第71話 勇者パーティー報告会③
ソフィアが懐から取り出した一枚の肖像画。それは…魔王カミラだった。俺がその絵を見て驚いたのに気を良くしたのか、ソフィアが続けて俺に問いかける。
ソ「あれ? 先ほどは身に覚えがないと言われてましたが…この絵を見て思い出してくれたようですね? この方はどなたか教えてくれませんか?」
レ「…カミラだ。」
ソ「カミラ…? フルネームでお願いします。」
レ「…カミラ・カルロッツェだ。」
ロ「誰だ? 聞いた事ないけど。」
サ「カミラ・カルロッツェ…。」
ガ「………は? ま、まさかあのカミラか?」
ソ「レインさん、皆さん誰だかわからないみたいなのであなたの口から教えてあげてはどうですか?」
レ「…アルメロ国第23代魔王のカミラ・カルロッツェと言えば分かるだろ? 魔王本人だ。」
とうとう俺本人から名前が聞けたのだ、ソフィアは満足そうにうなずいている。
ロ「なっ、アルメロ国の魔王って言ったら、あのアルメロ国の最終兵器“消し炭のカミラ”の事か?」
サ「世界で唯一第10界魔法まで使えると言われる魔王…」
ガ「そんな噂を持つ豪傑が、こんな綺麗な方だったとは…」
皆が驚いている。まあ、そりゃあ驚くよな。俺も初めて会った時は度肝を抜かれたからな、あの魔王が俺の目の前にって。
さてと………ここまでは俺の計画通りだ。
実はこの情報は俺が綿密にファンクラブの諜報部と話し合って、わざとソフィアに嘘の情報を流してもらったのだ。
一応この計画は魔王本人にも了承を得ている。そう、ユウタの部屋で夕食が終わって寛いでいる時にお願いしたんだ。
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「なあ魔王、頼みがあるんだけど。」
「なんだ? 我の分のシュークリームはやらんぞ。土下座して懇願すればシューだけならやらなくもないが…」
「お願いします! シューだけでも、シューだけでもください!」
「くっ冗談のつもりだったのに、シューだけでもすぐさま土下座して懇願するとわ…勇者恐るべし! シューだけの約束だったのだが、あまりにも可哀想だから半分やるぞ。」
そういって食いかけのシュークリームを魔王は半分にして分けてくれた。いい奴だな魔王、もぐもぐ。
「ってこんな事が頼みじゃない!」
「お前が言い出したんだろう…で何だ?」
「実は俺が毎晩ユウタの部屋に来る事によって、パーティーのメンバー…主に1人だけだが、俺が部屋に引きこもって女と密会しているんじゃないかと疑われているんだ。」
「その女はお前の彼女なのか? それでは疑われて当たり前だろう。」
「いや、幼馴染でお互いにそういった恋愛感情は一切無い。」
「それなら一言否定すれば終わりだろうに。」
「何回も言ってるのに納得しないんだ。最近俺の行動が怪しいと疑い出して女以外にありえないと。」
「怪しい行動してるのか? お前」
「怪しいっていっても、夕食を食べる量が少ないとか、今まで大好きだったスイーツに興味を示さなくなっただとか、部屋までスキップしているだとか…異世界のユウタの部屋へ通っているって言えない俺に、いや俺たちには説明したくても出来ない事ばかりじゃないか、魔王もそうだろう。」
「まあ確かにそうだわな…説明しようにも言えないしどうしようもないな。まあ、スキップだけは同意できないが。それで?」
「だから魔王と会ってる事にしてくれない?」
「は? 我と…ってそれを認めたら勇者と付き合ってるって事になるではないか!」
ちょっと慌てふためく魔王はなにか…可愛くみえるな。
「別に付き合う設定じゃなくて他に…ん〜何かいい案がないかなと思って。」
「それなら我もちょっと相談があるのだが…。」
「ん? 何かあったのか?」
「ああ、この間生意気な将軍を兵たちの前でシメてやったのだが、なぜだが我の人気が沸騰してだな…。」
「なんだよ、自慢か?」
「市井の練り歩きでも我の人気が爆上がりしてだな…」
「なんだよ、自慢か?」
「なんか我に勝てれば何でも願いを叶えてくれるという根も葉もない噂が広まったらしくて、最近は我に戦いを申し込む奴が増えて相手にするが、もう~~うっとおしいのだ。」
「へー良かったじゃないかもてて。」
「全然よく無いぞ! 決闘だぞ! 煩わしいだけだ! だから何とか出来んか?。」
ん〜〜〜〜〜と二人で悩んでいたら、風呂から上がったユウタにダメもとで話を聞いてみた。
「いっその事二人が会ってる事を言えばいいんじゃ無いですか? 実際異世界のこの部屋で会ってるんですし。」
