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第73話 魔王-1グランプリ始めます

「魔王様会議場の方にお越しください。」

「うむ。」


 我はカミラ・カルロッツェ。アルメロ国第23代魔王だ。


 この間、半年に1回開催される魔王11将軍一同を会しての会議が行われたばかりだというのにまた会議を行う必然性が生じたので招集した。今回からは2将軍減らしているので魔王9将軍になっている。


 指定時間通りに皆が揃ったようなので我が最後に会議場へと赴く。


 長い無機質な廊下に我の靴音がカツーンカツーンと響く音がなんとも偉そうだな…っていつも思う我。まあ実際に一番偉いし強いわけなんだけれども…。


 重厚な扉を開け会議場に入ると魔王9将軍が一斉に立ち上がり頭を下げる。

「皆ご苦労、頭を上げ着席するが良いぞ。」


 いつも通りの挨拶を済ませ我も椅子に座る。

「この間会ったばかりだが、皆息災そうでなによりだ。今日は急な呼び出しにも関わらず全員が集まってくれて嬉しいぞ。」

 にこやかな笑顔で、一言ねぎらいの言葉をかける。


「早速ですが、今日はいかがなさいました? 魔王様自ら、我らを呼び出す事なんて今までなかった事ですから、何か火急の用事でもできたのですかな?」

 皆の代表として魔将3位ゾルダが険しい顔で聞いてきた。険しい顔は別に怒っているわけではなく通常の顔なのだがやはり長年生きてきただけあって威厳があるのう…まあ、我のほうが年上なんだがな。


 我はちらっと、我の右腕である裏魔王、魔将1位であるフィアを見た。頷いている。もちろん今回魔将軍達を招集して今から提案する案については事前にフィアに相談してGOサインをもらっている。この間みたいに事後報告するとめっちゃ怒られるからな…魔王なのに。


「我が魔王になって何十年と経ったか。昔のように国同士の大きな争いなどなく最近は平和な世になってきた。もちろん今でも帝国などは領土拡大政策を摂っておるようだが…まあ我にとっては些細な事だ。」

 我の言葉に皆、真面目な顔で耳を傾けておる。


「今や我が国、アルメロ国は人口も順調に増え、経済的にも安定して大分豊かになってきた。これもひとえに貴公らの善政のおかげだ。厚く御礼を言うぞ。」

 我が真面目に御礼を言ったらちょっと周りがざわつき出した。まあ、今まで会議に出ても我関せずだったからな。正直あまり興味もなかったし。


「魔王様ちょっとよろしいですか?」

 今度は魔将2位のサイレスが発言を求めてきた。いつもは無口な男なのだが珍しな…周りに押されて代表として発言するみたいだ。


「まさか…カミラ様は魔王を退位なさるおつもりでは…」

 本当に? まさか…やっぱり本当なのか?と周りがざわざわしだしてきた。


「…まだ辞めはしない。せっかく軌道に乗りかけた今はまだ、その時ではないであろう。」

 皆一様に安堵の表情を浮かべている。平和になったとはいえ我の力は他の国には牽制として十分な抑止力を持っているのだ。まあ、辞めたからといって死んだわけではないため攻めてくるようなバカはいないと思うけどな…


 でも帝国とかバカだからな…攻めてきそうだな。それならそれで今度こそきっちりとどめを刺してやっても良いのだがな、こっちは。むしろ攻めてこいって感じだ我は。


 それに大分前から我は魔王辞めたいな〜一人の女に戻って結婚とかしようかな〜とフィアに宣言したりしてるのに、あやつはいつも…ふんって鼻で笑って終わりだからな。


 あからさまに、お前なんかが一般の生活、尚且つ結婚なんて出来るわけねーだろ〜っていう態度なのだ。だからせめて恋人を作って、フィアの鼻を明かしてやりたいのだ…物理的に。


 ユウタにもらったスマホで何か“鼻フック”という物理的に鼻を明かす道具が出てきたので、今度ユウタにおねだりして買ってもらおうか…。それを使ってフィアの鼻を明かしてやりたいのだ…それが今の我の些細な望みなのだ。


 …異世界に持ち込めないけど。


「魔王様? いかがなさいました。」

 いかん、つい鼻フックの事を考えこんでしまっていた。物理的に鼻を明かす対象であるフィアから心配されてしまったではないか。ぷぷぷ…いかんいかん、つい想像したら笑いがもれてしまった。あやつは勘がするどいからなバレないようにぎゅっっとお尻をつねって耐えるのだ。


「すまん、ちょっと考え事をしてしまっていたな、ゴホン。先ほどの話の続きなのだが…我には最近雷に打たれたような衝撃的な出来事があったのだ。それはな…今まで我は民などという者は強者である我の庇護下に置かれるべき弱者というような認識しかなかったのだ、つまり無関心だ。」

 我が民を卑下するような発言をしても誰も眉ひとつ動かさんな。それはそうだろう、我のような圧倒的な強者であればどんな者達でも蹂躙できるのだから、虫けらのような扱いをされてもおかしくはないだろうという認識なのだろう。


「しかし、最近市井を練り歩き、民に関心を持ったのだ。確かに民一人一人はか弱い存在なのかもしれんが、我はふと気づいたのだ。力の強弱ではない一人一人が特殊な才能をもっているという可能性に。しかし、身分制度などがありその才能を世に出すのは難しい…いや、出来ないであろう。そういった場も今までは無かったしな。」


 そうなのだ、この国ではっていうか、この世界では市民の発表の場などはないっていうか、才能という発想すら無いのではないだろうか?


 この間提案したそれぞれの国から魔英傑を選出する大会っていうのも才能の発掘と点では一緒なんだけど、結局力だけの選出だから、多目的とは言いづらいし、力の強い男だけと偏っているし。


 そうじゃなくてもっと幅広い才能を見つけたいのだ! 男も女も関係ない、子供も大人も関係ない才能を見たいのだ!


「だからこそ、我国が栄えてきた今、皆に集まってもらったのだ。」

 皆が椅子に深めに座り佇まいを直した。我の次の一言を待つ。我も若干もったいぶって皆の顔を一人一人確認したのちに声高らかに発表した。


「それは…魔王の魔王による魔王のための祭り、魔王《M》-1グランプリを開催する!」


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