第53話 ゴルドバ達との戦い
そんな時観客席からぞろぞろと降りてきた兵達の中の1人が我の後ろから近づき声をかけてきた。
「魔王様、こんなゲス達は魔王様の手を煩わせるまでもありません。私達が始末いたしましょうか?」
フィアの手の者か? それとも暗部の者達か? まあどちらでも良いわ。
「我が片付ける、貴様達は手出し無用だぞ。」
「はっ、わかりました。」
そう言って気配を消して下がっていった。
「おい魔王、戦う準備は出来たか? 最後に言い残す事はないか? けひゃはははは。」
自分たちが負けるとはこれっぽっちも思っていないであろうゴルドバが小躍りをしながら高笑いをしている。
「ふむ、お前ら死ぬ覚悟はあるのだろうな? いくら我といえど100人を超えるとなると手加減は出来んかもしれんしな。死ぬ覚悟がある者だけかかってくるといいぞ。」
我的には別にすごむ訳でもなく、怒気を込めるでもなく、普通に言ったつもりだったのだが、その言葉を発して直ぐに場の雰囲気が張り詰めたようだ。
そしてパラパラと観客席に戻る者が出始めた。ゴルドバも少しビビっていたようだが、必死に倒した後の利を唱えて食い止める。数人は引き止める事が出来た奴もいるようだが…
最終的に80人ぐらいかな、残ったのは。ふと観客席に目を向けると先ほど我に声をかけた男が我を見てうなづいた。残った80人は殺しても良い奴ばかりらしい…遠慮しなくてよいという意味のうなづきだろう。さてどう料理してやろうかの。
「では、今から戦いを始めるぞ! このコインを放り投げるから落ちたら開始の合図だ、それよ!」
バシッ!
そう言ってゴルドバはコインを上に放り投げるのではなく、下に叩きつけた。
と、同時にゴルドバの後ろに陣形を組んでいた40人ぐらいがそれぞれ起動の早い第1界魔法を一斉に仕掛けてきた。
ズドドドドドドド
すごい音を立てて着弾をする。土煙が高く舞って拡散するが魔法の手を緩めない。アホか、視界を遮ってどうする。自分達も的を把握できないではないか…と思ったら我が逃げた右の方から斬撃が…。
もちろん苦もなく躱すが、あきらかに我を狙って斬撃が繰り出されておる。探知魔法で我の居場所をつかんでおるか。斬撃が引いたと思ったらまた魔法の絨毯爆撃を、逃げればその位置に切り掛かり足止めというパターンが出来上がっていた。
土煙のすき間からゴルドバの顔をみると…勝ち誇っているな。あのバカもう我を仕留めた気でいるとは気が早い。絶対早漏だな…。魔法が使えたなら絶対にインポンテンツの魔法を撃ってやるのだが…一応ルールだから魔法は使わないでいてやろう。
この斬撃と絨毯爆撃のコンボは一見穴がないようだが、思いっきり大穴がある。それは…我があっさり反撃するからである。そいっと。
ザシュ、グギ、グギ
「「「ぐぎやあああああああああ」」」
斬撃で繰り出してきた奴をカウンターで当て腕をへし折る。こちらは木の模擬剣なので、切り裂く事は出来ずただ打撃のみなのだが1人目であっさり折れたので、体術で敵の腕を折っていく。
もちろん身体魔法などの補助魔法などは一切使ってはいないぞ。我の力だけだ。そもそも身体能力が元々高いのもあって雑魚相手なら魔法や道具もいらん。素手で十分なのだ。
腕を折られても片手で切りつけてきたガッツのある奴にはその腕も折ってやったぞ。良かったなこれから片腕だけでの生活は辛いだろうからな、シンメトリーにしておいてやったぞ、我は優しいだろう?。
いくら下位の魔法とはいえ、そう何度も打ち続けるなぞ訓練を怠っている者達にしたらしんどいのだろう。魔法の練度がバラバラだ。そら、穴が開きまくっておるぞ。土煙から飛び出した我は魔法を連続で撃ち過ぎて、疲れた者を率先して狩っていく。
普通こんなに近接戦に魔法なぞ撃たんのだがそこは烏合の衆、パニックになって味方がいるのに我に向かって魔法を放って味方に着弾して火ダルマだ。さらにその火が魔法使いに広がるという負の連鎖が…あまりの無様ぶりに目も当てられんな。もちろん火がついて転がっておるやつらにも我は均等に腕をへし折っておいてやるぞ。
