第75話 魔王-1グランプリを成功させるために
「ま、魔王様、その魔王《M》-1グランプリというのは…いったい?」
「うむ、これから詳細を話す、フィア皆に資料を。」
フィアに指示をしてあらかじめ用意していた資料を魔王9将軍に渡していく。その内容を読み進めていくと困惑する者と驚く者とに分かれた。
「そこに書かれている通りだが、我からも説明をする。まず各々が国に帰った後にこの大会を推進するために迅速に対応してもらいたい。やり方は任せる。それに伴う費用は全て我が負担する事を約束しよう。」
「なっ全部ですか?」
「そうだ、それに掛かる費用全てだ。部署を作り民に周知させたりやる事は多岐に渡って大変だろうが、人件費や材料費など些細な費用も全て我が負担する。後で一括で請求するもよし、その都度請求しても良い。お金に余裕がないところもあるだろうでな。」
皆一様に驚いている。頭の中で計算をしているであろう。
「わかっていると思うが…我も多少の利益ならば許容もするが、度を過ぎた請求には…それ相応の報いを受けさせるつもりなので、それなりの覚悟を持って請求するように。」
皆がごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。いや、そんなに厳しくするつもりはないからな。多少はいいんだぞ多少は。
「そ、それで今回はどの部門で大会を開くのですかな?」
そうなのだ。この報告書にはとりあえず今実現できそうな項目だけ抜粋して書いてある。今回は市民から広く参加者を募集したいと考えているから、教育の差だとかお金の有無で差がつかない様な項目で募集したいと思うのだ。
そうなると…。
「そうだな、本来ならば絵だったり、歌だったり、踊りだったり、物語だったり一芸に特化した大会を開きたいところなのだが、我のための初めて開催する大会という事で募集する内容は…」
我はわざと一呼吸をおいて告げる。
「我を楽しませる事のみだ!」
ニヤリと笑う。自分で言っていて笑えるわ。散々色々考えた挙句、条件が我を楽しませることだけなんて…傲慢すぎないか? とユウタにも問いたのだが、ユウタは
「えっ傲慢なのがいいんじゃないですか。あえて絞らずに色々な才能をいっぺんに集める贅沢、これぞ魔王にしかできない傲慢極まりない贅沢じゃないですか。
それに、まだまだ浸透していない初めての大会だからこその、魔王を楽しませるというシンプルな項目でいいんですよ。それに実際カミラさんは傲慢で…いたたたたアイアンクローは止めてください! 爪が爪が食い込んで痛いんですから〜。」
ふふ確かにそうだな。まだまだ周知の段階で色々と集めても集まりにくいかもしれないからな。とりあえず一回目は我のための大会というシンプルな案でいいだろう。
「楽しませる…とは具体的に…抽象的すぎませんかな?」
「なに、魔王である我を楽しませようと思うから難しいと感じるかもしれんが、自分の身近な人を楽しませると思う程度の気持ちでいいのだよ。とにかく市民が参加したいと思うような大会にさえなればな。
もちろん身分の差などはないから、国王たるお前らでも参加していいだぞ、ふふふ。我を楽しませてくれよ。」
お互いに顔を見合わせて苦笑いしておる。まあ、実際には貴族などはよっぽどでない限り参加はしないだろうけどな。
「今回の大会の優勝賞金等は記載してある通りだ。市民にとっては無難な金額になっていると思う。ちなみに予選時にも順位をつけて本線よりは少ないが賞金を支払う予定だ。参加賞もな。」
「おお〜予選時にも賞金を出すとは太っ腹ですな魔王様、そして参加賞とは?」
優勝賞金は悩んだのだ。フィアと相談して決めたのだが最初我が決めた金額だと国を丸ごと1年税収がなくても維持できるほどの金額だったりしたのでめちゃくちゃ怒られた。
優勝賞金を巡って戦争が起きますよとたしなめられたのだ。だから優勝賞金は市民の給料1年分ぐらいの額にした。もちろんその他にも賞を用意しておるしな。予選時にも給料3ヶ月分くらいの額を出す予定だ。
