第80話 階層主の最後
「くらえええええええ! 宇治抹茶エレクトリカルぱれえどおおおおお! ずどおおおん。やった! 僕のかんがえたさいきょうの必殺技でとうとうゴブリンジェネラルを倒したぞおおおおお!」
……という夢を見たんです。
「やばっ、ユウタおかしくなってる。」
「この根性無しが! まだ10時間しか経っていないぞ、ユウタ!」
そうなのだ、あれからずっと戦い続けているのだ。やっと…やっと歩兵のゴブリンとゴブリンメイジ、ゴブリンキング4匹のうち2匹まで倒して残るは3匹、ゴブリンキング2匹とゴブリンジェネラルだけになったのである。
しかし、そこに至るまでがまさに苦行…延々とヒットアンドアウェイを繰り返して、倒してセーフゾーンへ、倒してセーフゾーンへを繰り返して身も心も疲弊しまくっているんだ。それなのにこの仕打ち…ひどい!
「何にもしていない二人は…カミラとレインはなんでそんなにピンピンしているんだよ。」
未だに呼び捨て継続中の僕は疲れのあまり不平をぶちまけた。
「いや、10時間続けて戦闘なんてザラだし。あと、何もしてなくはないぞ。後半は俺と魔王がだいぶサポートしてるからな。」
「そうだぞ、まああえて手は出しておらんが…残り3匹か…あと10時間ぐらいでいけるか?」
えええええまだ半ばじゃん。進捗率50%って事? あかん疲れてきたご飯食べて寝ようかな。ちょっと休んだほうが効率が良くなるっていうしな。
「すみません、ちょっと寝てもいいですか? 20分…いや10分で起こしてください。ではムシャムシャムシャ。」
急いでレインさんからもらった硬い干し肉をお腹に入れて、仰向けに寝て目を瞑る。こんな目の前に階層主がいるっていうのに堂々と寝るとは僕の神経もずいぶんずぶと…ぐー。
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「おい、ユウタ起きろ。15分経ったぞ。」
「ん、んんん。…あれ本当に僕寝てました? 目をつぶって目を開いただけの感覚しかないんですけど…。僕を騙してませんよね?」
「いや、本当に15分経ったぞ。っていうかこんなところで寝るとは…俺達に安心しすぎじゃね?」
いや、むしろ魔王と勇者のそば以外にどこに安心する場所があるっていうんですか? ここは異世界一安全な場所でしょう。
「ん、まあそこまでユウタに信頼されていると思えば、嬉しいがな。なぁ勇者?」
「まあ、信頼されて嬉しいけどな。じゃあ気持ちよく起きたところでいけるか? ユウタ。」
僕は立ち上がって肩をぐるぐる回して確認する。ちょっと寝ただけで体の疲れも精神的な疲れもスッキリしたような感じがする。
「はい、大丈夫です。レイン5秒後にスイッチしてください。」
僕は身体強化魔法をかけて、剣に魔力を纏わせる。さっきまでの戦いで何度も試してはいたけれどもうまくいかなかった。でも今回は何か出来そうだ。
レインさんが5秒経ったので、前を開けてくれた。
今までレインさんとカミラさんが押し止めておいてくれたゴブリンキング2匹とゴブリンジェネラルが目の前に迫る。何か今は精神的にも落ち着いている、全然恐怖を感じないな…
「切りきざめ! スラッシュ!」
僕は剣を横に一閃。
素早く振り切ると同時に、剣に纏わせた魔力に風属性をイメージして鋭く、遠く、速く飛ばす。
振り切った剣にすかさず火属性をイメージして初めの一閃の勢いのまま回転して第2波を繰り出す。そしてもう一発そのままの回転で正面にきた時に風魔法の一閃。計3回転3発撃ち放つ。
ズザザザザザザ
3回転で勢い余って倒れてしまったがすぐに起き上がり、ゴブリンジェネラルに向けて走りだす。顔を押さえて叫ぶゴブリンに接近して無我夢中で剣を振り下ろす。
もちろん切れ味するどいイメージを纏わせたままイメージを明確に持って頭に狙いを定めて振り下ろす。
するとスパッと自分が思っていた以上に抵抗がなかった…するりと入った感触。料理の食材に例えると…硬めのこんにゃく?
