……さっきレーガドンナから聞いたが、文字通り魔力を持つ獣らしい。あまりピンとは来ない。
あまりに暇だったので、積まれていた荷物を眺めていると、1冊の本が目に入った。
商売道具を勝手に触るなと怒られそうだが、まぁ大丈夫だろう。優しいからなレーガドンナは。
「失礼して……ちょっと読ませてもらおう」
相変わらず文字は読めない。全く検討もつかない……形象文字みたいだ。
「なぁ、この世界にはこの文字しかないのか? 」
「そうだな、基本的にはそれだ。東方盟約国って国は違う文字が使われてるらしいが、俺もよく知らん」
東方盟約国だけなのか……文字に関しては諦めて勉強するしかないのか。
「お前、文字も読めないのか。そういえば、何も知らないよなお前は」
レーガドンナは少し呆れたようにそう言った。
「仕方ない。俺が教えてやる」
相変わらず面倒見が良い。
「一旦、どこからだ。自分が今いる場所くらいはわかるか? 」
「いや、分からない……」
本当に分からない。あのブラックな……なんと言ったか、ルートギルド? だったか。あそこの近くなのかも分からない。
「そこからか……ここはアルゴラニア王国北方、ガルノベルト伯爵領に入ったところだ。そうだな、ちょうどこの辺りだ」
レーガドンナは竜車を路肩に停め、どこからか地図を持ってきて説明してくれた。
「そんで、俺たちが向かっているのが……ここだ。この王国の王都、ノヴァンロードだ」
俺が転生してきた国はアルゴラニア王国という名前らしい。王国か……いかにもファンタジーって感じするな。文明的にもこの舗装されてない土の道を見るに中世くらいだろうか。
その地図に、名前の違う王家領が2つ存在していることに少しだけ引っかかった。
「そうだ。先に言っておく。ノーフラン教のヤツらには気をつけろよ。一応国教になってるが、基本的にヤバい集団に変わりねぇからな」
「分かった。ノーフラン教だな」
再び竜車が動き出し、その後も俺はその地図を眺めていた。こうしてよく知らない土地の地図を見ていると、本当に旅をしているんだなと実感する。
「王都に向かってるんだよな? 何しに行くんだ? 」
「言ったろ、俺は商人だ。もちろん、得意先に仕入れに行く」
王都か……改めて良い響きだな。今からもう楽しみでワクワクだ。
この竜車の揺れにも少しずつ慣れてきた。異世界の旅というのも悪くない。
***
「ここで停める。今日はここまでだ」
そう言ってレーガドンナは竜車を停め、飛び降りた。
そして慣れた手つきで素早く火を起こし、鍋やら調理器具を用意し始めた。
「俺も何か手伝うよ」
「あぁ、そんじゃあ……あっちの方に湖があったはずだ。行って水を汲んできてくれ」
レーガドンナは森の方を指さしながらそう言って、大きめのバケツを2つ俺に手渡した。
「1つは俺たち用、もう1つはガルグラ用だ」
ガルグラというのはレーガドンナの愛稚竜の名前だ。
「分かった。行ってくる」
「気をつけろよ……そうだ、これ持ってけ。護身用だ」
小刀を渡された。そんな物騒な……いやまぁ、そうだよな。念の為にな。
それを腰に差し、森の方へ歩き出す。
森の草と土の匂いと、聞き馴染みのない虫の声が耳に届いた。うん、悪くないな。今のところは。
静まり返る森の中で、少しだけ異質な雰囲気を感じたが――あまり気に止めることはなかった。
国名:アルゴラニア王国
王都:ノヴァンロード
国教:ノーフラン教
違う文字体系があるとある国:東方盟約国
レーガドンナの愛稚竜:ガルグラ