参加賞としては子供にはお菓子をもれなく全員に配る。一般人には食事1回分のお金とかな。そうやって参加人数を増やす作戦なのだ。
あと、もちろんだが本選までの交通費宿泊代も全て我持ちだ。
「魔王9将軍の国でそれぞれ予選会をして、優勝者から3〜5組を予選通過者として本選に選出してもらい、本戦は我が城のお膝元であるこの都市に新たに建設予定である劇場でお披露目したいと思う。」
このために新たに劇場を建設して、本選はお客をいれて観戦してもらおうと思っている。本当は審査員である我だけに見せてくれればよいのだが、そんな状況だと一般市民である者たちは萎縮して立ち竦む者たちが続出しまうだろうとの事。
そして尚且つ楽しませるどころか、子供なんかオシッコ漏らしたり粗相しまくってしまう地獄絵図しか思い浮かばないとフィア言われて、苦肉の策で劇場を作り、そこの特別魔王室で出演者にプレッシャーをかけない様に見る予定なのだ。
…主催者なのに。
新たに作る劇場は他にも使い道がありそうだしな。興行などに貸し出して収入を得てもいいしな。国も潤うだろう。
何か…今回は説明ばかりで文字が多いな…。よし、少し端折ろう!
というわけで、その他の細々《こまごま》した部分の説明を終え、色々と魔王9将軍の質問に答えたりして(フィアが)、一通りこの魔王《M》-1グランプリの事については話し終えたと思う。
最後に一言言っておかなければいけない事以外にはな…
「皆、長い間我の話に付き合ってもらってありがたく思う。」
皆頭を一斉に下げる。
「この大会を成功させるために一言だけ言っておかなければいかん事がある。」
皆の顔を見渡して告げる。
「審査において不正を働いた者は我が直々に殺す。」
少し言葉に殺気を込めて告げる。
「当たり前だ。我の顔を潰す事になるわけだからな。」
誰も声を発しようとはしない。
「もともと今回のこの大会は市井の者から才能のある者たちを発掘するという目的があるのだ、そのため予選を行う側の者たち…つまり管理者側が応募してきた民をないがしろにしたり、順位の捏造や懇意にしている者を選出、賄賂などを受け取っての選出などの不正は我が直々に殺す。
そして参加者、選出された者に対する脅迫、辞退の強要、圧力をかける者などや、妨害工作などをして他人を貶めようとする者たちも殺す。」
一部怒気をはらむ言葉で伝える。
「これを全ての国で周知、徹底させろ。もちろん貴族などのごり押しも許さんぞ。いくら位が高くても必ず我の名の元に処罰を与える、いいな。この言葉を胸に刻めよ。」
皆頭を一斉に下げる。一部はちょっとぷるぷる震えてる。えっお前不正するつもりだったの? すんなよ、絶対すんなよ!
「あと、誤解のないように言っておきたいのだが…管理者側に故意でない手落ちがあっても、もちろん罰したりはしない。まあ、不正などは調べればわかる事なのでいきなり有無を言わさずに殺す事はないと断言しておこう。
それと予選を勝ち上がって国の代表として選ばれた者が本選で賞を獲る事が出来なくても決して責任を負わす事のない様に言い伝えよ。」
はあああああと止めていた息を一斉に吐く音が聞こえた。そんなに? みんなそんなにプレッシャーだった? でもそれぐらい圧力かけないと絶対に悪用する奴がいるでしょ?
「我はこの大会…いや、祭りを楽しみたいだけなのだ。お前たちもそうだろう? わくわくしないか? ここから我が国に新しい文化花開くことになるかもしれんのだぞ! さあ、皆で思い切り楽しもうではないか!」
おおおおおおおおおおおと歓声があがり。長かった会議が終わりを告げるのであった。
その日各々が国に持ち帰った資料を精査し、大会についての段取りを終え、市民に魔王《M》-1グランプリの事が一斉に知らされると、驚きと歓迎を持って迎えられる事になるのだった。