「ええ〜そんな事を言ったら、我と勇者が付き合ってると思われるではないか! 付き合ってもいないのに嘘をつくのはすぐばれるから嫌だぞ。」
「俺も魔王と付き合っているというのはちょっとな…国際問題に発展しかねない。」
俺も魔王も難色を示した。
「カミラさんは別に何も言わなくてもいいんじゃないですか? ただ勇者とたまに手合わせしているぐらいで。そして噂を流せばいいんですよ。魔王様は勇者ぐらいの力量がないと戦ってくれないとかなんとか。そして年に1回ぐらいカミラさんと戦える権利をかけて大会を開けば、カミラさんはその勝者と1回戦うだけでいいんじゃないですか?」
「うーーん毎日戦うよりは、確かに…検討の余地はあるかな。」
「そしてレインさんはそうですね。じゃあ、ある任務の途中で偶然魔王と遭遇して、やむを得ない事情で共闘する事になってしまったんです。それから魔王と縁が出来てたまに会っているけれども、男女の仲ではなく、メルニーク王国とアルメロ国との将来起こり得るかもしれない、ある極秘事項を協議中だという設定でどうですか?」
「その将来起こり得るかもしれない、ある極秘事項って何なんだ?」
「それは…ずっと極秘なんですよ。将来起こり得るかもしれないんですから。あるかもしれないし、ないかもしれない中身なんて何もない話し合いですので、別に嘘は言っていないですよね?」
「確かに…ユウタの部屋で今みたいに駄弁っている話も極秘事項といえば極秘事項だな…しょうもない話でも表には出せない話だから…よしそれでいこう!」
相手が魔王であればそんな恐れ多い相手と恋仲だなんて思わないだろうし、何よりも他の事を差し置いてでも会わなければいけないトップだから、他の用事を優先しても不自然ではないよな。よし、じゃあその路線で少し煮詰めていくか。
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という話を煮詰めて計画を実行したのだ。これで女性の元へ足しげく通っているというソフィアの誤解が解ければいいのだが…。
レ「ソフィアどこでそんな肖像画を…。」
ソ「それは言えませんが、とある情報筋とだけ伝えておきます、ふふふ。」
レイン心の声(いや、そのとある情報筋っていうのは、俺の息のかかったファンクラブの諜報部員だからね。)
ソ「長い調査を経てやっと尻尾を掴みましたよ、レイン。」
レイン心の声(めっちゃドヤ顏してる〜! いや、この情報俺の方からソフィアにこれこれこう言う話をソフィアに流してねってファンクラブの諜報部員に伝えた話だからね。)
レ「尻尾も何も魔王とはある任務で偶然共闘する事になって、面識があるぐらいだぞ。」
ソ「へ〜面識があるぐらいでそんなに頻繁に会うものなんでしょうかね? とある情報筋によると週4日は会われていると、なぜそんなに頻繁に会われているのでしょうか?」
レイン心の声(追い詰めた感じ出してるけど、それ俺の筋書き通りに流した情報だからね。)
俺はひと呼吸を置いてため息をつく
「はあー、わかったよこれはまだ言えない段階なんだが…」
さりげな~く極秘事項だから内容までは言えないけどみたいに言おうと思ったらソフィアがぶっこんできやがった。
ソ「ずばり! 結婚が近いんですね? レイン! ね、そうでしょう!」
レ「…は?」
ロ「ええええええそうなのか? レインおめでたなのか?」
サ「それはめでたい! 両国を挙げてのお祝いになるぞ!」
カ「さすがレインだ。」
ちょっとシナリオから思いっきり外れた予想外の展開になって、つい頭が真っ白になって返事が遅れてしまった。
レ「ってちょっとソフィア何言って…」
ソ「とある情報筋によるとそれはもう二人とも仲睦まじく抱き合っていたという報告や、夜の繁華街に二人でしっぽり消えていったなどの報告がなされてます。」
レイン心の声(その情報初耳! 諜報部員絶対にそんな事言ってないよね? ソフィアの思い込み? 自分の勝手な妄想を具現化しようとしてないか? ヤヴァイ、想定外だわ〜。)
レ「ちょっと落ち着こうかソフィア、その情報筋絶対にそんな事言ってないよね。じっくりその情報筋の話思い出してみ? ただ魔王と会っているだけじゃないかっていう情報だけだよね。どこで会ってるかも知らないのに、抱き合ったとか見えなくない? そんな衆人環視の中で抱き合ったりしてたの俺? 誰そいつ?」
ちょっと騒然となってきて興奮冷めやらない皆を何とか落ち着けて詳しい話はまた後日にする事になった。魔王と付き合っているという説は断固として拒否しておいたけどね。
なんですかソフィアさんその不満顏は…そういうとこだぞ昔から。