ごめん、本当なら豆腐だとか柔らかい物のイメージで言いたかったけど、そこまでは柔らかくはなかった。こんにゃくでも十分柔らかいけれども…。
「ぐギャギャギャアアアアアア」
ゴブリンジェネラルは絶叫してのたうち回り崩れ落ちた。
はっ、他のゴブリンキングは? 気を許さずに周りを警戒するともうすでにゴブリンキングは上下真っ二つに胴体が切り裂かれ息絶えていた。
どうやらゴブリンキングは最初に飛ばした風魔法スラッシュで2匹共に胴体が引き裂かれていたらしい。
ゴブリンジェネラルは最初の風魔法を避けたはいいが、避けた先に火魔法が顔に当たってしまい炎上したらしい。そこに3波の風魔法スラッシュがふとももに深く食い込んで動けなくなっていたところに、僕の最後の攻撃が止めを刺したとの事。(レインさん談)
50階層主であるゴブリンジェネラルを仕留める事だけに夢中だったから、ゴブリンキングは後回しにしていたんだけど、全然視界にはいってなかったけど…よかった。
やっと思い通りに繰り出せた魔法をまとった斬撃に達成感が湧き上がる。
「レイン、カミラ見たか? 俺の必殺技…、必殺…ん〜何かカッコイイ名前ない?」
「や、名前は別にいいだろう。わざわざ今つけなくても。」
「そうだぞ、あんな初歩のスラッシュが出来たくらいで名前つけたら恥ずかしいぞ、ぷぷ」
そんなにはっきり言うなよ魔王…。
そうだった…ゴブリンジェネラル倒したばっかりでテンション上がりまくってた…ついでに10時間以上戦っていたから変なテンションになってたわ。
ここでぼくのかんがえたさいきょうのわざ「マウンテンスプラーーーシュスラッシュ!」とか付けてたら絶対今日の夜、ベッドで悶えるわ〜。今のこのテンションだから勢いで言えるけど…授業中に思い出したら恥ずかしくて教室を走って抜け出して廊下で転がっちゃうわ〜。
と思い直し、
「さ、華麗に倒した僕をもっと褒め称えてもいいんですよ! レイン、カミラ!」
技名を付けてもらおうとした事は隠蔽した。そんな僕の空気を察した二人は僕を褒めてくれた。
「ユウタ、頑張ったな。なかなかよかったぞ、最後のスラッシュは。初めから3連撃を繰り出すところはセンスがあるぞ。まあ無防備になってしまうから、サポートありきだがな。」
「ユウタは頑張った。ご褒美にショートケーキを一緒に食べようではないか? な? 我は10個はいけるぞ? な? 手伝ってやっただろう?」
空気は読んでくれたけどカツアゲは受けました。
は、カツアゲって(恐喝して金銭などを巻き上げることをいう隠語)。らしい。つまりトンカツ大好きカミラさんは本当に僕を脅してトンカツを要求したら…
カツアゲだ! 二つの意味でカツアゲだ! すごい! 今気がついたよ。
…まあものすんごくどうでもいいことなんだけど、どうしても知らせたくなったので。
よし、確かに今日はお祝いだ! ショートケーキを買ってお祝いしよう! ホールで買おうホールで。…最近いちごが値上がりしてくっそ高いので、ホールは止めて1人1個ずつになりました。もちろん二人からはブーイングを受けましたがスルーしました。
ちなみにゴブリンジェネラルを倒したら宝箱がポップしたから喜びいさんで開けたよ。
…………………また睾丸だったよ。ゴブリンジェネラルの睾丸。
レインさんにまたあげようとしたらゴブリンジェネラルの睾丸は精力剤にもならないし、何の薬にもならないゴミだよと言われました。
嫌がらせか!
最後の最後でゴブリンジェネラルが最後っ屁していきやがったよ。
こんな物はいらないので、僕は地面に思いっきり叩きつけてやりました。
スーパーボール!!
5階建てビルぐらいまで跳ねました。
それを見たレインさんとカミラさんが欲しがり各々異世界へと持ち帰りました。二人は国で流行らせようとしているようです。
流行ればいいな~




