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第52話 魔将10位ゴルドバという男(バカ)

「納得いかねー! 何で俺がいちからやり直さなきゃいけねーんだよ!」

 会議の喧騒を打ち破って大声でわめく男がいた。この男は…


「誰?」

「魔王様、魔将10位のゴルドバでございますよ。」

 フィアがすかさず我にフォローを入れてくれた。ずっと会議に居たでしょう、発言もしていましたよとチクリと釘を刺すのも忘れない、出来る女だ(苦笑)。


「ゴルドバとやら、何が不満なのだ言ってみろ。」

「俺達の役割を理解しているだ? 新しい序列を勝手に作ろうとして何を理解しているっていうんだよ、魔王様よ!」

「おい貴様、魔王様にその口の利き方は何だ! 控えろ!」

 他の魔将軍達が慌ててゴルドバの発言を諫める。


「まあ、口の利き方などは良い。今はそのままの口汚さでも許してやろう。ふん、お前らの役割なぞ、戦時には軍を率いる将として戦場を駆け回ることが仕事だが、平和な今の世ではダラケきった名ばかりの役に立たんくらいだ。そんなしょうもないくらい胡坐あぐらをかいた貴様達役立たず2将を軍もろとも改変し、一から鍛え直して出直して来いと言っておるのだ。これぐらいの事を全部言ってやらなければ理解できないようなおつむでは改変しようという我の考えが正しかったようだな。」


「ぐぐ、胡座をかいてるだと? 俺たちの努力も知ろうともしないで! 怒号飛び交う中、袖の下争奪ワイロ合戦の末にやっと勝ち上がってきた俺達を! 血の滲むほどのゴマスリ土下座を経てようやく手に入れたこの魔将10位という金とプライドを捨ててまで買ったこの神聖な地位を! お前は侮辱するのか! そんなに易々とはこんなにおいしい地位を俺達は手放さんぞ! 絶対にだ!」


「…いや、それ堂々と言う? 我国の最高権力者の我の前で堂々と宣言するの? あとお前の神聖と侮辱の定義をじっくり正座をさせてマンツーマンで聞いてやりたいぞ、我。」

 あまりにも堂々と言い切るものだから2将って本当にそんな汚職まみれで買える役職なのかなーと思ってフィアをみる。


「はぁー…確かにこの数十年平和が続き、軍の維持費が膨大にかかるのでお金によるくらいの売買を多少は認めていましたがここまで頭が悪いとは…はぁー。」


 なぜ2回もため息を…。えっやっぱりフィア知ってたんだ…ていうかフィアの差し金なんでわないか…と驚きの顔でみやる。


「なんですか魔王様、その疑いの眼差しは…確かに私の差し金ですが、私のさじ加減でどうにでもできる範囲でコントロールしていますので何も問題はありませんよ。例え軍を扇動してクーデターを起こそうとしても私にとっては瑣末さまつな事です。ふふふ。」

 とフィアは怪しげな笑みを浮かべながらメガネをクイッとあげる仕草をした…メガネかけてないのに! 


 こ、怖い…この副官怖いのだ。まさか本当に我もフィアの手のひらで泳がされているのでわ…


 「ふふふ、魔王様そんなに怖がらないでください。例え私があらゆる小細工を施しても魔王様にとっては児戯じぎのようなもの。本気で滅しようと思われたら私達のような凡人には太刀打ちできませんわ。そうでしょう皆さん?」

 そういって他の魔王11将軍を見やる。我を持ち上げているように見せかけて、実のところ皆を牽制する為に我を利用するとは…やるなフィア。


 略して“やるフィア”! な、しか略してない!


 しかし古くから使える者達は我の怖さを存分に知っているので、いくら平和ボケした今でも我に逆らおうとする者などいない。古くから使える者以外はな…。


「納得いかん! 俺と勝負しろ! いつも椅子にふんぞり返っているだけの女が俺より強いはずがねえ! なあ。」

 そう言って魔将10位のゴルドバは他の11位の男と共に我に歯向かってきた。おお、いいね。最近こういったバカもめっきりいなくなって我のストレス発散するところがなかったのだ。存分に思い知らせてやろうかな、ふふふ。


「ああ、良かろう。我が直々にお前らの相手をしてやろうではないか。くくく、あとひとつ言っておくが…我は会議場で椅子にふんぞり返った事は1度もないぞ。いつもちょこんと座っているぞ、くくくくく。」

 カッコ良いのか悪いのかよくわからないセリフを吐いた我とバカ2人を連れて軍の訓練場、コロシアムのような場所へと移動した。


 ちなみに他のフィアを含む魔王9将軍達は、勝敗のみえている戦いよりも、実利のある我の案をこれから煮詰めるとの事で誰も見に来なかった。しょぼん。


 そして我とゴルドバともう1人の男はコロシアムの真ん中で対峙する。コロシアムの観客席にはいつの間にか噂を聞きつけた軍の連中で埋めつくされている。


「さて、ゴルドバとやら、我とどういうルールで戦うのだ、貴様達に決めさせてやろう。ハンデだ!」

 二人は我の目の前で相談しだした。しかしある程度内容を決めていたのだろう、すぐにルールという名のバカ案を提案してきた。


「まず、あんたは第10界魔法まで使えるらしいからすべての魔法は禁止だ! もちろん補助魔法などもな。そしてお前が所持する全ての武器も使用禁止だ、魔剣とか使われたらたまったもんじゃないからな。そうだな、武器はそこに落ちている木の模擬剣のみで戦え! そして俺たちは魔法有り、魔道具有り、魔剣有り、加勢有りの何でも有りのルールでいいな! そして負けたら魔王は俺の情婦となれ! どうだ? 魔王、このルールに準じて俺たちと正々堂々と戦うんだぞ!」


「……。」

 めちゃめちゃなルールを押し付けてきて、正々堂々とは…よくそんな汚い提案を恥ずかしげもなく堂々と自信満々に言えるなコイツ! さすが血の滲むほどのゴマスリ土下座を経て上り詰めただけはあるな。


「まあ、良かろう。そのルールに敢えて乗ってやろうではないか。」

 そう言って我は地面に落ちている木の模擬剣を拾い上げた。


「ぎひゃひゃひゃひゃ、言ったな! このルールを引き受けたな! バカめ! だから脳筋などと揶揄されるのだ貴様は。おい、許可を得たぞ降りてこい、俺に加勢しろ!」


 小躍りをして喜ぶゴルドバの指示に従って、観客席から見ていた兵達がコロシアムにぞろぞろぞろぞろ降りてくる。ざっと100人ぐらいか…ゴルドバの息のかかったゴロツキといったところか? まあ、我が軍にこんなにも腐った輩がいると分かっただけでも収穫があった。しかも今すぐにくその役にもたたない膿供を狩りつくせるとあってはな。


「どうした魔王? さすがにこの人数にはびびったか? お前は魔法も使えないしな。散々いたぶってじっくりねっとり慰み者にしてやるよ。体と顔だけはいいからなぁ。前々からふんぞり返ったお前を蹂躙してやりたいと思っていたのさ。くひひひひひ、興奮するぜ~、へへへへっ。」


 …いや、魔法を使わないというルールであって、使えないわけではないからね。いざ自分の身に危険が迫ればすぐ解禁するよ。当たり前だろう。こんな口約束の試合のルールにどんだけ拘束力があると思っているのだこいつは。


 真性のバカなんでわないだろうか…いや、それともこの図太すぎる度胸、案外大物なのか?

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