脚を折ってやってもいいのだが、自分の足でトイレに行けないと大変だからという我の優しさだぞ。もちろん腕が折れているのでズボンは下げられないが、そこはみんなで助け合ってな(笑)。
「あはははははははは」
うむ、あまりの楽しさに思わず笑い声をあげてしまったぞ。本来ならこんな格下のクズどもを叩きのめしても何の達成感も得られない作業でうんざりなのだが、自分縛りによって能力を弱体化してのせめぎ合いは思いの外楽しい。久々にわくわくする楽しさだ。
そんな我の喜色満面な顔で打ちのめされていく姿に恐れ慄いたのか、悲壮な顔で逃げていく者達が多数出てきた。腕を折られた者達も我先へとコロシアムから逃げ出した。
ゴルドバも青い顔をしながらも皆を引き止めたが、今度は引き止められなかったようだ。五体満足なのは残り10数人ってところかな。
「どうしたゴルドバ、始まる前の威勢の良さは。今こそ小躍りする時ではないのか? 我は丸腰だぞ、ほれ、待っていてやるから残りの人数で我を取り囲め。遠慮はするな。」
ゴルドバ達は何も言わずにアイコンタクトで我の周りを囲む。そして皆が我めがけて交互に剣で攻撃をする。それを全て紙一重で躱す。
周りを10人で囲んでも実質一斉に攻撃出来るのは4人ぐらいだ。たまにその隙を縫って突きを繰り出してはくるが…ばればれである。
こいつらにとってはなぜ当たらぬか不思議なのだろうが…我からみるとヌル過ぎる。反応速度が違い過ぎるのだ。こいつらの中で早い奴でもせいぜい0.5ぐらいしかないだろう。すごい奴だと0.01ぐらいの反応速度だ。だが我や勇者のように高みに上った者達は本気を出せば0.0001の戦いになるだろう。常人ではたどり着けない境地なのだ。
そんな我に反応速度0.5ではヌル過ぎる。練習にもならんからこの辺でいいか。
ゴキベキッ! ゴキベキッ! ゴキベキッ!
「ぎゃああああああああ」
一瞬で片腕、片脚を同時に折る。3人一緒に折る。はい離脱。邪魔なのでお腹を蹴って隅に避けておく。
「ゲフッ、ガッ。」
残りは7人、皆信じられないと言った顔をして棒立ちだ。
「おい、まだ戦闘中だぞ、何を惚けておるのだかかってこい。」
これまた全然怒気を込めていないのだが、その言葉を聞いてお漏らししている奴がいたので遠くへと蹴り飛ばした。きちゃないな。
ふとゴルドバを見ると…真っ青通り越して、ムラサキ色やん! 気色悪! 何かこいつ殴るの嫌だな…よし。
「なんか興が削がれたな…おい、お前達そこのゴルドバともう一人の奴を倒したら見逃してやる…ぞ?」
我が全部言い切る前に、皆弾け飛ぶようにゴルドバと男に襲いかかった。裏切るの早いなこいつら。まあ、もともと信頼関係なんてなかったのだから窮地に陥ったら関係ないのだろうが…
しばらく一方的にやられるゴルドバと男。そろそろ止めてやるか。
「おい、もうそこまででいいぞ。それ以上やったら死んでしまうからな。」
そう言ってもうズダボロになった二人をみやる。…何か可哀想になってきたな。思いっきりイキリキャラだったし、雑魚丸出し感がいい味してたんだけどな~。罪悪感でこっちが悪い奴に思えてきた。
ゴルドバを裏切って痛めつけていた者たちは、我から攻撃されないと思っているのか、いい笑顔仕事は終わった~みたいな顔をしているが、我が告げる。
「じゃあ、最後にお前らを痛めつけるぞ。えっ何? 約束が違う? 我が見逃してやる《《かもしれない》》ぞ? という前にかん違いして先走ったお前らが悪いんじゃないのか? 最後まで人の話を聞けよ。そもそもだ、最初に忠告してやったにも関わらず我に歯向かった時点で許すという選択肢はないぞ。」
そう言って絶望的な顔で腰が抜けてしゃがみこむ男達にゆっくりと近づき制裁をくらわす。はー準備運動にしかならなかったわ。やっと体が温まってきたところなのに…ちょと不完全燃焼だな…。
あっそういえば観客席にはまだ兵がいるから我に挑ましたらどうだろう? えっダメ?
全力で断られました。




