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第94話 邪神ソリューズとの対話

「クカカカカ、余をなぶるか…面白い。実に面白いぞお前!」

 そう笑いながら、自分の右足を元に戻す。ただ補うだけの簡単な作業だ。


「おおー、簡単に元に戻るのだな。さすがに力を持った者はすごいな。」


 余の復元能力を見てもそんなに驚かぬか。カカカ、今まで会った事のないタイプの人間ぢゃな…実に面白い。


「面白いな人間、興味を持ったぞ。ところでなぜ余が人間で無いと見破ったのだ。ぜひ教えてもらいたいものだな。」


「お、聞いてくれるか。まずこの場所自体が罠でな、邪《(よこしま》な力を持つ者しか入ることが出来ない場所なのだ。一般人というか…普通の力や善の力を持つ者は、特に何の変哲もない土地にしか見えん。この場所に入った時点で我が感知する事が出来るので、すぐに飛んでこれるぞ。」


「なるほどな…だから余の後ろに気配もなく現れることができたのか、やるではないか人間ごときが、カカカ。」

「まあ、それでもごくたまにだが、力が大きすぎる者が反応してしまう事があるから、さらに罠を仕掛けてある…それがその土に埋まった像だ。」


 あの像が? 何の仕掛けも施されていなかった異形な像なだけだったのだがな?


「不思議そうな顔をしているな? お前はあの時その像を見て“異形な”と言ったな? この像は我には女神の像に見えるぞ。そうだ、気づいたか? この像は持つ者によって姿を変えるのだ。自分の内面の投影としてな。」


「嘘だ! 嘘をつくな!」

 我は大きな声で否定した。


「嘘ではないぞ。本当の事だ、ふふふ。」

「お前が女神に見える訳がないだろう! お前もどう見てもこちら側であろうに!」


「そこ? 引っかかるところそこではないであろうに?」

「いや、確かに余は異形の得体のしれない像に見えた。だがお前が女神に見えるなどとは納得いかんのぢゃ! みんなには絶対言わんから正直に言え!」


「失礼な奴だなお前…そんな事はどうでもいい、んでお前は誰だ? 我は優しいからな、名乗らせてやるぞ。」

「カカカお前は面白い奴だからな、特別に余、自ら名乗ってやろう。聞けば絶対に “なっま、まさかあの…”と驚く事必須の名前だからな。」


「前フリはいいから早く言え!」

 女はせっかちなようだな。余は久しぶりに地上へと具現化出来たのだからもう少し会話を楽しみたかったのぢゃ。どうせ名前を聞いたら恐れ多すぎてこのように気安くしゃべってくれなくなってしまうからな。それはそれで寂しいものだ…


「わかった、わかった。せっかち君ぢゃなお前は。人に尋ねる前にお前の名前はなんて言うのぢゃ?」

「ああ、そうだった我も名乗っていなかったか。我の名前はカミラ・カルロッツェだ。」


「ほう、カミラ…というのか。それでは良くその耳穴をかっぽじって聞くがよい我の名は…」

 少しもったいぶって間を開けた。余が地上に出てから幾度となく告げた名を。告げられたある者は絶望に打ちひしがれ自害し、またある者は戦意を喪失して余になすがままにされて命を散らして逝った。


 あの告げられた瞬間の悲壮な顔よ。絶対に逃れられないと悟った恐怖におののく顔は何度見ても飽きないものぢゃ。



 今から余の名前を聞いてカミラの絶望に染まる顔を想像すると嬉しくて嬉しくて、無意識に笑えてくるのう。ニヤつく顔を抑えつつ名を告げる。


「余の名前はソリューズ、何百年か前にこの地を地獄の底へと陥れた邪神ソリューズとは余の事だ、どうだ驚いたか? カカカカカカ」


「なっま、まさかあの…」

 カミラは驚き声が詰まって二の句が告げないようぢゃ。くふふふ心地よいのう、その驚いた顔が。


「知らん。」

「カカカカカカ…カ?」


「誰だ? 全く聞いたこともないぞ。」

「えっ、聞いたことない?」


「邪神の事も良く知っているつもりだが、邪神ソリューズなんて邪神名鑑にも載っていないぞ、雑魚じゃないのか?」

「は? さっきお前 なっま、まさかあの… とか驚いていたんぢゃないのか?」


「ああ、あれはお前が前フリで言っていたから、つい調子に乗って…言ってる間に色々思い出してみようとしたんだけど…聞いたことないわ。すまん。」


「最近人族の間で邪教徒討伐の話題があったぢゃろう? その邪教徒たちが崇めておったのが余だ。その余がこの地上に復活したのだぞ! 何で知らんのぢゃ!」

 こいつ、何で知らんのぢゃ、人族の間ではしばらくトップニュースになっておったぢゃないか! つまり余はその話題の中心、時の人でわないか!


「いや、我は魔族だから人族の国の事なんぞ知らんし…いや、そういえば最近勇者が討伐の仕事とかなんとか言っておったな、このことか? 全然興味なかったから聞いてなかったわ。」


「この小娘が…何千年も前から存在していた余をコケにしよおって。そうか知らんのならしょうがない。今からその身を持って、余の恐怖を味わうが良い。」

 そう言うと同時に余の腕を伸ばし、女の胸を鷲掴みにしたがあっさりと振りほどかれ切り刻まれる。


 シュババババ!


 まあ、切り刻まれてもすぐに腕は再生し元に戻る。


「な、貴様…邪神のくせに、というか幼女の格好をしておるのに同性?の胸を揉みしだくとは…飛んだ変態野郎だな。いや、飛んだ変態野郎だ!」


「なぜ2回同じ事を言ったのぢゃ? 別に同性とか関係ないただ単に掴みやすい突起物があったから掴んだだけで、特に他意はないどころか全く性的な意図はないぞ。というか余には性欲などないのぢゃ。」


「性欲がないだと…我は知っているぞ! 性欲が無いと言って我に近づき、わずか5cmほどの至近距離から我のたわわに実ったナイスバディー(主に胸)を凝視しして楽しむ、正に獣のごとき所業に励む男を! だから我はそんな言葉には惑わされんぞ!」


「…それはどんな男ぢゃ。確かに至近距離からむふーむふー、むぶぶーむぶぶーなどと鼻息荒く近づかれてはお前のように嫌悪感を抱くようになってもおかしくはないが…。ふむ、その男に興味が出てきたな。ちなみにその男の名はなんというのぢゃ?」

 全く覚える気などなかったのだが、つい興味本位で聞いてしまったのぢゃ。


「うむ、その男の名はユウタ。異世界に住む男だ。彼は性に興味が無い振りをして、立場の弱い者には下ネタを振りかざし、立場の強い者にも果敢にセクハラをやり遂げる。セクハラの為に生き、セクハラの為に己の立場を悪くすることも厭わない、男。人は彼の事をこう言う…セクハラ界のセクハラ王! ユタキングと!」


「……言葉の意味は分からんが、嫌な名前ぢゃのう…。絶対会いたくはないぞ。」


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