第58話 それぞれの思い2
俺の名前はロイだ。勇者パーティーの一員だ。すごいだろう? 18歳の若さでなかなか勇者パーティーに選ばれる事は珍しんだぜ、へへ。
…まあ勇者パーティーの中では4番人気なんだけどな。
ちなみに1番人気はもちろん勇者レオン16歳。まあ当然だよな。強いし格好いいし、俺より年下なのに年上のように包容力がある。性格もいい…良いところしかないな。あっ敢えてあげるならスイーツ好きってことぐらいだな悪いところは。食いすぎるっていうか見境がなくなるってところぐらいだぜ。
2番人気はレインの幼馴染の回復魔法士ソフィア(15歳)だ。うん、小動物みたいでカワイイ。巷では回復魔法が使える事から聖女様って呼ばれる事もあるが、可憐な少女だ…誰もが彼女を守ってあげたくなるような華奢なんだが、もちろん性格もいいぜ。
3番人気は魔法剣士サーシャ(17歳)だ。こいつはショートカットな男の子みたいな容姿だが、子猫みたいに気まぐれで摑みどころのない性格だな。魔法剣士っていう職業適性が格好良いしな。
4番人気が俺、盾拳闘士ロイ(18歳)だ。盾で守って素手で戦うのが地味なのかな。実際は高等テクニックが必要で派手さはないけどいぶし銀な感じで一度見てもらえれば良さがわかると思うんだけどな…年配の人には人気がある職業なんだけどな。ちょっと防具とかを性能無視して若者受けする派手なのを発注しようかな。
最後に斥候剣士ガイル(35歳)だ。通称おやっさん。冒険者のベテランで面倒見の良いアゴ髭の似合うパーティー唯一の既婚者だ。だから大人の余裕なのか人気とかは全く気にしない。嫁さん一筋だ。
そんな勇者パーティーには幾つもの約束事がある。掟だな。それはそうだ、いざという時に国の最高戦力として十分な力を発揮できなければ意味はないからな。その掟の中にはチームとしての相性も含まれる。
正直言って俺より強い拳闘士もいると思うが、あくまでもチームとしての相性を優先されるので、全体のバランスを見て調整されるのだ。もちろん自分の意思も尊重される。
その中の掟の1つに、チーム内恋愛禁止がある。
…えっアイドル? 俺たちアイドルなのか?
とツッコミたくなるがこれは切実な問題なのだ。はるか昔から幾度も繰り返されてきた男女問題の集大成。同じパーティーに付き合っているカップルがいると命に関わる説なのだ。
これは…話のネタが尽きないほど色々ありすぎて語れないな。
パーティー内にカップルがいると…冒険者は命のやり取りが日常茶飯事だ。だから種としての本能が子孫を残そうと荒ぶった時には所構わずいたしちゃったり、森、村、城、ダンジョンとそれはもう見境なくいつでもどこでも状態が日常茶飯事になってしまうことがあるのだが…
その最中に、それ以外のパーティーが居た堪れない。中には役得という変わった性癖の奴もいるのだが…俺は嫌だな。
後はパーティーカップルが仲が良い時は良いのだが(いやその他のパーティーは良くはないが)仲が悪くなった時なんかは最悪だ。しょうもない事で喧嘩したとかで命のやり取り、戦闘中に理性より感情を優先しちゃったり、一人の女性(もしくは男性)を巡って依頼中に蹴落とし合い…命がけの蹴落とし合いをおっぱじめてしまったり…仲間だったのにデスゲームが始まっしまうことも今までには何度もあったみたいだ。
だから今ほとんどの冒険者達のパーティーは恋愛禁止になっている。
たまにハーレムパーテイーも見かけるが、ほとんどが仕切る女性が強い権限を持ち、パーティーメンバー全てをコントロール下に置いている場合に限られる。もっともそんなパーティーは本当に稀だな。
っていうかその女性が男性を見限ってパーティを離れるとすぐに壊滅するけどね。
