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はじまり

メノウの玉と鹿のツノが連なった首飾りは権力者の印だ。

藍色に染めた上着に金の刺繍が施され、腰に金の飾りをつけ、その下は柔らかい絹の袴をはいている。

肩にかかる髪は艶やかで日ごとに手入れしているのだろう。

髪をかき上げると、漆で色付けした木製の腕輪が見える。所々松明の明かりで反射しているのは玉か貝殻が装飾されているのだろうか。

どこぞの豪族?

突然現れた煌びやかな浅黒い肌の男に見とれていると、腰にさした青銅の剣をとり、こちらに降りかかった。

あまりの麗しい姿に見とれて自分の本分も忘れていたが、私は逃げている途中だった。

こいつも追手だったのか。

もう捕まるくらいなら、いっそ殺してほしい。


この国には紅色の眼をした女は、天変地異を占う術を知る者を孕むという伝説がある。私は生まれてすぐ母親から引き裂かれ国を治める王に監禁された。私自身は何の能力もないのに、権力が他に奪われないよう、王権が存続のために保管されていたのだ。

教養と称して洗脳するように王家の素晴らしさと夫となる王子の功績を聞いた。王子の姿を見ることもなく、召使いの女たちとの生活。監禁といっても広い庭で花摘みをしたり、屋敷から出なければ自由だった。上等な服を着せてもらい、好きなものを食べて、何の疑問も感じずに暮らしていた。

ある時、召使いの噂話を聞いた。王子は飽きた女を八つ裂きにし焼いて遊ぶような傍若無人な輩だと。

嘘だと思いたかったが、あれから噂好きの召使いの後をついてまわると、ろくでもない話を聞くことになる。酒に溺れ暴れる、嫌いな食事を出した下女を家族諸共消した、山で狩をして遊んでばかり、祭り事にも参加しない…。

このままでは私も酷い目にあるかもしれない。

日が沈んだ頃に、屋敷を抜け出すことにした。

召使いの薄汚れた麻布の服を着て裸足のまま屋敷の壁をよじ登った。死にものぐるいに草原を走っていたら、あの麗しい剣の使い手に出会ってしまったのだ。


どうせ自由のない身。死んでも生きても変わらない。

目をつぶって、覚悟を決めた。

私の後ろで呻き声がして、思わず振り返ると、普段屋敷の門番をしている者たちが倒れている。


剣の使い手は私の味方なのだろうか?

彼が口笛を吹くと、どこからか馬がやってきた。

わが王国で馬に乗れるのは王子だけと聞いたことがある。

ということは別の国の人なのか。

男は、あっという間に馬に乗った。

「どこに行くつもりだったのか」

「分かりません。とにかく逃げたいのです」

「私の屋敷に来るか?そこなら誰もこない」

男は私の手を取った。


馬に乗るのも、落ちないように男の腹をつかむのも、全てが初めてのことで、叫んでいるうちに山奥の屋敷にたどり着いた。

「こんなに山に近づいたら祟りが…」

「よく学んでいるな。お陰で祟りを心配して皆ここには来れぬ」

頭のいい男だ。この人のそばにいれば助かるかもしれない。

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