第77話 エビフライとタルタルソース
朝、嫌な汗をかいて起きた。しばらくベッドの上で体をもたげていた。重だるい感じだ。何かものすごい嫌な夢だけを見ていたな〜っていうのは覚えてたりするんだけど…どんな嫌な夢だったかは全く思い出せ無い…頑張ってなんとか断片だけでも思い出そうとしたが思い出せ無い。
思い出せ無い事が苦しくなって、僕は考える事を止めた。
学校も平穏無事に終わって、今日は待ち伏せしている女子もいないようだ。何か腑に落ちない気持ちがあるが、そんな事より今日のご飯だ。
今日のご飯はズバリ! 「エビフリャー」だ!
エビフライって名古屋のイメージが付きまとっているけど、関係ないみたい。発祥の地とか名物だとか、一番消費量が多いとかなとも思ったのだが関係なし!
昔タモリさんが名古屋人を茶化す言い方で“えびふりゃあ”と言ったことでイメージが定着してしまったようです。まあ、もともと愛知県人は海老が大好きだったようなのでそういうイメージも重なったとの事。
僕もエビフライ大好きですけど…そんなに食べる機会はないですよね? あと海老が地味に高いのでそんなに食べられ無いというのもある。家で揚げるとあんな真っすぐに揚げれないし…
という事で最近金に糸目をつけなくなった、半成金の僕はネットで最初から衣をつけてあるエビフライ専用冷凍食品を購入しました。しかもジャンボ! 直径約18cmの海老が10本入りで2000円ぐらい。
え〜っとだいたい1人20本として合計43本、僕は3本ぐらいで調度いいからね。でもおかずがエビフライだけだともっと食べるかもしれないので…80本買っておくか…合わせて16000円。
業者か!
よしと、3日前には全部届いていたエビを業務用の冷凍庫から取り出し、順番に揚げていく。ここからは無心だ! 無心のマシーンとして必要最低限の動きしかしないのだ。
…なんかロボットダンスみたいに小刻みな動きが気持ち悪いな…自分で動いてても気持ち悪いもんな。動画を投稿したらバズりそうだ…悪い意味で。
まあなんとか全部揚げましたわ、80本。うおっ2時間ぐらい揚げてたやん…マシーンとして揚げ続けてたから全く時間の感覚が無かったわ。
なんかマシーンていう響きが格好いいけど、俺は揚げマシーンだから全然格好よくない…日本語で揚げ機械…こんなに揚げるなら業務用フライヤー買おうかな。ってどんどん業務用が増えていってしまう俺の部屋…
業者か!
という事で今から本日の主役を作りたいと思います。えっエビフライがメインじゃないの?と思ったそこのあなた! ほら、あれがあるでしょう? エビフライにかかせないあれが!
そう! タルタルソース〜〜〜(ドラえもん風)
僕的には正直こっちがメインです。これはもう揚げ物専用の万能調味料といっても過言ではないですよ。揚げ物界の絶対王者、往年のジャンボ尾崎と言っても過言ではないです。つまりタルタルソース=ジャンボ尾崎って事なんですよ…知らんけど。
すみませんテンションが上がりすぎて自分でも訳が分からなくなってきました。
とにかくタルタルソースを大量に作ります。僕が一番愛してやまない野菜の玉ねぎを親の仇のように切りまくりますよ。気が済んだら大量に茹でておいたゆで卵をつぶして投入。
そしてタルタルソースの根源であるマヨネーズも惜しみなく放り出します。そこに砂糖ひとつまみと、マジックソルト! まさにマジック! 塩とパセリでもいいですけどマジックソルトもうま過ぎ調味料の1つですよね。
全部入れたら最後に美味しくなる呪文「まじぇまじぇ」と言いながら混ぜます。
辛抱たまらず、ずっと凝視しを続けていた二人を力仕事に投入します。カミラさんが爛々とした目でタルタルソースを「まじぇまじぇ、まじぇまじぇ」と言いながら混ぜている姿がめちゃ愛おしいわ〜。
でも「実はまじぇまじぇ、まじぇまじぇという呪文は入りません、関係ないです。」って言ったらまたアイアインクローで頭がひょうたんのように凹まされてしまうので、スマホに動画で撮って永久保存版にしておくだけにしておいた。
ちなみにレインさんの「まじぇまじぇ、まじぇまじぇ」気持ち悪かったので、心の中で呟いてくださいとお願いして無言で作業してもらいました。
こうして2時間もかけて揚げた“エビフライ80本”と、異世界人により日本の食材が大量に生み出された“うまうまタルタルソース”とが対峙して熱い抱擁を交わす事になったのであった。
それはそれは熱い抱擁だったのだ。2つが1つに溶け合いまるで初めから1つだったかのような調和。そんなアツアツ振りを見せられては僕たちも我慢ができません。
喰らい尽くすのみです!
お互いの本能に従って、脳が欲するままに、是が非でも自分の腹に詰め込めるだけ詰め込もうと欲望をむき出しにして喰らいつきまくったのです。
まあ、僕は3本でお腹ぱんぱんですけどね。あと、いくらタルタルソースが揚げ物を食べやすくしてくれるとはいえ、マヨネーズも油なのでやっぱり油っぽく感じてすぐに満腹になってしまった。
それでも十分美味しく食べられたので今回のエビフライは大成功でした。
って、魔王と勇者はまだ序盤でした。まだまだ激闘を繰り広げています。
「これプリップリ〜すんごい! すんごい美味しい! この弾力はあれだなあれ、えーと例えるなら…」
レインさんが必死に何かに例えてくれようとするのだが、全く思い浮かばないみたいだ。そんな例えを考えている暇があったらエビフライをもっと味わいたいといった感じで。
「我は…我はこのタルタルソースが最高なのだ! これはトンカツにも合うぞ! 最強の組み合わせになるぞユウタ! トンカツタルタルソースの誕生だ! 略して“トンタル”だ!」
カミラさんは濃い味付け大好き人間なので子供のようなはしゃぎっぷりだ。そういえばエビフライとか子供が好きなイメージがあるな。
エビフライをむさぼり食う二人を眺めて僕は…子供がエビフライを好きなんじゃなくて、エビフライを食べるから童心に戻るのかな、ふふふなんてポエミーな事を考えていたら…
残り少なくなってきたエビフライの覇権を求めて争いが激化してきた。食べながらもタルタルソースをできるだけ多く確保しようと器用に反対の手で取り寄せるカミラさんと、エビフライの確保とカミラさんが食べ残したエビフライの尻尾をなんとか手に入れようとするレインさんとの間の攻防が…
おい、どこが童心だ! ものすんごい大人同士の醜い争いやんけ。
そんな争いから身を遠ざけて、早々に食べ終わった自分はソファーで優雅に食後のコーヒーを嗜むのであった。




