十. 日 記
シャワーの微孔から絶え間なく沸き出る湯気の向こうに、丸い照明の灯りがぼんやりと浮かんでいる。
首筋に触れたあたたかい湯束が、私の鎖骨から胸の谷間へとそそぎ込み、恥骨の膨らみを舐めるようにつたっていって、最後にほっそりと引き締まったふくらはぎへたどり着く。きっと、摩帆の体内からとび散った返り血を、綺麗に洗い流してくれることだろう。
石鹸の香り漂う湯けむりに包まれながら、私は思った。
全てがおわった。
摩帆も摩奈も摩衣もみんな死んだ。姉妹の中で生き残ったのはこの私だけだ。もうこれで、私を脅かすものは何も存在しない。
翌朝、摩帆の遺体の処分は、使用人たちが協力して行ってくれた。使用人たちにしてみれば、私は殺人犯ではなくて、四姉妹の唯一の生存者であり、そして五月女財閥の正統な後継者なのだ。
作業を終えた大河原氏に、私は近づいていって訊ねた。
「ところで、大河原、五月女摩由姫が死んだ時、彼女は何歳だったの」
「享年四十歳でございました。お嬢さま」
ということは逆算をすれば、私たち四姉妹を彼女が身篭ったのは二十代後半ということになる。それは彼女の研究がもっとも脂がのっていた時期でもあったはずだ。そんな忙しい時に、子供を身篭りながら博士の称号を取得するのは、できないことはないが、何かしっくり来ない。冷淡で合理的な摩由姫らしからぬ行動である。
私は大河原氏にもう一つ質問をしてみた。返される答えはおおかた予想が付いていたのだが……。
「摩由姫の研究分野は何なの」
「医学でございます。お嬢さま」
私は大河原氏といっしょに屋根裏まで上っていった。
「さあ、この壁を壊して頂戴。あなたが塗りこめたんでしょ」
目の前に佇む漆喰の塗り壁を擦りながら、私は大河原氏に命じた。
斧を受け取った大河原氏は、塗り壁を壊しはじめた。すると、崩れ落ちた壁の中からオーク材の頑丈な扉が現れた。
これが、開かずの扉……。
「この扉の鍵は開けることができるの」
振り向いて、私が訊ねると、
「はい、しばらくお待ちください」と大河原氏がかしこまった。
大河原氏は一旦階下に下りて、すぐに戻って来た。手には鍵の束を携えている。束の中から鍵を一つ選んで扉の鍵穴に差しこんだ。
ガチャリと音をたてて、開かずの扉が開放される。
摩奈の話にも出てきたこの謎の部屋は、見た感じは屋根裏と同じく殺風景な空間に過ぎなかった。ただ奥の壁にさらに扉がもう一つ見える。その扉はこちら側から錠を下ろす構造になっており、ちょうど顔の高さのところに鉄格子の窓枠が嵌めこまれていた。まるで誰かを幽閉する目的で造られた部屋のようであった。
鉄格子越しに内側を覗き込むと、そこは階下にある白い扉の小部屋と同じくらいの広さがあった。しかし、ベランダ窓はなく、手が届かない高さに採光のための小さな天窓があるだけだった。そして、ベッドがたった一つだけ、それがこの部屋の唯一の家具であった。
「ここに、摩衣が閉じこめられていたのね」
「はい、摩衣さまは生まれた当時から脳に障害がおありでした。摩由姫お嬢さまが密かにここに囲まってお育てになられていたのでございます。このことは、私と家内、あとは守屋を除いて、どなたもご存知ありません」
「そして摩由姫が不慮の事故で死んだ時に、摩衣は取り残されてしまったってわけね」
そういって、私は壁に意味ありげに飾られたキアゲハの蝶の標本を見上げた。いうまでもなく、黄色は摩衣の個人色ということだ。
食堂にかけられた財閥の象徴である五色旗。それが意味するものは、わかってみればたわいのないことだった。中央の紫色が摩由姫で、それを取り囲む四色が私たち四姉妹を表していたのだ。
