第47話 学校を休んだよ
泣き疲れて寝てしまったユウタを部屋に運びベッドに寝かした。
「ふっ17歳にしては幼い寝顔だったぜ、魔王も見てくるか?」
「ふん、そんなユウタの寝顔なんて別に見たくもないわ。」
そんな軽口を交わしながら俺たちはリビングのソファーでお互いに向き合って話し合う。
「ユウタも無理をしていたんだろうな、やっぱり。」
「ああ、我らの世界では17歳なんていうのはすでに立派な大人の部類なのだが、この世界、日本では20歳が成人らしい…。まあ20歳というのは遅いとは思うのだが、ユウタは15歳から親元を離れてずっと1人で生活をしているらしいからな。」
確かに俺とユウタの歳はそんなに変わらないのだが、なんというかこちらの世界は精神的な成熟度が俺たちの世界と比べて幼いと感じるのだ。17歳のユウタが10歳11歳の幼子のような感覚なのだ。それは異世界で初めてmissionに挑んだ時のステータスにも現われていたしな。
そんなユウタがとある理由で親元を離れて暮らしている。そのとある理由はかたくなに話さないのだが…10歳の幼子に親の愛情が注がれない状況は歪んでいるように思う。
「ふん、我なんぞは親の顔も忘れたわ。愛情があったかどうかもな。」
魔王はそう言って、そんな境遇なんか珍しくもないと言わんばかりだが…。俺は平凡な家庭で普通に親の愛情を受けて育っていたので、何だか言い憚れた。
「それで、ユウタの状況はどうなんだ? わかるのか?」
「相変わらず呪術的なものは感じられないが、クロちゃんとやらの言葉が気になるな。」
その言葉とは、ユウタが入っていた
“まだ寝てるのかよ”
“いいかげん目を覚ませよ”
“全然覚ましてねーよ。まだ寝たまんまなんだよお前は”
“くくく、くわはははははははは。笑わかしてくれるぜ、お前なんかに特別な能力なんて宿ってるわけねーだろう。もちろん別人格も宿していない。”
“お前はお前が思っている以上に無能だ。お前1人では何もできない役立たずなんだ。それを思い出せ。”
“思い出してからが、お前の本当の…。”
俺にはさっぱりわからん。
「ユウタに孤立を促しているように感じられるのだ。お前は大した事の無い人間だからと。なぜにそこまでユウタを貶めたいのかはわからんのだが、これはユウタの両親との関係に絡む事なのかもしれんな。」
「ユウタは頑なに親の話をしようとしないしな…。なぜ一人暮らしなのかも。」
「ひょっとしたらクロちゃんはユウタの潜在意識が表面に現れた、具現化された存在なのかもな…。」
「潜在意識か…。そうなると俺たちに出来る事はないか…。」
「いや、我達だからこそ出来る事がある。もしもの時のために我が開発中の術式をユウタに施しておこうと思う。あと少ししたら完成する予定だ。その時には勇者の魔力も込めさせてもらうぞ。二人でユウタを守るのだ。」
「ああ、そうだな。俺たちで出来る限りの事はしてやろう、ははは。」
「ん? 何を笑っておるのだ、勇者。」
「いや、なんか俺と魔王がユウタの親みたいだなって思ってな。歳が近いのにな俺たち。」
「ふふ、確かにのう。勇者と夫婦というのが気に入らんが。」
「ああ、俺にも魔王の旦那は恐れ多すぎるわ。」
お互い笑いあって、帰り際にユウタの様子を伺ってそれぞれ異世界へと帰った。
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いつの間にか僕は寝てしまっていたようだ。朝起きたら8時を回っていた。今日は学校を休もう。何か頭はスッキリとしているのだが、体が重い…いや、正直に言おう。今から準備して家を出ても遅刻するぐらいなら、さぼろうと思っただけだ。
体調が悪そうな演技で学校に電話をして、休む旨を伝えた。あるあるだよね、体はエラくても声が元気だと嘘だと思われると嫌だからちょっと弱々しい声で電話するっていう。まあ、家に母親がいればそんな演技しなくてもいいんですけどね。
僕はトイレにいってからまたふとんに入った。ちょっとうろんげになった時にふと昨日の事を思い出してしまった。
「ぐおおおおおおおあああああああああ。」
ぼくはベッドをゴロゴロと転がりまくっり、雄たけびをあげた。
恥ずかしい。二人の前で号泣してしまった。しかも泣き疲れて寝てしまうって…子供か! わしゃ幼子か! 17歳にもなって恥ずかしい。
…でも昨日は嬉しかったんだ。嬉しかったのになんだが涙が溢れて止まらなかった。体の奥底から湧き上がる感情を押しとどめる事ができなかったんだ。
何年かぶりに感じた人の温もり、比喩じゃなくて物理的な温もり…誰かに抱きしめられるなんていつぶりだろうか…両親に抱きしめられた記憶もないのに…。
それがいつも残念な大食い魔王事カミラさんに…。甘いもの大好きスイーツバカの勇者事レインさんが抱きしめてくれたもんだからつい…。
まあ、今更済んでしまった事はしょうがない。次に会うときっていうか、もう今日なんだけど会うのが恥ずかしいな…昨日のお礼に夕飯は奮発してあげようか…でもそんなにあからさまに…などと考えているうちに寝てしまった。




