第98話 邪神ソリューズの後始末
ぼこぼこぼこぼこ
「ぷはーーーーーーっ」
危なかった。あと一歩遅かったら本当にあそこで消滅しておったわい。今の世は10cmにも満たない15体目のスペアに乗り移っていた。
本当に最後の最後の切り札。魔法に探知されない極限まで小さくした依り代だ。しかし、これの難点は作るのに通常の依り代の3倍かかることと、この姿のままでは完全体になるためには今まで以上の魂、年数がかかるってしまうので、出来ることなら使いたくはなかったのだが…
今回はしょうがない、あのような化け物が相手だったのだから。あの化け物には余では叶わぬ。邪神グリュドブ様ぐらいではないとな。
次回完全体になる頃にはあの化け物はもうこの世にいないかもしれぬが…あいつが生きておるうちになんとかギャフンと言わせたい。
よし今生は封印された邪神グリュドブ様を復活させてあやつを屠る…
「見〜つけた!」
「えっ?」
余は急に声をかけられてびっくりしてしまった。そして、声のした方向に無防備に降り向いた。
そこには…目を爛々《らんらん》と輝かせ、してやったり顔のアメシストのような濃い紫色の目をしたあの化け物が立っていた。
「おお〜居た居た。やっぱり慎重なお前は、最後の依り代は探知魔法に発見されにくい大きさで準備しておると思っていたぞ!」
「な、何でここに? っていうかどうしてここがわかったのぢゃ?」
「くくく、本当は我が見つけたスペアは15体だったのだよ。しかしその1個は具体的な場所までは分からず、何となくこの辺にあるんじゃないかなというレベルだったのだ。
だからスペアは《《14体》》だと言って安心させて、お前の他の全ての依り代を滅して追い詰めれば、最後にその場所に逃げ込むと踏んでいたのだが…みごとに嵌ってくれたな…気持ちいいぐらいにな!」
最後に褒めてやるぞと言われたが全く嬉しくない。今の余には絶望しかない。しかし命が散る前にこいつにも何とか絶望を与えてやりたい。
「…カカカ、カカカカカカ。見事だ、余の負けだ。素直に認めてやる! だが最後に貴様に言っておくことがある。余の何倍もの力を持った邪神の中の邪神である、邪神グリュドブ様の復活は近い。せいぜい今のうちにこの世の春を謳歌するがよいぞ! カカカカカ」
「邪神グリュドブ? 邪神グリュドブね、はいはいはい。」
「ふん、貴様でも知っておるか。そうだ、残念だったな。余、ソリューズは邪神の中では最弱! この後には…」
「あいつは10年前ぐらいに復活して、もう滅しておいたぞ。」
「えっ?」
「すんごい雑魚だったけど。」
「はっ?」
…………………………
長い沈黙の後、余は深い絶望の中サクッと滅せられました。
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今日は焼きそばを振る舞いました。
めちゃめちゃ大量に作らないといけないので一瞬、業務用の鉄板を買おうか迷ったのですが…
業者か! わしゃ業者か! と天のツッコミが聞こえ、買うのを思い留まりました。本当に僕はどこに向かっているのだろうか。このままでは高校を卒業したら、屋台の焼きそば売りや、お好み焼き店を経営する未来しか見えない。そしてそれもありだなと思える今日この頃だった。
まあ、素人が作る焼きそば屋台がやっていけるほど甘くはない世界だとわかっているので、すぐにその夢は絶たれましたけど。
とにかく普通のフライパンでソース焼きそば、塩焼きそばの2種類の焼きそばを大量に作った。
もちろんカミラさんは味付けの濃いソースがお気に入りだ。レインさんは五分五分。ソースの焼きそばばかり食べて飽きたら塩焼きそばを食べるみたいに交互に食べていた…無限! 無限焼きそばだ。
僕にとっては地獄だ…無限地獄! どんだけ作っても足りない…まぁ体力の限界が理由ですぐに引退してやりましたけど。
それにしても焼きそばを作っていて思う事なんだけど…こんなにソースを掛けるのに、一体ソースはどこに消えていくのか不思議だ。
めっちゃ掛けたと思っても、焼きそばを食べる時にはあれ? 何か味薄いかなと思って、さらに追いソースをかけてしまう。蒸発しちゃってる?
