賢者は変装する。
シトリーの服作っているときに俺のも一緒に作っておけば良かったな。
人里に行くなら、巣で拾った布切れだけでは不安だ。その為、サイクロプスの腰巻を適当な大きさに切断し、ローブとして着る。黒色だから汚れが目立たない。
サイクロプスの残骸はいつも通りハイドフェイスが収納してくれた。
俺達はシトリーが発った街を目的地とし、出発。現在は夜だが、ハイドフェイスが魔法で照らしているお陰で暗くない。それはそれとして進めば進むほど現れる魔物が鬱陶しいこと極まりない。
「シトリー様、タラメインとはどんな街なのですか?」
ハイドフェイスが問う。タラメインとはシトリーが発った街の名前だ。
「えっと、迷宮都市で観光客や住人がいっぱい居ます。あと、近くに灰銀級以上の資源級迷宮が4つあって、資源やお金が潤沢な街です」
「シトリーはそこで何をしてたんだ?」
次は俺が問う。
「僕は冒険者でした。そのクエストに向かっている途中にご主人様たちに襲われて今に至ります」
それじゃあ、俺達が真面目に仕事してる青年を無理矢理襲って連れ回してる最低みたいじゃん。
「そのクエストは畑を荒らしたり、村の女性たちを攫って行ったりして暴れているゴブリンの駆除、及び女性たちの精神的援助です」
それって俺の生まれた巣に居たあのゴブリン共のことか? 村から攫われた女性はあの少女達のことだろうか。
「御主人様」
ハイドフェイスに呼ばれる。
「疑問なんですが、私と御主人様が街に入ることは可能でしょうか?」
ハイドフェイスが言う。
「変装だよ。観光客が沢山訪れる街なら滅多なことがない限りは怪しい格好でも入れる」
あ、じゃあ、とシトリーが言う。
「ご主人様、この道は冒険者たちが迷宮に行く道なので観光客が来る道に変えましょう」
「そうだな。なぁ、観光客は馬車で来るよな?」
シトリーの方を見て問う。はい、と言いながら頷く。
「馬車に乗る分の金は持っているか?」
「舐めてもらっちゃ困ります! 流石にそのくらいのお金は持ってます」
元気よく言った。
「では、道を変えよう。で、その道は何処だ?」
「あっちの奥に整備された道があります」
シトリーは森を指す。そうか、あの森を突っ切るのか。
魔物を数匹倒して道が見えたは数十分後。
夜だからか人通りは全く無い。
「シトリー、この仮面を着けてくれ」
ハイドフェイスの仮面の意匠を弄った仮面を魔力で生成し、シトリーに渡す。
仮面の傷や色褪せ、草臥れた紐。そのすべてが何年も使った物に見える。
「この仮面を着けるの?」
受け取ったシトリーは首を傾げる。
「冒険者をやっているシトリーの顔を知っている者は少なくない。だから隠す」
なるほど、と言う様にシトリーは掌を拳で打つ。
仮面を着けて、似合ってる? と問うてくるシトリーをてきとーにあしらう。
俺の仮面はハイドフェイスとシトリーの仮面を混ぜ合わせた様な意匠だ。それを生成し、顔に着けて後ろで結ぶ。
「あとはハイドフェイスとシトリーの偽名だな」




