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【書籍化】顔だけ聖女なのに、死に戻ったら冷酷だった公爵様の本音が甘すぎます!  作者: 一分咲
二章

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とんでもない勘違い②

 困惑を極めつつ、エステルはルシアンを自分の世界から呼び戻した。


「あの、ルシアン様」


 すると、ルシアンは青みがかったグレーの瞳で覗き込み、意味深に問いかけてくる。


「俺がどうして酔ったか知ってる?」

「やっぱり酔っていらっしゃるのですね」

「少しだけだ」


 ソファの隣同士に座っているから、距離が近い。ルシアンの低い声がエステルの耳元で響く。まるで囁くような甘い感覚にどきりとすれば、ルシアンは本音を語り始めた。


「今日の晩餐会は腹が立った。あいつら、俺に婚約者がいると知っているのに、聖女リーナのことを勧めてくる。おまけにその愛するエステルは下座であの子狼たちと楽しそうに食事をしている。何度テーブルを蹴っ飛ばしてエステルの隣に座りたいと思ったことか」

「ル、ルシアン様?」


 いきなりヒートアップしたのでエステルは驚いたが、それでもルシアンは止まらない。


「俺がリーナの好みの男だという噂を流してほしいというのはエステルの頼みだ。だから今日は何を言われても否定せずに我慢した。でもイライラばかりが募って酒が進んだ」

「申し訳……」


 謝ろうとしたところで、ルシアンは立ち上がり、ソファに座ったままのエステルに覆い被さるように背もたれに手をついた。性急さはなく、ゆっくりと絡めとるような緩慢な動きだった。


 けれど、エステルは全く動けない。


「俺の婚約者はエステルだけなんだけど? いくら聖女リーナとスレヴィのためだとはいえ、どうしてこんな頼みを受けたんだ? 酷すぎない?」

「……!」


 それは、まさにエステルが晩餐会の最中に感じていたことでもあって、何の言葉も返せない。ただ、心臓がドキドキと早鐘を打つだけだ。そして、両方の肩のところにルシアンの手がついてあって、逃げられない。


 普段はここまで近づくことが少ない、ルシアンの透き通った瞳の中に、完全に戸惑っている自分の顔が映っていた。


 ルシアンのわずかに上がった唇の端は、微笑んでいるようにも見える。しかし、声音はそうではなかった。


 どこか怒っているような、ふてくされたような響きに、申し訳なさを感じながらもときめいてしまいそうだ。だから、つい、隠しておこうと思っていたもやもやした感情を伝えてしまう。


「ルシアン様、私も後悔しました。リーナ様の助けになりたくてお受けしたのですが、離れた場所にいらっしゃるルシアン様を見ていたら寂しくなって……っっ⁉︎」


 最後まで言う前に、ルシアンの唇が重なった。ほかにも伝えたいと思っていたことがあるのに、全てはルシアンの口の中に飲み込まれてしまう。


「エステル」


 ふと唇が離れた瞬間に、名前を呼ばれてぞくりとする。答えようと思うと、また口が塞がれる。何度も繰り返す深いキスに、頭の中が溶けそうだ。


(ルシアン様。待って、待って……!)


 どんどんと胸を叩くが、ルシアンは止まらない。それどころかおとがいに添えられていた手が後頭部に回った。逃れられなくて、エステルはどうしようもない。


 繰り返し落ちてくるキスに、どれぐらい翻弄されたことだろう。しばらくしてやっとのことで唇が離れると、エステルはもう呼吸が続かなかった。


(息が……息が……)


 はぁはぁと肩で息をしていると、ルシアンは名残惜しそうにエステルの頬を撫でた。


「これ以上はさすがにまずいな」

「……っ。で、では、これ以上の続きはないですね。よ、よかった……」


 息も絶え絶え、何とかつぶやけば、ルシアンが口を押さえているのに気がつく。


「この続き? ……っっ」


 みるみるうちにルシアンの顔が紫色になっていく。聞かせたくない本音を我慢しているのは明らかだった。


 けれど、エステルにも会話の流れから、自分が発したとんでもない言葉が原因なのだとわかってしまっている。そしてその内容もだ。


 濃厚なキスの余韻もあって、どんどん頬が熱くなっていく。残念なことに、ツッコミ役のクロードはルシアンの部屋に戻ってしまった。今ごろは主人不在のベッドでふてぶてしくぐうぐう眠っていることだろう。


 このままではエスカレートする可能性があることを察したエステルは、両手で顔を覆いながらルシアンにお願いした。


「ル、ルシアン様! 今すぐに、お部屋に戻ってください……!」

「エステルの頼みだから晩餐会で頑張ったのに、もう部屋に戻れと? しかも、隣に座ってきたのはエステルだろう?」

「そっ……それはそうですけれど!」


 これ以上甘く迫られては、ドキドキで心臓が破裂してしまいそうだ。そんなエステルの心中を慮ることなく、ルシアンはまた唇を重ねてくる。


 腕の中にエステルを閉じ込めるようにしてのしかかってくるルシアンの重みで、ソファに身体が沈む。優しいのにまるで食べられてしまうようなキスに、頭の中がぼうっとして、意識が遠くなる。


(でも、明日の朝になったらきっとルシアン様もこのことはお忘れになるのよね。それなら恥ずかしくないかも……だけど、こんなに強引なルシアン様、初めてだわ……)


 豹変ぶりに戸惑いつつ、全てを諦めてしまいたい気持ちになる。


 その甘すぎる時間はもうしばらく続いたのだった。


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