なんて事を考えながらも、今日の焼きそばフェスティバルも勇者様と魔王様が踊りに踊りまくって大好評のまま終幕となったのでした。
そして食後のデザートタイム中…
「あっそうだ、今日は勇者のシュークリーム5個もらうぞ! もちろんお前の奢りでだぞ!」
「何? シュークリームが大好きなこの俺に対しての横暴な要求。この俺が有名なシュークリームストと知っての狼藉か?」
「有名なシュークリームストかどうかは知らんが、理由を聞けば10個でも20個でも献上したくなるぞ!」
「いえ、カミラさんシュークリームはお一人様1日10個までですよ。」
とりあえず僕は突っ込んでおいた。
引っ越したついでに大きい冷蔵庫に買い換えたのだが…僕が作らない金・土曜日にはレトルトを食べても良いと許可したのでそれに合わせて冷蔵・冷凍の需要が高まり、とうとう業務用冷蔵庫も買ってしまったのである。
容量が増えた事により、冷凍食品やレトルト類が多く備蓄出来るようになり、それに伴ってレインさんの要望によりシュークリームも大量に保存しておく事になったのである。もちろんカミラさんのプリンも増量。
しかし冷蔵庫のキャパが広がったからといって二人に際限なくデザートを与えていいというわけにはならず、もちろん1日の個数制限は設けているのだ。
だってほっておいたら毎日僕がスーパーから箱単位で買い付ける事になりそうだし…量によってはそのうちメーカーから直接買い付ける事になんかなったらそれこそ…
業者か! お前は業者なのか! と天のツッコミが聞こえそうだ。
「わかっておる、もちろんツケでという事だ。」
「で、何で? 理由は? 魔王。」
「最近、邪教徒ソリューズを壊滅したそうだな。」
「ああ、魔国にまで噂が広まっていたのか? そうだ、俺たち勇者パーティーも参加して、やっと全組織の息の根を止めてやったぞ。まあ俺にかかれば楽勝だったがな。何? 武勇伝を聞きたいだと! わかった、あれは夜も差し迫っ…痛っ!」
カミラさんはレインさんがまだしゃべっている途中なのにおでこにチョップした。
「何が楽勝だっただ、馬鹿者が! がっつり邪神ソリューズの完全体が復活しておったぞ。」
「えっマジで? 俺達の時は腕が蘇ったくらいだったんだけど…」
「幼い少女の姿で1ヶ月ぐらい人族を殺して魂を奪い、完全体で復活していたのだ。」
「あの後、念入りに調べたつもりだったのに…。確かにここ1ヶ月くらい盗賊だの裏の奴隷商人達が壊滅または消失した事件が頻発していたが…まさか邪神ソリューズが復活していたとは…。」
「まあ、小賢しい奴だったがな。自分が死んでもスペアを媒介にして何度も復活出来るようにしていたようだ。あ、もちろん全てのスペアを叩き潰しておいたぞ。」
「本体もか?」
「もちろん、最後に絶望を味あわせて消滅させてやったからもう二度と復活する事はないと思うがな。」
「そうか、ありがとう魔王。確かに俺の不手際を尻拭いしてもらったようだな。シュークリーム3つ分の働きだ! 受け取れ!」
「しれっと値切るな。あと2個よこせ!」
「いや、だってあいつ弱かっただろう? 魔王なら瞬殺だろうに。」
「確かにあいつ、(余、ソリューズは邪神の中では最弱!)とか言っておったけど15体のスペア全部を探し出すのがめっちゃ大変だったのだぞ。だから大負けに負けて5個にしてやったのだ。だからあと3個だといっているのだぞ。」
「ちっ、しょうがねーな。有名なシュークリームスト直々にお礼を込めてあと3つやるよ、ぐおおおおお。」
…いやレインさん…仮にも勇者なんですから、たかがシュークリームで血の涙を流すほどですか?
あと全然有名じゃありませんよ、そのシュークリームストやらは。
という感じで久しぶりに和気藹々《わきあいあい》とした夜を過ごし、更けていくのであった。




