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オセロ

作者: 楽部

 週末、母と叔母のおしゃべりは長く、その間、従弟は従姉と盤を交えていた。従弟は顔、手足とともにその日焼け跡を誇り、従姉の内向き加減、色の薄さを際立たせる。努めて勇ましく利発さも兼ね備え、だが、まだ未熟。覚えるに一分、極めるに一生のゲームは単純性と複雑性、双方釣り合いが望まれる。


「負けたぁ〜」

「ふふふっ」


 盤上は、白に支配されていた。


「じゃあ、もう一回ね」

「うん」


 自然と追加された、負けた方が相手の言うことを聞くという少年少女の決まりルール。淑女たちは他愛もない会話に浸っており、先後を入れ替えた再戦は白黒つけるまで、反転リバース、裏返しを裏返す。


 …パタン、ペタン。…パタン。


 きりっと盤面に入り込んだ真剣さ。苦悩の末に置かれる石は鋭いが、それを可愛らしく見つめる従姉はすぐさま反撃を打ち下ろす。細かく保たれる均衡、二つの音は静かに刻まれていく。


 中、外野からの声。淑女たちは戯れにかき乱す。


「そう言えば、うちの娘ったら、この前背の高い男子と帰りが一緒でね」

「あらっ♪」


 潜めるようにニヤニヤとする面々。意識する、顔をやや持ち上げる対面。煩わしい、聞かせるように従姉は返事を口に出す。


「委員会の先輩よ」、と。


 しかし、窺う纏わり付く視線。繰り出される疑問の、詰問の攻め手。


 も、なあんてことない、平然とした打ち返し。


 入り乱れる局面も、知ってか知らずか悪戯な淑女たちは、響きやすい心へざわめきを上乗せる。


「うちの息子もねぇ。誕生日に同級生の子からプレゼント貰ったりしたの」

「まあっ♪」

 

 やるじゃない、君も。


 翻って窮地へ。微笑みを繕う白い面が、黒く染めていく盤上の面。


「これは隅に置けないわ、ねぇ」


 透き通った血管の手が覆う。角を隠すつもりの、角が取れない搦め手。


「フフ、ジョーダンよ」


 すっと退かし、そのまま焼けた髪へ遣り、懊悩をかき混ぜる。


「引き分け、だね」

「う、うん」


 引き分けは引き分け、決まりの決め事。

 淑女たちがそぞろ終わりを迎える頃、二人も持ち越しとする。


「また今度?」

「また今度」


 今のところ白黒つかない、つけるでない。盤外に翻弄されながら、語らいは続いていく。

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