だいたいそんな実力がある女性に見初められる力量を持っている男がハーレムなんて浮ついたパーティを作る事自体があり得ないからな。
そんな事を長々と話してしまったが何を言いたいかというと…
俺はソフィアに恋をしている。
ソフィアが好きなんだ。しかし報われない恋だというのもわかっている。ソフィアはレインの事が好きなんじゃないかと思うからだ。直接本人に聞いてもみたのだが…ソフィアは好きじゃないと断言していたが…。
しかし、幼馴染で冒険者の活躍が認められて久しぶりの再会! 恋人となるのにこれ以上のシチュエーションがあるだろうか? 勇者と聖女の恋物語、皆が憧れる最高のシチュエーションではないだろうか。俺はそう思うのだ。
そんなソフィアに最近ある噂を聞いた。レインファンクラブの隠密部隊を使ってレインの身辺調査を依頼したと。
これは…
これはソフィアとレインの結婚への前フリなんではないのだろうか。
「実は私たち付き合ってました。結婚します」
近々そんな報告をする為にソフィアはレインの身辺調査を依頼したのではないだろうか…レインの女性関係を清算させる為に。
俺はそう思っている。
俺はソフィアの事が好きだが、レインの事も好きだ。もし二人がくっついても俺は素直に二人を祝福したいと思う。それが良い男ってもんだろう?
…ごめん、本当はちょっと泣いちゃうかもしんない。パーティーの戦闘中に魔物をレインの方に誘導しちゃうかもしんない。
本当か嘘か全くわからない状態なのに、理性と感情が激しくぶつかり合い働いてもいないのに疲労してしまう俺、結局徒労に終わる俺であった。
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俺の名前はゴルドバ。元魔王11将軍の1人だ。
魔国で俺より苦労人はいないだろう。それほど苦労に苦労を重ねて勝ち取った位が魔王11将軍の地位だ。俺だって実力ではないとはいえ、この地位まで上り詰めた男だ、バカではない。
いつも何もしていないくせに会議では偉そうにふんぞり返った女、魔王とやらが気に食わなかった。だぼだぼの服に隠れてみえてはいないが、俺のゲスセンサーにはビンビンに反応してやがるぜ〜魔王のナイスバディーがな…くくく、そんな良い体を隠しやがって! 俺に見せるべきだろう! 気に食わない!
あの体を俺だけのものにしたい! 俺だけがあの体を自由に出来るのだ! いつしかそんな野望とも無謀とも言えない欲望がムクムクと湧き上がっていた。
会議を機にその欲望をぶつけるチャンスが来た! 千載一遇のチャンスだ! ここでしか魔王と俺が交わる時はない! と確信して喧嘩をふっかけた。
もちろん俺に勝ち目は無いだろう。
見ればわかる。魔王と呼ばれるのは伊達ではない、圧倒的に我らとは違う存在なのだ。だがその圧倒的な存在感にも勝る圧倒的なナイスバディーが俺の恐怖を麻痺させる…くくく罪な女だぜ。
一度だけで良いあのナイスバディーにしがみつきて〜〜〜。それが俺の欲望という名の遺言なのだ。
コロシアムでの大勢による方位からの一瞬の隙をついて一度だけでもあのナイスバディに抱き付こうとの作戦だったのだが…近づく事も出来ずに仲間に囲まれてボコボコにされた。
俺に付き従った仲間達はもれなく両腕か片腕片脚を折られての惨敗だった。
たった一度だけ魔王に抱きつきたかった俺の夢がこの様だ。無理だとわかってはいたのにワンチャンあるんじゃないかと欲をかいた結果がこの様だ…。
今日限り魔王様に会う事も叶わない日が来る事を覚悟して、自分の死を覚悟して魔王に最後の音葉を浴びせた。
「死ぬ前に魔王様のナイスバディーを抱きしめさせてもらっていいですか?…おごっ!」
ベキキキキキーーー
綺麗に回し蹴りを食らって吹っ飛んだ俺は壁にめり込んだ。そこで意識を失った。




