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第66話 ある女冒険者の悲しい話

 久しぶりのダンジョンですよ〜。この間までは30階層のボス、オークをクリアしたんですけど覚えているかな? ちなみにダンジョンのクリア報酬は10階層が10万円、20階層が20万円、30階層が30万円と破格のお値段! 


 このダンジョンは50階層までらしいので50階層のボスをクリアすれば50万円のはず! いやっほおおおい! すごい大金じゃない? 僕がこんなにもはしゃいでるのに、あの二人には伝わらんのですよ! もともと金持ちの二人には僕の小躍りが理解できないんですよ! まったくこれだからセレブは…ぷんぷん(古!)


 30万円、ふ〜んみたいな。くそが! 確かに命のやり取りで10万円、20万円が高いか安いか分からないけどいざATMで現金を確認すると実感が出るというか、頑張って戦って良かったな俺って、自分で自分を褒めてあげたよ。誰も褒めてくれないから。


 ちなみにダンジョンの報酬で、二人に前回のスマホを買ってあげました。まだ練習用だから安いのですけど。あとは炊飯器を大きいのに買い替えたり、ネットでおいしいものを取り寄せたり…二人の為にばかりじゃん! どんなに二人に尽くしてるんだよ僕は!


 そんな事を嘆きつつ、今現在40階層のボスの所にやってきましたよ。早いですね。そこに辿り着くまでの状況はいちいち書かかずにスルーしますよ。まあ、魔王と勇者がいる限り万が一にも苦戦はないですからね。その点だけは二人に全幅の信頼を寄せていますよ、僕は!


 ダンジョンを裸でも歩けますよ! 全幅の信頼を寄せていますからね、僕は!


 …怒られました。服を脱ごうとしたらめっちゃ怒られました…信頼してるのに…。


 というわけで今から僕は40階層のボスと戦います。オークキングが出現しています。30階層のボスであるオークを2回りも大きくした感じで、体全体がさつまいもみたいな紫色ぽくて気持ち悪さも2回り増です。


 兵隊としてのオークもこれまた3体います。合計4体ですけど30階層のボス戦とは違い難易度が跳ね上がっています。さっそくまた僕一人でやれるところまでやっておしまいなさいと二人から指示が出て、僕はうっかり八兵衛状態です。


 いや、無理でやんすよご隠居様! 無慈悲でやんすよご隠居様! などとボケても誰も元ネタを知らないのでスルーですよ。でもこれ以上わかりやすい心境はないでゲスよ。


 水戸黄門がカミラさんだとしたら、レインさんが助さん格さんなわけです。残る僕なんですが、絶対に風車の弥七やお銀にはなれないわけで(結構強いよねこの二人)、残るはご隠居様一行で一番の役立たず、うっかり八兵衛その人が僕なんです…。


 そんな僕にご隠居と助さん格さんがオークキングを倒してきなさいと背中押すどころか、足蹴にするんですよ。ひどい仕打ちじゃ無いですか。僕は仲間だと思っていたのに、お前のためを思ってとか言われたら…これって遠回しのパワハラですよね。訴えていいですか?


 …うっかり八兵衛の訴えは却下されました。


「わかった、わかりましたよ! 行けばいいんでしょう行けば。うっかり八兵衛が行けばいいんでしょう!」

 ちょっとキレ気味に僕は同意した。


「最初から言ってるのに、ずーっと行き渋るユウタが悪いと思うんだけど…」

「ところでさっきからずっとうっかり八兵衛、うっかり八兵衛って言ってるけどなんだ? よくわからんが何かこう…残念なニュアンスを感じられるな、その言葉には。」


 はぁー、じゃあ行きますよ、止めるなら今ですよ、ラストチャンス…しつこい?


