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第67話 宝箱の中身は定番のアレ

 ミーシャはその後、冒険者としても活躍して名声を得て幸せな結婚をし、2人の一男一女に恵まれて最後はたくさんの孫に囲まれて幸せに息を引き取ったのであった。めでたしめでたし。


 という逸話を至急広めるようにレインさんに指示を出した。いくら物語とはいえ、最後はハッピーエンドで終わらないと居た堪れないよ。異世界でもこの後付けは受け入れられるでしょう。


 そんな雑談をレインさんとしていたら…


「ユウタ、いつまで我を待たしておるんだ! 早くやれと言っただろう!」

 その間、待たされたカミラさんは激オコだ!


 すみません、ついレインさんとの話に夢中になっちゃてすっかりカミラさんの事を忘れていました。と言うと怒られそうなので言わないですけど…ものすごく申し訳なさそうに平謝りでカミラさんの元へと小走りで近づいた。


 それじゃあさっさとオークキングの首を落としますか…よっと、てい!


 キン! 


 甲高い金属音を立てて弾かれた。何度も差し込んでみたが弾かれた。


「えっカミラさん首筋硬くてレインさんに貸してもらった剣じゃ刺さらないんですけど?」

「はぁー、何をしておるのだ。ユウタは今自分で身体強化の魔法をかけておるんだろう? じゃあその要領で剣に魔力を纏ってみろ、同じ事だろ。」


 異世界では日本人の僕でも魔力が使える。めちゃめちゃ多いわけでも少ないわけでもない。ザ・平均、それが僕のアイデンティティーなのだ…ぐすん。


 身体魔法は身体中に魔力を巡らす、血液と一緒だ。隅々まで行き渡るイメージで行う。これを行うと体がポカポカして冷え性対策に効果抜群!


 ただ単に血行が良くなっただけ説!(粗品風)


 ただ魔力を巡らせただけでは身体強化できない。巡らせながらある事をイメージするのだ。それは…


 “体が頑丈にな〜れ”だったり“速く走れ〜”などなどその時になりたい自分をイメージするのだ。


 「なりたい自分になる!」


 何かキャッチコピーみたいで格好良さげなのだが、最初聞いたときは疑ったよ。2度見ならぬ2度聞きしたもんね。それ本当にみんなやってるの?って。


 あくまでも初心者用のやり方で、慣れてくると頭で考えるだけで切り替えが出来るらしい。カミラさんとかレインさんクラスになると考えもしない。呼吸をしているのと一緒で意識などせずとも常に自分に適した行動を自動で処置してくれるらしいよ。


 …全然参考にならん。この二人はマジで規格外すぎて見本にすらならん。


 とにかく今までは自分自信の体を巡らしていたのを、無機質な物に魔力を通すという難易度が2段階ぐらい上がる事を今すぐやれとのお達しだ。


「ふん! うう〜ん…えいっ! うう〜ん…とりゃ! うう〜ん…」

 出来ないながらも何とかやってる感を出すために必死にうう〜ん…声を出してカミラさんにアピールしてみる。


「ユウタ、さっきから“うう〜ん”ばっかり言ってるぞ。何で悩ましげな声だけを出してるんだ。」

 カミラさんにはバレバレみたいだ。


「すみません。まだ無機質な物に魔力を通すコツが掴めません。」

 僕は正直に言ってみた。


「しょうがないの〜、手伝ってやるからホレ、手を出せ。」

カミラさんはそう言って僕に手を差し出して、握手するような形でつないだ。


ビリビリビリビリ


「うがががあがああああああ〜」

 僕に電気のようなモノが身体中に流れた。本当に感電したかと思った。アニメ化されたなら絶対にここは股を開いて飛び上がり、骨だけの絵面にしてもらいたい。


「どうだ? ユウタ。わかったであろう?」

「ビビビと来ました。これが僕の初恋? カミラさんに恋をしたのか? ボク、カミラサン二、コイヲシタ。」


「いや、ぜったいに恋ではないと思うぞ。あとなぜカタコト?」

 僕の初恋はすぐに破れ去った。


 カミラさんのビリビリ攻撃で今まで通らなかった剣に魔力が通っている。物に流す時の抵抗を突き破る方法があのビビビだったのか? 一度流すのを止める。再び流す。今度は何度やってもビビビという抵抗は無くなった。 


「カミラさんのおかげでスムーズに通す事が出来ました、ありがとうございます。出来れば最初からやってくれればこんなに“うう〜ん”と悩ましげな声を出すだけの演技をしなくても良かったのになどと思わ無くもないのですが、ありがとうございます。」


「それは言わなくてもいい事じゃない? ありがとうございますだけでいいのじゃないの?」

 そんなカミラさんの苦情を聞き入れず、再度オークキングの首元に剣を刺し入れる。


「ぶぎゃああああおおおおおおおお」


 オークキングが雄叫びをあげる。苦しみの雄叫びだ。しかしカミラさんがしっかりと足で押さえつけているのでピクリとも動かせない。そして次第に雄叫びは小さくなっていき息絶えた。


「やったー僕が倒したんだーーー!」

「いや、99%我の力だけだけどな。」


「こういうのは雰囲気なんですよ。僕がやったという事実だけあれば満足なんです。」

「そんなものか? 良かったな。」

 そんなほのぼのとした僕とカミラさんの会話中になんと宝箱がポップした!


「おお、ユウタ40階層で宝箱が出たぞ。このランクじゃあ中身はそんなに期待できないと思うけど開けてみるか?」

レインさんが宝箱の罠を調べてくれた。どうやら罠は無いようなのでオークキングを倒した(1%の努力のみですけど)僕に開けさせてくれるみたいだ。


 何か宝箱を開けるってドキドキワクワクするよね。現代で例えるとガチャなんだろうか。あの高揚感と似ているっていうかそのものだよね、宝箱なんだから。よし開けるぞ!


パカっ


 中を開けると丸い玉が2つ入っていた。こげ茶色で大きさは野球のボールぐらいの大きさだ。1つを取り出してみるとずっしりとした重みがあるが強く押すと凹む。軟式ボールぐらいの固さだな。などと触っていると…


「お、ユウタ当たりだな。オークキングの睾丸だ! これは貴族や王族から需要がひっきりなしにある高級品なんだぞ。高く売れるぞ!」


 えっ睾丸? 睾丸ってあの睾丸?

「金玉ですやん! 僕素手で触ってますやん!」

 思いっきり振りかぶって放り投げた。


「バカ! 何で放り投げるんだよ!」

 レインさんが慌てて睾丸を追いかけて拾いに行った。


 睾丸を素手で触った感触が気持ち悪い…これがあのキングオークの股に付いていたと思うとおぞましい…この感触を払拭できるのはあの方しかいない!


「カミラさんお願いします。今すぐ胸を…カミラさんのお胸を触らせてください。この気持ち悪い感触を上書きさせてください。お願いします、お願いします。」


ザシュ!


 …カミラさんに魔力を通した剣で手を切り落とされそうになったよ。そんな感触を上書きさせんでも嫌な感触を残した手を切り落とした方が早いんじゃ無いかと正気せいきのない目で言われたよ。


 この時ばかりは僕は勇者並みの反応速度で手を引っ込めて切り抜けたよ。これも僕を思って身体魔法をスムーズに行えるための訓練の一環なんですね、分かります。


 何とかカミラさんを上げて上げて褒め称えて、握手をしてもらえたよ。カミラさんの柔らかい手であの睾丸の感触を上書き出来て良かったよ。


 今度の泣き落とし時には恋人繋ぎを頼んでみよう! そう心に強く誓う僕であった。


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