そういえば遺言状公開前日の晩餐で、摩帆が声を出して驚いたのは、五色旗のひとつひとつの色が私たちひとりひとりを表していることに気付いたからだ。私がここに来ないうちは、紫と赤と白の三人しかいなかったから、その意味がわかるはずもなかろうが、私が来たことで、あたらに黒という色の存在がはっきりした。されば、最後の黄色もある人物を表していることも容易に想定できる。あの時の摩帆は、私ちが三姉妹ではなく、四姉妹であるという事実を知り、驚愕のあまり声を発してしまったと、大方、そんなとこだろう。
「はい、私と家内で残された摩衣さまのお世話をいたしましたが、摩由姫お嬢さまがお亡くなりになってほどなく、摩衣さまも後を追われてお亡くなりあそばせました」
摩衣にはきっと、専門家の摩由姫にしかわからない持病があったのだろう。私は少考して付け足した。
「そうなの。でも、摩衣が死んだのは、あなたたちのせいではないと思うわ」
「お慰めありがとうございます、お嬢さま。
私たちは誰にも気づかれぬよう、摩衣さまのご遺体を処分いたしました。そしてその後、この秘密のお部屋を隠蔽するため、壁の中へ塗り込めました」
そう告げると、大河原氏はちょっと黙り込んでから、すっと顔を上げた。
「ところで、お嬢さまはいつから摩衣さまがすでに亡くなっていることをお気づきあそばされたのですか」
私は大河原氏にちらっと目をやった。
「あなた自身がいったじゃない。摩帆が長女で、私が次女、そして摩奈が三女だって……。でも摩由姫の遺言状によれば、摩衣が三女で、摩奈は四女ということにだったわね。
遺言執行人の松川弁護士は、摩由姫から委託された手紙を読んでいる。そこには私たち四姉妹全員の名前が記載されていたから、彼が摩衣の存在を知っていたのは明らかよ。もちろん、彼女の生死まで知る由はなかったでしょうけどね。
一方で、あなたは高崎ホテルまで私を迎えに行くという役目を負わされた。当然、私たちが四姉妹であるという情報を、あなたは松川氏から聞かされていることになる。
なのに私との初対面時に、あなたは私たちが三姉妹であるとはっきり断言したの。さあ、どうしてかしら? すなわち、あなたは摩衣がすでに死んでいることを知っていた、と解釈するのが自然よね」
「左様でございますか。でしゃばった質問をお許しください」
大河原氏が深々と頭を下げた。
「ありがとう、もう下がっていいわ」
私は大河原氏を部屋から追い出した。
開かずの間では摩衣を閉じ込めていた独房のほかに、目ぼしいものは何も見当たらなかった。でも、私には確信があった。この部屋にはさらなる秘密の通路が存在することを。
やはり、そうだった。独房部屋の脇に、やっと人が通れるほどの細いすき間があって、その先は暗くなっていたが、近づいてのぞき込めば、下に降りるためのらせん階段がしっかりあるではないか。
そのらせん階段は、あざみ館の正面玄関から見えたあの大階段と比べれば、ごくちっぽけなもので、狭い場所に無理やりに設置された隠し階段であった。
私は階段をそろそろと降りていった。光が差し込んでこないので、煉瓦でできた壁を手で探りながら注意して進むしかなかった。やがて階段は床に遮られて止まった。
私が今立っているこの場所は、間違いなく三階の高さであり、位置的にはエレベーターの真上に当たると推測される。つまり、三階の摩帆の部屋や図書室の奥にあった壁の、さらに向こう側に当たる場所ということだ。
外から見たあざみ館はカステラのような長方形をしていたから、三階の敷地は一階や二階と同じ広さでなければならない。だから三階だけが廊下の奥行きが短くなっている事実を知った私は、この空間へと通ずる秘密の通路が必ず屋敷内のどこかに存在する、とひそかに思っていた。さらには、もしもそんな秘密の通路があるとすれば、最もあやしいのが屋根裏だ。なぜなら、屋根裏の床は三階のすべての部屋の天井となっているのだから、逆に考えれば、三階のすべての部屋をつなぐことも可能であるからだ。
