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第43話 勇者魔王の心持ち

 今日は久しぶりのmissionだ。といっても言わなかっただけで引っ越しを進めながらもたまにこなしてはいたんだよ。


 それで今は焚き火を囲んでレインさん、カレンさんと雑談をしている。雑談というと軽く感じるが、二人の考えを聞くという僕からの質問だ。


「もし、このmissionで人族を殺せと言われたら殺せます?」

「我は別に躊躇せんぞ。みな殺しだ。」

「俺も…んーそりゃあ、みんな悪人ならためらいもないだろうが、善良な女子どもがいるのもな…ってそうは思ってもいざとなれば俺もためらいはしないな。」


 二人は殺しちゃえる派だな。


「それが、自分の親しい人がいてもですか?」

「我は別に躊躇せんぞ。たとえ親しくてもだ。」

「俺も…いざとなれば殺す。」


 別にその意見を聞いてもショックではない。ドラマとかにありがちな世の中悪い人もいるが良い人もたくさんいるじゃないですか、それなのにみんな一緒くたにするんですか! 的な発言は見ててイラッとする。


 正論に酔っているくそだなとさえ思う。そんな誰にでも想像がつく当たり前の発言はただ自己保身の為の言葉にしか過ぎない。そう発言する事により自分は悪くない、自分のせいじゃないとアピールしたいだけなのだろう。


 しかし、そう発言してしまう気持ちがわかってしまうから余計に腹立たしい。そう言わないと自分の中の価値観、倫理観が崩れ去ってしまい、自分を形作れなくなってしまうからだと思う。


「命のやり取りの場では一瞬のためらいが自分の生死を分ける。後悔、反省は生きているからこそ出来るというのは名言だね。死んだら終わりだ。だから俺は俺かそれ以外かという考えだ。」

 今まで何度も死線をくぐり抜けてきたであろうレインさんが言うと深みがあるな。


「奇遇だな勇者、我も我か我以外かという考えだ。善だ悪だという2択そのものが自分に対しての欺瞞だな。そもそも2択というなら自分が善だろうと悪だろうと結局行き着く先は自分か自分以外という答えしかない。」

 おお、何かひさしぶりにカミラさんの魔王っぽいところみたって感じだ。さすが128歳貫禄がある。


「それじゃあもし僕でも殺します?」

「我は別に躊躇せんぞ。」

「俺も…いざとなれば殺す。」


「もう二度と地球のご飯が食べれなくなっても僕を殺します?」

「ぐっ…わ、我は別に躊躇せんぞ。」

「…お、俺も…いざとなれば殺す。」

 ぐっとか躊躇してるじゃん…


「まあ、そんな時がもしきたらせいぜいあらがわせてもらいますよ。へへへ、あわよくば僕だけでも見逃してくださいよ~、ぐへへへ。」

「どんどん卑屈になっていくなお主…。」

「なんか可哀想になってくるな…。」

二人の同情を最大限にあおった後、立ち上がって火を消した。



「それじゃあそろそろ休憩を終わりにして、missionを片付けるか。」

「そうだな、今回もユウタの見せ場があるようだから頼むぞ。」

そう言って歩き出す二人の後を僕は追いかけるように走り出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 missionが終わって僕の部屋に帰ってきた。


 しばらくリビングで二人と軽食を食べたりして時間をつぶして各々の部屋へと帰っていった。カミラさんの部屋からテレビの音が聞こえているからまだ寛いでいるのだろう。あの丸いソファーをものすごい気に入ってくれていたからな。


 僕はベッドに横になる。まだ今からお風呂に入って洗濯をするので眠りはしないのだが…。


“まだ寝てるのかよ”


“いいかげん目を覚ませよ”


 あの時の声が頭に張り付いて離れない。一人でいる時…主に寝る前になるといつも思い出してしまう。一体なんだったんだ…どういう意味なんだ。


 あれからカミラさんやレインさんと一緒にいる時でも、また真っ暗な場所に連れて行かれて一人ぼっちになってしまうんじゃないかという恐怖が湧き上がる。


「これじゃあ…17歳だっていうのに、幼子みたいじゃないか…。」

僕は右手を伸ばして明かりにかざす。


「ユウタは幼子だぞ、我にとってはひねりつぶすのも簡単な程になくくく。」

カミラさんが僕の部屋の入り口に居た。


「あっカミラさん、ノックくらい…」

と言って僕が起き上がろうとしたら


「そのまま、寝たままでいいぞユウタ。寝ておれ。」

そう言って僕が寝たままの状態でベッドに腰掛ける。


「ユウタは幼子だから我が一緒に添い寝してやってもいいぞ、ふふ。」

カミラさんはそう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「カミラさんと一緒に寝れるなら引っ越しついでにもっと大きいサイズのベッドをに買い換えればよかったですね。このベッドじゃ2人一緒に寝るのもキツイですから、寝相の悪いカミラさんが落ちてしまいますからね、ふふ。」

 カミラさんがベッドから落ちるところを想像して思わず笑ってしまう。


「もう寝るのか?」

「いえ、今はちょと疲れたので横になっているだけでお風呂に入ってから洗濯をして寝ようかと…あっ」

カミラさんが僕の目元に優しく手を当ててくれる。冷たくてすべすべしてて気持ちいいな…


「今は何も考えず、そのまま眠ればいいぞ…。」

カミラさんの言葉に、僕はなんだか気持ちが良くなってそのまま眠ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「寝たか?」

「ああ、我の睡眠魔法でスンッと寝たぞ。」

我と勇者はユウタの部屋の電気を消してリビングのソファで寛ぐ。


「呪いの類ではないのか?」

「いや、我が視たところ呪術的なものではなかったの。」


「ふん、明らかに精神を害しているようにみえるのにか?」

「まだそこまでひどくはなっていないだろう。その兆候がみられるというだけで。」


 最近のユウタは明らかに元気がなかった。もちろん本人はいつも通りに振る舞ってはいたようだがな。しかし我や勇者にはわかるのだ、ユウタが思い悩んでいるというのがな。


 ただの悩みだったら誰にでもあるものだから気にも留めないのだが、ユウタは不自然な感じがするのだ。例えるのなら、だんだんと得体の知れぬ黒い霧に覆われていくような感じだ。しかしまだそこまでではない。足の小指程度が覆われているぐらいの感じだ。


「やっぱりあの気を失った時が原因だな。」

「ああ、間違いない。」


 前にコロッケとメンチカツを食べていた時にユウタは気を失った。その時に抱きかかえた時、奇妙な感じがしたのだ。一瞬ユウタがもぬけの殻になっているような…中に何も宿していない状態のように感じたのだ。


 本当に一瞬だったのだがな。あれからユウタは何かに怯えているように見える。本人は意識を失った時の事は覚えていないというのだがな。


「どうする? 魔王。」

「うむ、今しばらくはこのまま様子を見る。一応対策になるかどうかわからんが我の術式をユウタに組み込んでみるか。今日はこのまま準備をするために帰る、それではな勇者。」


勇者は頼むぞと言って、我は自分の部屋のクローゼットを通って魔国の我の部屋へと戻る。


 さて効くかどうかは別にしてユウタのためにできる限りの事はしようではないか。我は早速準備に取り掛かった。




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