第69話 勇者パーティー報告会①
俺の名前はレイン・バークレン。メルニーク王国に所属している勇者だ。
今日はなぜか定例の報告会を俺の部屋でパーティーメンバー全員が集まってやる事になった。わざわざ狭い俺の部屋に集まらなくてもいいのに…。
1日の楽しみであるユウタの部屋に行く事が出来なくなるのが嫌だったので、昼間を打診したのだが、皆忙しいので夜しか集まれないとの事。
しかたがないので、ユウタが夕食を作らない金曜日か土曜日の夜にしてもらった。まあ作らないとはいえレトルトとかは自分で作って食べていいので本心では行きたかったのだが…。
シュークリームが食べれない事だけは我慢出来なかったので、昼ごはんを食べてから早々《はやばや》とユウタの部屋へと行き、今日の分のシュークリームだけ食べてきた。
さすがにユウタは学校だったのか居なかったな。あと魔王も。魔王は今日も普通に夜ご飯を食べに来ると思うけどな…俺は自分の部屋でソファーに座りながらテレビを見てシュークリームをほうばる優雅なティータイムを過ごした。
ああ、最近はこの日常がとても居心地がいい。至福の時だ。いつまでもこの幸せを享受し続けていたいと思ってしまう自分が、段々とダメ人間になってしまいそうで怖いんだが…。
いかんいかん! これはフラグと呼ばれるものになってしまうかもしれないからここは慎重に行動しなくては! テレビによるとこのフラグというのは近々良く無い事が起こって、この幸せを享受できなくなってしまうとかなんとか…
ユウタの死とか、ユウタの事故死とか、ユウタの病死とかになったらもうおしまいだ。たぶん異世界と繋がっているこの部屋も…。まあユウタが無くなった時点で地球の食品を取り寄せる手段が無くなっていますので一緒だが。
実はそうならないように密かにこちらの地球に異世界の、俺たちの世界からポーションや魔道具などを取り寄せて隠している。
取り寄せて備蓄はできるのだが、こちらでは魔素がほとんどないのでポーションや魔道具を使ってもほとんど効果が発揮できないのだが、そこは俺と魔王で知恵を全力で振り絞って何とか使えるように考えてはいる。
そう何度も使えるような代物ではないが、1〜2回なら使えるようにはなったと思う。そうそう使えない仕組みなので試してはいないのだが、ユウタに何か合った時にはうまくいくと思いたい。
集合時間の10分前にガイルが俺の部屋を訪れた。通称おやっさん、パーティー唯一の既婚者だ。落ち着いた雰囲気で無口だ。しゃべらないという訳ではないが、余計な事はあまりしゃべらない。
俺に挨拶をした後、お土産の高い酒を差し出してソファーに腰掛ける。今日は1人掛けのソファーを用意して各々が座れるようにしてある。そして真ん中のテーブルには飲み物と軽食が置いてあり、自由に飲み食いできるようにはしてある。
「マリーと子供のジョナはどうだ? 元気でやってるのか?」
「ああ、おかげさまで皆元気だ。」
愛妻家のガイルは子煩悩でもある。本当なら勇者パーティーなんていう危険な仕事はやめて家族とのんびりと過ごしたいだろうに。本人は言わないが、俺たちのような冒険者が早死にしないよう後輩を指導する為に残ってくれているのだろう。彼ぐらいの実績があればもっと安全な仕事はいくらでもあるのにだ。
本人は子供が勇者パーティーの一員だって認識できる時までは居座ってやると冗談ぽく言ってくれているのだが、いつもその気遣いに感謝している。
しばらくして次はロイが現れた。このパーティーのお調子者というかムードメーカーだ。人に気を使いすぎなんだよな。年上なんだけど弟のように感じる憎めない奴だ。
入ってきて早速お酒を口に含むロイにガイルがぶっこむ。
「ロイ、お前もいいかげんソフィーに思いを伝えたらどうなんだ。」
「ぶぶぶぶぶーーーーー、げほっげぼら、な、何をいきなり」
含んでいた酒を盛大に吐き出してむせるロイ。
「そうだぞバレバレだぞ、ニヤニヤ。」
「れ、レインまで何言ってるんだ。俺はそんなんじゃあ…。」
「ロイ、一瞬の判断で命を落としていった奴を今まで大勢見てきた俺が言うんだが…告白して玉砕してこい!」
カイルの重みのある一言でロイが落ち込んだ。
「玉砕って断られるの前提ですやん…成功する見込みがないですやん。」
「いや、俺の目から見てソフィーは何度もぐいぐい押せば、ひょっとして…もしかして…何万分の一の確率で…。」
「全然ダメですやん! ほとんど成功する見込みがないですやん。」
そんなこんなでロイをいじっていたら、最後に女性陣2人が入ってきた。
「お疲れ様です。皆さんもう揃っていたのですね。」
「何だ、賑やかだったけど何が見込みないって?」
ソフィーとサーシャがいつもの冒険に出かけるような装備ではなく、家で過ごすようなラフな格好で現れた。
ソフィーは俺の幼馴染だ。年下の頑張り屋さんなのだが、思い込みが激しい一面もある。サーシャはショートカットのボクっ娘で猫みたいに気まぐれなところがある。ふたりとも勇者パーティーの華だな。可愛いけど決して顔で選んではいない。ふたりとも勇者パーティーにふさわしい実力の持ち主なのだ。
そしていつもの定位置と言わんばかりにソファに腰掛けてまず、テーブルに置いてある水で口を潤す。
ソ「何か私たちの目にすごく盛り上がってたけど何かおもしろい話でもありました?」
サ「そうだぞ! ボクたちにもおもしろい話を聞かせてよ。」
ロ「えっ何の話してたかな〜そんな大した話をしてなかったと思うけどな〜。」
ロイがへたくそなウインクで俺とガイルに向けてしゃべるなっていう合図をしてきた。
ちなみにセリフの前のカタカナはそれぞれの略称だ。テンポの良い会話の為につける事にしたのでご了承ください。
レ「そうだな、そんなに面白い話はしてなかったかな〜。」
ガ「あるヘタレな男の話ぐらいしかしてなかったぞ。」
ロ「あ〜そうそう、あのプリュハのヘタを取って食べるのがめんどくさいね〜って話だったかな?」
サ「そんなヘタの話で大爆笑ってどんだけ笑いのハードル低いんだ、お前たち。」
ソ「そんな事より私の話を聞いてくださいよ〜この間…」
とまたみんなでわいわいと雑談が始まった。いつも報告の前にはこういった何でも無い話をする事にしているのだ。たまに会うのだから近況報告も含めているのだ。
レ「それじゃあそろそろ、仕事の話をしていこうか。順番はどうする? 俺から右回りでいいか?」
皆の同意を経て順番は俺→ガイル→サーシャ→ロイ→ソフィアの順で報告をしていく。
まさかこの報告会の最後にソフィアがあんな爆弾を落としていくなんてこの時は思いもしなかったのである。