秘密のらせん階段を降り立った地点の真正面には、いかにもあやしげなオーク材でできた物々しく頑丈な扉が立ち塞がっていた。扉に付いている真鍮製のノブに手を掛けると、いとも簡単に回った。どうやら鍵は掛かってはいないみたいだ。
部屋に入ると、大きなテーブルがあって、様々な実験の小道具が載っていた。テーブルの向こうには本棚があり、脇には執筆用の机と椅子があった。
さて、この部屋の中にはきっと、摩由姫が後継者に向けて残した秘密のメッセージがあるはずだ。
なぜ、摩由姫は四人の娘を戦わせるよう仕向けたのか。
なぜ、摩由姫は研究が忙しくなった時に、子供を身篭ったのか。
なぜ、摩由姫と私たち姉妹の容姿がこんなに酷似しているのか。姉妹同士が酷似するのはまだしも、母と娘がここまで似てしまうのは、やはりおかしい。通常ならば、父親の遺伝子も半分は取りこんでいるはずなのだから。
そうなのだ。これらの事実は全てある一つの分野を示唆している。医学博士である才女五月女摩由姫が、全身全霊を打ちこんだ極秘の研究を。
「あった、これだ」
ついに私は、大きな革表紙の日記帳を見つけ出した。息吐く間さえ惜しむべく、その中身を私は読み始めた。
**年十一月一四日
いよいよ念願の計画が実現可能となった。代理母は七人、すでに確保してある。いずれも、健康面では申し分ない。
**年十二月二日
私の細胞核を移植した未受精卵は、電気刺激を加えた後、予定通り順調に分裂を行っている。明日から、いよいよ代理母に順番に移植していく。果たして、上手くいくだろうか。
**年二月七日
流産。(代理母一)
**年七月四日
第一子、誕生。(代理母五)早産児。摩梨と名付ける。
**年七月二十九日
第二子、誕生。(代理母四)母子ともども健康。摩帆と名付ける。
**年八月三日
第三子、誕生。(代理母六)母子ともども健康。摩耶と名付ける。
**年八月六日
第四子、誕生。(代理母二)低体重児。摩衣と名付ける。
**年八月八日
第五子、誕生。(代理母七)母子ともども健康。摩奈と名付ける。
**年八月十日
第六子、誕生。(代理母三)奇形があるため廃棄処分。醜き後継者なんて、育てる意味がない。
**年八月一三日
摩帆、摩耶、摩奈の三子は健康面に問題無し。摩梨は生存が極めて厳しい状況。摩衣は、どうにか命は取り留めそうだが、中枢神経系に致命的な後遺症が残る見込み。
結局、使えそうな娘は三人に絞られてしまったということか。 代理母は七人も用意したのに。
**年八月十九日
摩梨(第一子)が心不全による呼吸停止。蘇生の見込みが立たないので廃棄処分。
日記にはこの後の経過も生々しく記述されていた。その内容で私が特に気になった箇所だけを抜粋しておく。
**年三月五日
摩耶(第三子)を西野須美代助手にあずけることにした。理由は、四人の娘を同じ環境で育てるより、一部の娘の境遇に変化を与えた方が、後天的な性格に相違が出てくること可能性が期待されるためである。私が後継者に望むのは、単に美しいだけではなく、賢くて強い人間なのだ。摩帆と摩奈、それに摩衣については、私があざみ館にて責任を持って育てることにする。
**年三月一五日
摩帆に続いて、摩奈にも初潮が来た。二人とも十一歳だから、成長は順調であるといえよう。さて、摩帆と摩奈のどちらに変化を与えようか? このままでは、二人は同じ人格に育ってしまうであろう。それでは面白くない。
**年八月八日
摩帆と摩奈、摩衣が今日で十三歳になった。(娘たちの誕生日は統一して八月八日と定めてある。)摩帆と摩奈の月経の周期は安定している。私は女にする娘として摩奈を選ぶことにした。理由は、摩帆はどちらかといえば利己的で線が細いけど、摩奈はおおらかで受容的な性格だから、男を魅了する能力が摩帆よりも長けている期待されるからである。摩帆はこれまでどおり純真無垢な少女に育て、摩奈には今宵から女性の喜びを教えていくことにする。
