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第89話 最低最悪の日

 今日は最低最悪の日だ。


 昨日から予兆はあった。


 せっかく洗濯して乾いたお気に入りの服の中に蜂が紛れ込んでいたのだ。たたんでいた僕はパニックになって部屋中を蜂に刺されまいと逃げまわった。


 たまたま部屋で寛いでいたレインさんが居たお陰で、難を逃れることができたのだが…レインさんはその辺にあった鉛筆で一閃…ってカッコイイ物じゃなくて鉛筆を横にふいって軽く振っただけでポトッて…


 えっどうやったの? 近くで見ていた僕でも分からなかったよ。すごくね?


 あまりのすごさに気が動転した僕は、レインさんに僕の服の上から乳首を当てるゲーム…いわゆる乳首当てゲームを自ら提案した。今思うとなぜ気が動転して乳首当てゲームを提案したのか謎が謎を呼ぶ展開に…。


 見事的中! 二つとも一発で中心を鉛筆で突き刺した。


 嫉妬…僕のお腹を駆け巡る激情の感情…それは嫉妬!


 反対に僕がレインさんの乳首に鉛筆を突き刺す。2回とも不正解。いや、チョイっと待て、本当は僕は成功していたのにレインさんが嫉妬して不正解にしたんだ! そうに違いない。


 レインさんに服を脱いでもらい確認したが…不正解でした。


 先の尖った鉛筆で相手の胸を突き刺し、当たったのだの当たってないだのをやり取りを、これまた部屋で寛いでいるカミラさんにじっと見られていた。


 ドアの隙間から覗き見ていたカミラさんは僕たちと目が合って、そっとドアを閉じた…そっ閉じ…。


 それからカミラさんにドア越しに声を掛けたのだが返事はない。


 それ以降彼女の姿を見かける事はなかった…夕食時以外は…って毎日みてるやん!


 例えが長くなったが、そんな事はどうでもいいんだ! 何が“今日は最低最悪の日だ”と言うと…


 自転車がパンクした。


 くっそ最悪だ〜。朝自転車で学校まで行く途中に道にキラリと光る物があった。あっ、とは思ったが時すでに遅し、そのまま避けることも出来ずに光る物の上を自転車で通り越した、直後…


ガガガガガと鈍い音が後ろから振動と共に響いたので止めてみると…


 釘がぶっ刺さっている〜。


 いやこれ釘じゃないな…ちょっと太めの鉄の棒12cmぐらいあるボールペンの芯ぐらいの太さの鉄の棒が後輪に刺さっていた。


 しかも普通タイヤに刺さるって言ったら垂直にズボッて感じなのに、真横にブスッと刺さってタイヤを貫通しているの。つまり穴が2箇所も空いてる…


 僕は泣いて自転車を学校まで押して歩いたね。学校までまだ距離がある位置だったので、僕を強化するためだけの単なる重い荷物として押して歩く自分に泣いたね。走らない自転車は邪魔以外の何物でもないなとこの時初めて学んだよ。


 まだ朝が早いから自転車屋さんがやっていないので学校まで押していった。ぎりぎり遅刻はしなかったんだけど、すでに疲労痕倍モードで授業中も全然勉強に身が入らなかった…何しに行ったんだよって感じだ。


 まあ、その出来事を面白おかしく友人達には話のネタとして披露できたのだが…帰りにまた押して帰らなければいけないことを思い憂鬱になる。


 コウジとケンタを誘ってはみたのだが、今日は珍しく二人とも用事があって帰らなくてはいけないらしい。しょうがないな…じゃあ今日は久しぶりに彼女と二人っきりで帰るとするか!





 居ないけどね。




「久しぶりだね、今日さ〜朝に自転車パンクしちゃってまいっちゃったよ。今から押して自転車屋さんに寄って修理してもらわないといけないんだけど…さ、その帰り僕の部屋によっていかない? ちょうどおいしいケーキがあって、前から見たがってた映画のDVDもあるしさ、昨日新しいベッドも届いたから…いやいやいや絶対エッチなことなんか考えていないよ! ただ、新しく買ったベッドが大きいからゆったり座って観れるかなって思っていっただけで…そんな事全然、全く、これっぽっちも…。ごめん、ほんのちょとだけ…本当~~に、ほんのちょとだけ思っていました。てへっ!」




 居ないけどね。


 居ないのにどんだけ彼女と付き合ってる風セリフが続くんだよ! とツッコむなかれ!


 いいじゃないか! きっとこの世界ではない、違う世界線ではきっと彼女がいる世界線や、もててもてて困っている世界線があるに違いないんだぞ!



“そしてお前一人だけの世界線もな”


……………………

……………………

……………………

……………………


急に辺りが暗闇に包まれた。


また暗闇の世界だ。“クロちゃん”の世界。


久しぶりの登場ですっかり忘れていたよ。


“忘れてた? くはははは笑わせるぜ、本当はいつ現れるかビクビクしていた臆病野郎のクセに”


……………………


“図星だろう?”


…何が目的なんだよ。ただ単に僕を笑いに来ただけなのか?


“俺の目的は最初っから言ってるだろう? お前の目を覚まさせる事だ!”


覚まさせる? もっと具体的に言ったらどうなんだよ! そんな毎回抽象的な事ばっかり言って、僕自ら気づかる? そんな事になんの意味があるっていうのうさ、クロちゃんがズバっと言ってくれれば1回で終わる事じゃないかよ! なぁ?


“……………………”


なんで黙るんだよ。


“……………………”


言えよ、言えばいいだろう!


“……………………”


お前がいる世界はお前が心の中で望んでいる夢の世界なんだって。


本当のお前は薄暗い殺風景な病院で、命を繋ぎ止める機械に繋がって生きながらえているんだってな! 


あれが僕の本当の姿なんだろう?


“……………………”


何でだよ! 僕がこの世界を望んで何が悪いって言うんだよ!


そりゃあ最初は勇者だ魔王だなんて滑稽だ! まるで小説の世界だ! 非現実的な世迷言よまよいごとだ! そんな現実ありえない! って思ってたよ。でも、わかっているんだよ僕にだって!


だけど今の僕にはそれが全てなんだ…僕の生きる全て…


高校生の僕がコウジ、タケシと過ごす青春、異世界から勇者と魔王が来て僕の作る料理を美味しい美味しいと言って所望される嬉しさ。ある力によってmissionをさせられる事により、僕が憧れの異世界で活躍できる楽しさ。そして二人と一緒に仲間として冒険できる喜び…


今の僕にはカミラさんやレインさんの存在が…


僕の生きる全てなんだ!




それを…それを僕から取り上げないで…


僕から奪わないでくれ!


……………………

……………………


何で肝心な事は言ってくれないんだ。何も言ってくれないんだよ。


もう僕にはわからないよ。何が本当で何が偽物かなんて。


もうぼくにはわからない…

もうぼくには…

もう…

……

……

……

“君がこの世界に気づく…目が覚めるまであと少しの辛抱さ”


クロちゃんの言葉に僕は記憶を止める事なく意識を失った。







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