第93話 邪神ソリューズの復活
ぼこぼこぼこぼこ
「ぷはーーーーーーっ」
やっと地中から出てこれたのぢゃ。まあ、余は呼吸をしているわけではないので地中から出た時のぷはーーーーーーっは雰囲気だけなのぢゃ。
やっぱり倒されたか…邪教徒達も。まあクズはクズなりに余の役に立ってくれたのだから多少は感謝してやっても良いけどな。
それにしても人間とやらはいつの時代になっても愚かな生き物達だ。どの時代になっても必ず“ソリューズの頭”から潰すのだな…~の頭と名が付けば組織の特別な役割を担っていると勝手に思い込むのだから…全く、いつまで経っても人間は頭が空っぽな奴らばかりぢゃ。
ハズレじゃ。実際は右腕が余の本体でした。
今まで余が復活する為に多くの魂を生贄に貯蔵してきたのだが、やっと、やっとあと少しで完全復活が出来たというのに…。
“ソリューズの右手”の幹部共が自分たちの最後を悟り、幾ばくかの期待を込めて自分の魂と信者の魂を犠牲にして、余を復活させようとしよおって。
まあ、途中で魂の流出に気づいて供給をストップしてしまった為に、あのような中途半端な状態で右腕だけ復活してしまったのぢゃが…
案の定、あっさり今生の勇者に倒されてしまったが、そのどさくさに紛れて本体の余は隠れて身を躱す事ができたわ。不幸中の幸いというところかの。
圧倒的な勇者の力量を考慮しても…まあ、完全復活などしなくても、今の余のままでも余裕で勝てそうだが…慎重にもう少し魂を補充してからこの世を地獄に落として、余の世界へと塗り替えてやるとしようかの。
さてと…ん?
「おい、おじょうちゃんどうしたんだ? こんな森の中で一人なのか?」
なんか人の良さそうなジジイが余に声をかけて来よおった。馴れ馴れしいの。
「邪魔だ!」
「な…」
ザシュ!
「がはっ…」
余の指一振りでジジイは胸に大穴を開け血を吐いて倒れた。
「ジジイはまずいから食べたくないが…背に腹は代えられん。うんぐ。今度は若い奴を仕留めるか。」
くたばったジジイの荷物を奪い、小汚い服を着る。
いつの世にも子供の姿というのは有効だ。親切な大人たちが群がってくるからの。もちろんそれ以上に悪い大人達も群がってくる。それはいつの時代でも不変ぢゃ。
ーーーーーーーーーーーー
「ぐぎゃあああああああああ」
組織の男4人は、大人が20人は入れそうな大きめの部屋で各々が血を吐いて倒れた。余以外に生きる者がいなくなった血まみれの部屋で大きくため息をついた。
「はぁあああああ、やれやれ一体いつまで余はこんな馬鹿どもを相手にしないといけないんぢゃ。」
あれから1月経つが、その間に何度、人攫いの組織や裏奴隷商の手の者達を潰してきた事か…。余の優れた可愛らしい容姿も関係していると思うが、もういい加減飽きてきたぞ。
まあその分、完全体に至るまでの魂の確保は出来たからいいのだけれども…。たまにはもっと清い穢れのない魂を食べたくなるのぢゃ。
しょうがない、あまり派手に行動をしたくはなかったがここから離れたところにある少人数の村を襲うことにするか…。全員皆殺しにしなければ、目撃者を残すと後々めんどくさい事になるからな。
それではそこまでの行程はゆっくりと歩いて行くとするか。また余の可愛らしい容姿に誘われて人攫いばかりやってくる事になると思うがな…はぁあああああ。
ーーーーーーーーーーー
歩き始めて3日目、余の可愛らしい容姿と1人で街道を歩く子供を見かねて多くの人間が声をかけてくれた。本当に親切な者も悪意を持った者も等しく食らってやったがな。
そんな者の荷物を奪い馬車で村に向かっている。しばらく街道を進むと、街道から逸れた森の中から何やら気配がする。
「なんぢゃ? この気配は…。」
何とも表現しづらいのだが…余を呼んでいる気配というのか、分かるか分からないぐらいのか細い気配がするのだ。
余は馬車をそのまま放り出して気配の感じる森の中へと入っていく。道なき道を、草木を掻き分けて段々と暗くなっていく森の奥の方へと。
いくらか進むと少し開けた広場のようなところに出た。か細い気配はその丁度中心から感じられる。余は何の疑いもなくその中心へと進む。
今思えば余は慢心していたのであろう。いつでも完全体になれる魂を経た余を倒す事の出来る者などいないという浅はかな慢心をな…。
広場の中心には何かの魔道具が埋まっていた。それを掘り起こし拾い上げる。何か偶像のような…人族が崇める神ではなく、動物や生き物の像ではない…この世のものでない像…?
「おっ、やはりその像に惹かれたか? ということは貴様はそんな形をしているが…。」
余は驚いて声のした後ろを振り返った。
そこには…背が高い、髪は赤色のセミロングで、その瞳は宝石のアメシストのような濃い紫の瞳で余を見つめる女が立っていた。
余に気配を感じさせずに背後に立つその女? 本当に女なのかも疑わしいその謎の女と対峙した余の背中に冷や汗が伝う。冷や汗など初めての体験ぢゃ。もちろんそれを表に出さずに…
「な、なんの事ですか? わ、私は偶然にここに立ち寄っただけの商人の娘ですけど。」
余はいつものように人族をかどわすような物言いに変え、見た目の容姿通りに弱弱しさを演出する。
「おお、そうだったのか…それは我の早とちりだったみたいだな。すまんすまん許せ。」
女はそう言って謝りながら近づき、余の持っていた偶像を奪い取る。
「変わった像ですね。色々な国を渡り歩いていますが、そのような異形な像は見たことがありません。一体何の像なんですか?」
不思議な気配がするその偶像の事を知っていそうな女にさりげなく聞いてみた。
「そうかぁ…君には禍々しい異形な像に見えたのか…ふふふふ。」
女は像を手に取りながら不敵に笑い、余を品定めするような目で見る。
「ところで、キミは服の袖に血が付いているがどうした? 怪我でもしているのか?」
袖? ここに来る途中に始末した連中の返り血が付いてしまっていたのか? いかん、胡麻化さなくては。
「旅の道中では盗賊に襲われることもあり、その度に旅の仲間が一人、また一人と亡くなっていき…うっ、ううう…い、今はわ、私…一人にうっ、ううう」
瞳に涙をいっぱい貯めて、けなげな幼い少女を演出する。ときおり嗚咽で言葉を言いよどむ細かい演技付きだ。邪神なのに変なところのクオリティーに拘ってしまうのが余の悪い癖だな。
「…そうだったのか。それは大変だったろうにな…でもそれは大丈夫なのか? 足からすごい血が出てるけど痛くないのか?」
えっ、足? 足から血など出ておらん…
ズバッ
あっ、と思った時には余の右足が目の前の空中を回転しながら舞っていた。状況が呑み込めず唖然とした。そして切り落とされた足が地面に着く音と同時に余の足から血のようなものが噴出した。
ブシューーーー。
「おいおい、黒い血が噴き出しておるぞ。先ほどのクサイ演技もひどかったが、今のお前の素が出てる顔もひどいものだぞ。さっきまでの可愛らしい作り物の顔が台無しだぞ、くくく。」
そう言って、女なのかも疑わしい謎の女は我の切り落とした右足を拾い握りつぶした。
グチャ