世の男たちにとって、清純な女性と妖艶な女性とでは、果たしてどちらが好まれるであろうか? でもそれは、答えのない永遠の命題なのかもしれない。
**年八月一九日
昨晩、摩奈の処女を壊した。相当痛がっていたが、じきに行為に慣れていくことだろう。なお、膜を破る際にはゴム手袋を使用した。これは衛生上の問題もあろうが、たとえ女である私の指であろうと、大切な局部をじかに触るのは、摩奈という女性の商品価値を著しく汚し損ねてしまうように思われたからだ。今後も、局部を触れる際にゴム手袋は必ず着用するよう心掛ける。摩奈はすでに肉体的には処女でないのだが、精神的には純真無垢な少女であり続けるのだから。
**年二月十四日
摩奈が県道で事故に遭ってしまった。あれほど冬の凍結時に一人で町へ出歩くなといっておいたのに。
幸い命に別状は無いものの、下半身が麻痺してしまった。医師の診断では今後回復の見込みは無いとのことだ。ああ、何ということだろう。こんなことになるのなら、摩奈を女に仕込むのではなく、摩帆にしておけば良かった。下半身不随の女が醸し出す性的魅力なんて、想像すらできない。
こうなったら、摩帆を手にかけるしかないか。
そして、その年のこの日付が摩由姫の最後の文章となっていた。
**年三月十九日
最近、摩帆の目つきがおかしい。私の思惑を察知したのだろうか。いや、いくらなんでもそこまでわかるはずはない。単なる温室育ちの娘だとばかり思っていたけど、やはり、私の素養をきちんと受け継いでいるということか? だとしたら、これからが楽しみだ。
そろそろ私の役目も終わろうとしているのかもしれない。
医学博士、五月女摩由姫の専門分野は人工的無性生殖技術だった。そして、彼女はその禁断の技術を自らの肉体に応用したのだ。私たちは、摩由姫の娘ではなくて、摩由姫の肉体コピー、すなわち無性生殖体であった。
でも、その目的は。
私には何となく理解できるような気がする。才能と美貌に恵まれた五月女摩由姫――。自ら研究するクローン技術という神の力を利用して、自分という存在を永遠に残してみたくなったのではなかろうか。
しかし、たとえクローンの製造に成功しても、その個体が思うがままに成長してくれるとは限らない。だから摩由姫は複数の個体の製造に着手した。生まれて間もなく生き残った四人を、一卵性の四つ子という設定にして育てることにしたのだ。
彼女の危惧は、そのクローンたちがきちんと理想の女性、すなわち自分自身に成長するのかどうか、という心配だった。先天的な要素は全く同じである。遺伝子が同じなのだから。しかし、後天的な要因、つまり、成長過程における環境の違いによって、摩由姫とは似ても似つかぬ存在となってしまうという怖れはあった。そこで彼女は、四人の娘に様々な環境を提供して、その成り行きを見極めようと考えた。そんな中で、敢えてクローンの一人をほかのクローンたちとは別な場所で育てようと考えた。それが、私――摩耶に課された運命であったのだ。
摩由姫の日記の最後の頁はこう綴られている。
この日記を手にしているあなたは、私の正統な後継者である。そこで、あなたにお願いする。あなたは類まれなる私の遺伝子を継承した、私自身である。
あなたに今日から『五月女摩由姫』を名のることを許可する。そして、五月女摩由姫という類まれなる遺伝子を未来永劫保存するプロジェクトの使命を与える。方法については別書に詳しく記してあるので、あなたの才智を持ってすれば、計画の執行は十分に可能となろう。
心配するまでもなかろうが、一つだけ忠告を添えておく。もし、あなた以外のクローンが、オリジナルである私自身も含めて、まだ生存をしているのならば、即刻、処分してしまいなさい。それらの存在は、計画執行のための大きな障害となりますからね。
こうして私は生き残った。私以外のコピーは、オリジナルも含めて全員が死亡した。
ところで、私っていったい誰なのだろう?
