第90話 すき焼き
みなさん、すき焼きって2種類あるって知ってました? 自分はついこの間知ったので全国共通だと思っていた料理が、地域によって食べ方が違うってすんごく不思議な感じがしまよね。
特に幼い頃からそれが当たり前だと思って食べていた家の味が、大きくなって標準じゃないんだって気づくと衝撃うけません?
友達と話していた時に違和感を感じて、言い間違えを上から目線でマウント取り気味に指摘したら、反対にこっちが標準じゃない事を知って、恥ずかしさで耳真っ赤かになっちゃう。
例えば…うちは餃子にソースをかけて食べてました。
幼い頃からずっと母親の作る餃子はソースで食べていたので全く疑問に思わなかったのですが…中学生の時に一人で小さなラーメン屋に入って、ラーメン餃子セットを注文した時に…
僕がいつものように餃子にソースを掛けようとしたら…
「お前それソースだぞ! こっちこっち醤油はこっち!」
とお店の大将にちょっとキレ気味に指摘されて戸惑いながらも醤油をかけて食べました。
僕はその時にはじめて本物の餃子を食べました。美味しかったです。
それまで母が作ってくれていた餃子は…僕が食べていた餃子は餃子じゃなかったんです。
どんな餃子だったかと言えば…ニラ多めのひき肉を餃子の皮に巻いて焼いたカッチカチの餃子だったんです。今思えばニラ団子と言っても過言ではないです。
餃子の皮をかぶったニラ団子には確かにソースが合ったんです。
…何の話だよ!
というわけで僕が今まで食べてきたすき焼きは「関東風」の ぐつぐつと牛肉を割り下で煮込んで食べるすき焼きでしたので、今回はもちろん関東風のすき焼きを作りたいと思います。
すき焼きってごちそうのイメージがありますよね。
今回は牛肉に金に糸目はつけません! なぜならこの間ダンジョン50階層主を撃破したので50万円+ダンジョンクリアボーナスで50万円もくれたのです! 合計100万円! すごい!
高校生でこんな大金を手にいれたら増長しちゃいますよ! 家買えますよ!
…すみません家は無理です。それぐらい大金だと言いたかったんです。
というわけで国産黒毛和牛400g、5,000円の高級品を4kg買っちゃいました!! わーパチパチパチパチ5万円! すごい5万円なんて…500円玉で100枚、100円玉で500枚、10円玉で5000枚ですよ! …全然たいした事がない感じするな。もっといい例えあっただろうに。
でわ早速割りしたを作っていきます。醤油、みりん、料理酒、砂糖、出汁で作った割りしたを鍋で煮ていきます。ちなみにこの割りしたバケツで用意しております。
業者か!
ひと煮立ちしたところで野菜と肉を入れて煮ていきますよ。
もう二人も席についてスタンバっています。今か今かとスタンバっています。ちなみお肉を鍋に入れる時にはラウンドガール張りに二人の目の前を肉を掲げて一覧させた後に、優し〜く着水させて割りしたに潜らせます。優し〜く…
「早よ入れ〜い! じらさんでええ! いらいらする!」
「お、俺もが、我慢できんぞ! このあま〜い匂いが俺をダメにする!」
二人の血走った目が怖い。もうラウンドガール張りはやめておこう…ラウンドボーイ的な前張りだったらまだいけるか?
「早よ煮れ〜い! もう待てん我が直接魔力を注ぎ込んで一気に煮たす!」
「待て、魔王魔力は使えないから、ここは俺の必殺技の摩擦熱により一気に焼いてやる!」
目の前でグツグツと肉と野菜が踊り出すのを我慢できず、手を出そうとした二人を鍋奉行が正義である僕がたしなめたので、おあずけ中の早く解放を待ち望む犬のような悲しい眼差しを僕に向ける二人…
いや、そんな目で見られても、全ては自然の法則に従っていますので…僕にはお肉にちゃんと美味しい出汁が染み込むまで待つ事しかできませんよ…と言う間に煮上がりました。
一斉に鍋に箸を差し入れ、目の前で育て上げた国産和牛をすくい上げてまずはそのままいただきました。
「「「うまーーーーーーー」」」
3人同時に叫び合う!
やっぱり割り下の野菜と肉の旨味がだしに溶け出したまろやかさが最高だ! もちろん肉もいい肉だから旨いに決まってはいるが…これは安い肉でも十分に美味しくいただける! そう確信した出来栄えだ。
「肉を薄切りにして食べるという発想がすばらしいぞ! 今までは分厚ければ分厚いほど肉の旨みが味わえるという風潮だったのだが…目から鱗だ!」
カレンさんは異世界ででっかい肉にかぶりついているイメージしかないもんな。
「それに、肉を煮るというのもな。もちろん異世界にも煮込み料理はあるのだが、この肉は煮ても柔らかいままでおいしいぞ!」
レインさんも肉は分厚い派だったみたいなので、この薄い肉なら年をとっても食べられるなと老後の事を考えていた。
鍋の野菜、肉をひととおり堪能した後は、別の鍋に用意していたすき焼き第2弾をコンロの上にのせ煮出し開始!
次からは、といた玉子を別皿に用意して、肉や野菜にからめて食べてもらう。
「ずこーーーーっ、これも味がマイルドになってうまい!」
「天才! この組み合わせ考えたやつ天才だぞ! 魔王賞贈呈!」
みんな玉子に絡めてずぞーずぞーと啜りながら食べるので、辺り一面にツユが飛び散りまくって汚いがそれどころではない。
まあ後できれいに拭けばいいけど…僕しか拭かんけどね。
というわけですでに鍋は最後の6杯目です。僕は2杯目ですでに過食気味でダウンして、二人に給仕する召使のようなポジションで頑張らさせてもらってます。
まあ、達成感もあるので二人に尽くすのは嫌ではなかったのだが…カミラさんに「ありがとう」とかレインさんに「今日の料理もうまかったぞ」なんて言われて喜んでいる自分が嫌というか…
「は、ありがたき幸せ。魔王様や勇者様にそこまで褒めていただけるとは…三ツ俣家末代までの誉れでございます。」
とか言って身も心もかしづきそうになる自分が嫌だわ。また二人は普段からそういうポジションにいる人達だからそれが当たり前なんだよな〜、嫌味がないというか立ち振る舞いが自然。
こいうい時に僕は少し寂しい気持ちになる。この二人とは身分というか、立場が違うという現実を見せられて…本当ならこんなに気安く話しかけられない存在なのだろうなぁと。
そんな僕のちょっと落ち込んだ姿を見た二人が…
「どうしたユウタ? どうせまたくだらん事でも考えているのだろう? ふん、何を考えておるかは知らんが、考えても答えのでない事を思い悩む事ほど無駄な事はないぞ。」
カミラさんはそう言って僕の手を取った。
「そうだぞ、悩みすぎるのがユウタの悪い癖だ。いつのものようにひょうひょうと魔王に下ネタをふっかけるユウタが一番輝いているぞ!」
レインさんも僕の手を取って、おちゃらけた顔を見せた。
「…二人ともありがとう。こんな主人思いの性奴隷が二人もいて心強いよ。これからも僕に誠心誠意…いや誠心性技尽くしてくれよ。」
「「誰が性奴隷だ!」」
二人とも突っ込んでくれた。本当は手を伝わってくる二人の温もりが嬉しくて泣きたくなったけど、ワザとおちゃらけた事を言って我慢した。
だって恥ずかしいだろう。そう何度も何度も二人の前で泣くのは。まあ、薄っすら泣いていたから二人にはバレバレだったかもしれないけど…
いつまでも…このままでいれたら嬉しいな。




