第62話 魔王と勇者のプレゼント
僕は今カミラさん、レインさんと共にダンジョン広場にいる。もちろんセーフゾーンなどはないので、ときおり魔物が寄ってくるのだがカミラさんとレインさんがノールックで始末していく。ある意味究極のセーフゾーンと言えなくもない。カミラレインゾーン略して“カレゾン”と名付けたよ。
そんな状況で昨日の出来事を話してみる。
「という事が昨日あったんですよ。やっぱり異世界のレベル上げによるステータス上昇が影響しているんですかね?」
「いや異世界のレベルアップ、ステータス上昇は関係ないぞ。もちろん今は反映されてはいるが異世界限定だから、ユウタのいる地球では関係ないはずだ。」
レインさんが答えてくれる。
「我も地球で鑑定した事があるが、ユウタの異世界のステータスも貧弱だがそれに輪をかけて貧弱なステータスだったぞ。」
カミラさんには容赦などという文字はない。
「じゃあ僕が強くなったわけじゃないのに何で圧倒的だったんでしょうね?」
「そりゃあ異世界の戦いが全て無駄というわけじゃないからさ。ユウタは対人戦において何が結果を左右すると思う?」
「質問に質問で返すスタイル嫌いじゃないですよ。そうですね…やっぱり本人の才能じゃないですかね?」
僕は右斜め45度のキメ顔で答えてみる。きりり!
「うーん才能ももちろんあるとは思うけど圧倒的な差でない限りはせいぜい勝因の10%ぐらいじゃないかな。」
「はいはいはいはい分かるぞ。我なんか圧倒的な才能の塊だったので100%ぐらいあるからな。」
カミラさんが空気を読まずに自分自慢だ。いや、天才の人の話なんか大概の凡人には全く役に立たないからノールックする事にした。
「えっじゃあ…優しい気持ちですかね?」
「そんな気持ちがお互いにあれば、対人戦どころか争いの無い優しい世界が爆誕しちゃうね。」
「我の奥底にも“優しい気持ち”という源泉が流れ出て…」
カミラさんはノールックした。
「一番大事なのは平常心だ。」
「平常心?」
レインさんの意外な答えに僕は驚いた。勇者であるレインさんならもっと技術的な指摘があるかなと思ったからだ。
「緊張状態や興奮状態では自分の意思とは関係なく、体が萎縮してしまったりして体のコントロールが思うように動かなかったりするものなんだ。だから適度なリラックス状態、つまり平常心が戦いを左右する。もちろん今までの異世界で戦ってきた経験も蓄積されているのですんなり体を動かす事ができたんじゃないかと思う。」
「確かに…昨日僕は前だったら考えられないくらい落ち着いていたんです。てっきりカミラさんに永続的に効くヤヴァイ精神魔法を掛けられていたんじゃないかなと疑っていたんです。」
「いや、そんな永続的に効くヤヴァイ精神魔法も無いことは無いのだが…いくら我でもユウタにかけるのは良心が痛むぞ。だからちょっとだけだぞ。先っちょぐらいしかかけておらんぞ。」
かけてるんかーーーーーい! と危うく突っ込みそうになったが血の涙を流しつつノールックした。
「そんなヤヴァイ精神魔法は無いと思うが…無いだろう? 無いと言ってくれ!」
とレインさんがノールック出来ずに魔王を問い詰めてくれた。
「ほんのジョークです。皆が我をノールックするから脅かしてみたのだ。だが魔法は存在する。それは…あなたの心の中にな!」
カミラさんは右斜め45度のキメ顔で答えてきたので、僕とレインさんはノールックした。
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さてと、茶番も一通り済んだのでダンジョン攻略の続きをしようと腰を上げた時にカミラさんから声を掛けられた。
「待て、ユウタ。お前に我と勇者から渡す物がある。」
「渡すもの? 何ですか? カミラさんの使用済みガーターベルトなら欲しいですけど…レインさんのブーメランパンツならいりませんよ。」
「が、ガーターベル…そ、そんなマニアックなものが欲しいのかユウタは…しょ、しょうがないな正直に言ったご褒美だ。今回だけだぞ!」
ちょっとツンデレ気味に言ったカミラさんが僕に紙袋を手渡した。ま、まさか本当にくれるのか。言ってみるもんだな。ちょっとどきどきしながら紙袋を開けたら…
「ブーメランパンツじゃねーか!」
僕は地面にブーメランパンツを叩きつけた!
「おいおい、捨てるなよ。俺が3日間も大事に履き続けた熟成ブーメランパンツなんだぞ。」
レインさんの追い打ちに僕はブーメランパンツを掴んだ手ごとファイヤの魔法で焼き尽くした。
「まあ、そんな茶番は置いておいてだな…よいしょっと。」
どこからかカミラさんが直径1mくらいある大きな光の玉を取り出した。なんかあれだな…元気玉みたいな感じのちょっと明滅をしている。すんごい目に悪そうだ…チカチカする。
「な、なんですかこれは?」
「これが我と勇者からユウタへのプレゼントだ。」
そう言ったカミラさんとレインさんは誇らしげだ。
「我が1ヶ月もかけて作った新魔法に勇者の魔力も存分に練りこんであるぞ。」
「いや〜頑張ったね俺も。限界まで注ぎ込んだからな。」
いえ、なんか注ぎ込みすぎて禍々しさも垣間見えるんですけど…僕の目の錯覚ですか?
「この魔法はいつどこにいても我と勇者が駆けつけることができる魔法だぞ。ユウタが困った時に発動するがよい。絶対に我らがユウタの為に駆けつける。」
さっきとは打って変わってカミラさんとレインさんは真面目な顔だ。なんというか優しい顔をしている。僕のためというのも本当なんだろう。
…なんかずるいよな、さっきまでふざけあってたのに急に真面目な顔をするなんて。僕を泣かせにきてるとしか思えないよ。
「いつでも?」
「いつでもだ!」
「僕の国日本にでも?」
「どこにでもだ!」
「本当に?」
「俺たちがユウタに嘘なんかつくわけ無いだろう。」
僕は嬉しくて泣きそうになるのをこらえて小さな声でありがとうございますと絞り出した。そんな僕を見て二人は照れ臭そうに笑ってくれた。
んで…これどうすればいいの?
「まずユウタの体になじませるために、この光の玉をユウタと融合させます。」
「いや、無理無理無理無理むり〜〜〜。」
だって、めっちゃドス紫色ですやん、ちょっと雷みたいな紫電がちらついてますし、絶対に体に有害ですよ! 果汁100%って言って実際には青汁100%でしょこれ! 無理!
「大丈夫だって、痛いのは最初だけだから。ほら、体の力を抜いて。俺に体重を預けるようにしてそうそう。」
なんかレインさんのその手慣れた感じがものすごく嫌なんですけど…あと痛いんだやっぱり。
「そうだぞ、安心しろユウタ。この偉大なる魔王4000年の歴史で初めて不眠不休で製作したオリジナリティ溢れる魔法で、未だかつて試したことの無い新作なのだ。ユウタが歴史上初めて体験する事になるが…そこは我を信じて、な、な?」
オリジナリティって聞こえはいいけど…絶対これ人体実験だよね。歴史上初めてっていうフレーズにはひかれるけども…絶対これ人体実験だよね。ねえ?
…さっきの僕のありがとうございます返してもらってもいいですか?