 まるで死地に赴くような心境で40階層のボスエリアに足を踏み入れる。


 だが、しかし! まさかの奇跡がうっかり八兵衛の身に降り注ぐ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ユウタ、ほれ早く止めをさせ! 我が抑えておいてやってるうちに早く!」

 カミラさん…いや、ご隠居様自らオークキングの首元を足で踏みつけ、あの紫の巨体が身動き出来ないみたいだ。僕のために止めだけは譲ってくれるようなのだ。


 いったい何が起こったかというと…


 30階層と同じです。オークは性欲旺盛なので僕などには見向きもせずにナイスバディーなご隠居様に群がったのです。彼らは本能に従っただけなのです。


 格好よく言えば「自分、不器用なんで」といった感じだろうか。

「いや、全然格好よく無いけどね、それ。」

 レインさんが突っ込んでくれた。僕と一緒にご隠居の戦いを見守っていたのだ。催促するカミラさんを余所に、レインさんにある疑問を聞いてみた。


「レインさん質問なんですけど、オークが性欲に従って女性に群がるのはわかるんですけど、例えば女性が二人いて1人はカミラさんのようにグラマー、1人はスンって感じの体型の人がいたらどうなるんですか?」


「しっ! ユウタ声を抑えろ! 誰かに聞かれるかもしれないから静かに。」

 急にレインさんが真剣な表情で僕に小声でしゃべれと指示をだした。えっ何で? 誰もいないでしょう僕達3人以外には。


「例えそうだとしてもだ。どこで誰に聞かれるかわからんだろう。用心に越したことはないんだぞ、我が身がかわいかったらな…。」

 何か大げさな感じがしないでもないが…先ほどの僕の質問に答える代わりに、レインさんがある話をしてくれた。


 ある女性の悲しい物語を…


 昔ある仲の良い冒険者が2人。1人はものすごく美人だけどスンな体型のミーシャ、もう1人はごっつい顔だけど体はナイスバディーのダータン。美女と野獣コンビと言われていた。


 ある日二人は魔物の巣の掃討の依頼を大勢の冒険者と共に受けた。その依頼は成功したが、現地解散して違う依頼を遂行中の二人は、オークの集団に遭遇して囲まれてしまった。


 やむなく応戦したが自分達の不利を悟ったミーシャは助けを呼ぶためにダータンを先に逃がした。しばらくは互角の戦いをしていたのだ、ミーシャの果敢な奮闘もむなしく、助けが来る前に負傷しオークの目の前で気を失ってしまった。


 女性がオークの前で気絶するという事は命を奪われる事以上に凄惨な事態になるとわかってはいたのだが、気を失ってしまったのだ。


 しばらくして、時間にして1~2時間ぐらいか、ダータンが助けを呼んで現場に戻ってきた時にはミーシャはオークの集団のそばにいた。ミューシャを助けるべく他の冒険者との共闘でオークを全て倒すことができた。


 しかしその時、奇跡的に助けられたミーシャは《《ある》》真実を知って暴れに暴れたらしい。


「どうして暴れたですか…やっぱり、その言いにくいんですけど助けが来るまで犯され続けていたので自暴自棄になって暴れてしまったのでしょうか?って口にするのもおぞましい事なんですけど…。」

「いや、…実は…犯されてはいなかった。五体満足だ。戦った時の傷だけで、そういった外傷は全くなかったんだ。」


「? だったら尚の事嬉しいんじゃないですか? なんでミーシャさんは暴れたんでしょうか?」

「…女だと思われてなかったみたいなんだ。」


「え? は? どゆこと?」

「ずっと男と間違われていたらしんだ…オークに。」


「ん? 美人だったんですよね?」

「オークには人間の美醜の判断なんて関係無いみたいなんだ…体さえ良ければそれでいいみたいな、だからミーシャは美人でもスンな感じだったから、仲間が助けに来るまでずっと5匹のオークに囲まれていたのに…何もなかったんだ。」


「いや、それは…ん〜喜ぶこと…じゃないんですか? 喜ぶべき事ですよ!」

「ダータンが助けに戻った時にオーク達はものすごくはしゃいだらしんだ。ダータンは、ほらナイスバディーだからオークにとっては、ねえ? 喜び方が尋常じゃなかったようで…せっかく身を挺してまでダータンをかばって戦ったのにこの仕打ち、みたいに思ったのかもしれんな…ミーシャは。なにせいくら魔物とはいえ、女性とはみられなかったわけだからさ…喜びと悲しみが入り交じって…みたいな複雑な感情が溢れ出して暴れたみたいなんじゃないかな…知らんけど。」


 確かにいくら襲われなくて良かったとはいえ、それはちょっと複雑なのか?


「あれ? でもレインさん、この話そんなに悲しい物語じゃないんですけど。」

「…このあとミーシャはオークに襲われなかった女性として、他の女冒険者の間で生き神様のように崇められるようになったのさ。」


 うわああああああああああああああああああんんんんんんん

 僕は悲しすぎて泣いた。

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