西野摩耶――、それとも、五月女摩耶――。
本当に私は摩耶で間違いないのだろうか。だんだん、自分というものが曖昧になっていく。
かつて、摩帆と摩奈が食堂で悪戯をして入れ替わったように、私と誰かが入れ替わっていないという保障はどこにもない。もしかしたら、私は摩帆で、私に刺されて死んだ娘が摩耶だったのかも知れない。
しかし、はっきりしたことが一つだけある。私は五月女摩由姫になれたのだ!
あれから一年が経過した。私は今もあざみ館で平穏に暮らしている。
私の名前は五月女摩由姫。年齢こそ公開はしないが、計算上は四十八歳ということになる。
摩帆、摩耶、摩奈という名前の三姉妹は、そもそもこの世にいなかった、ということだ。
彼女たちの戸籍は、はじめから存在しない。そして、摩由姫の死亡届だって未だ提出されてはいないのだ。あざみ館には、五月女摩由姫という美しく聡明な女性が一人、平凡な日々を過ごしているに過ぎない。
あざみ館――。
考えてみれば、美しく棘のある花、あざみは摩由姫のイメージにぴったり合う気がする。
私はふと思う。あまりにも自分に酷似した他の存在を否定したい思いは、そもそも人間に先天的にインプットされている防衛本能ではなかろうか。先代の五月女摩由姫は、遺産を餌にしたものの、それがなくたってクローン同士で生き残りを賭けた壮絶な殺し合いが生じることに、おそらくは確信があったに違いない。それ故、自らも殺されてしまうおそれがあるから、早々に遺言状を作成しておいた。そして、私たちが二十歳になるタイミングで遺言の公開を行い、たとえ複数のコピーが生き残っていても、お互いの殺し合いが助長されるよう、仕向けたのだ。
蜂の世界で新しい女王蜂が必要となると、巣の中で候補となる幼虫が複数準備される。その中で最初に羽化した幼虫が、晴れて新しい女王となるわけだが、女王になれたその蜂は、直後に他の候補だったサナギたちを見つけ出して、次々と食い殺していくそうだ。
五月女摩由姫の後継者だって、蜂の世界と同様、たった一人でなければならない。
私は、私たち姉妹の尊厳を無視した鬼畜的な先代の行為を、絶対に赦すことはできない。しかしながら、今の私には、そんな私怨を超越した壮大な使命が課されている。人類全体の利益にも繋がりかねない至高の研究の継承。五月女摩由姫の正当な後継者としてなさねばならない責務が残されている。
私の眼前に七本の試験管が並んでいて、それぞれには、七つの卵子がすでに投与されている。私の細胞核の移植も済んでいて、後は、細胞融合を誘発させるだけとなっている。
細胞に電気刺激を加える特殊装置に、起動用の止釘式スイッチが付いていた。一つの起動スイッチから七つの融合実験を同時に開始させる理由は、私のこだわりによるものだ。まあ、簡単にいってしまえば、一種の儀式である。すべての候補者には平等の機会が与えられなければならない。そのために用意されたたった一つのトグルスイッチ。
妖しげに光沢を解き放つスイッチの突起部に、今まさに私の美しい指先が触れようとしている。新たなる運命を切り開くために……。
長い文章を読んでいただき、ありがとうございます。ご意見・ご感想をお待ちしております。