第40話 コロッケとメンチカツ
今日は日曜日だ。また陽気な家族が踊りだす時間になってしまった。この音楽を聴きながら作る料理はちょっと憂鬱になるな…。
ああ、明日から学校が始まるのかという気持ちと、ああ、明日からまた料理を大量に作らないといけないのかという気持ちが一つに合わさって僕の精神がゴリゴリ削られていく。
というわけで今日の夕ご飯はコロッケとメンチカツという一般家庭における中堅スターの登場です。決して大スターではないけど子役からコツコツと積み上げた人気で大きくなってもそこそこ人気を保っていますみたいな地位だ…あくまでも僕の個人的な意見です。
迷いに迷ったのだが、本町にあるお肉屋さんのコロッケとメンチカツを買ってきました。コロッケなら自分でうまく作る自信はあったのだけど、メンチカツが自信がなかった。じゃあメンチカツだけ美味しいお肉屋さんのを買ってこようかなと思って行ってみるとコロッケもすんごく美味しそうだったからもう全部まとめて買っちゃいました。
牛肉コロッケ30個+30個+僕2個、肉汁あふれるメンチカツ30個+30個+僕2個の合計124個。持って帰ってくるのがめちゃ大変だった。
本当なら近くに有名なマカロンのお店もあったから買って帰りたかったけど、さすがに荷物が多いから持てないので諦めた。だから今日はデザートはなしだ。存分にコロッケとメンチカツを味わうが良い!
という説明をしたのだが、デザートが無い事による大ブーイングもなんのその、コロッケのうまさと最強メンチカツをアピールしたらまるでブーイングなどなかったかのような大絶賛が始まった。
「えっこのコロッケというのは原料は本当にあのジャガイモなのか?」
「うそじゃろう、まさかあのジャガイモがこんなうまうまな飯になるのか?」
出ました異世界名物、ジャガイモ最強説。絶対に揚げて塩を振るだけのポテトとか出るやつだね。うまいけれどもよ。だけど揚げたポテトは最高に体に悪い食べ物らしいよ…うまいけれどもよ。あっ15話でもポテト体に悪い説言ってたわ。どんまい僕!
「コロッケは僕も大好きですね。ほくほくしてて油で揚げてはありますけどクセのない味というか優しい味わいで飽きがこないというか何個でもいけます。まあ2個しか食べれませんけど。」
二人には30個も買ってあるからバクバク食べてるけどね。ハクション大○王か!
あっ、間違えたハクション大魔○はハンバーグだった。ずっと勘違いしてた。コロッケが好きなのはキテレ○大百科のコロ助だった。
「ぐおおおおおおおおおな、なんだこれは…肉肉しいずぞぞぞぞぞ」
レインさんが肉汁をすする。
「うまうま、これぞ肉の醍醐味ちゅーーーーーー」
カミラさんは肉汁を吸ってる。
そうなんだよな、ここの肉屋さんはメンチカツが有名なだけあって肉汁が半端なく溢れ出る。肉の味がダイレクトに伝わってガツンとくる味なのだ。僕も初めてここのメンチカツを食べた時には驚いたもんな。いままで食べていたメンチとは全然違う。何個でも食べられるぞ!
まあ2個しか食べれませんけどね。やっぱり味が強いだけあって僕は2個で十分満腹中枢メーターが限界まで振り切れてしまうかな。コロッケ2個とメンチカツ2個、ごはん、チキンサラダを食べたらお腹がもうパンパンです。
二人の胃袋には限界がないのか? というぐらいよく食べるな〜本当に。メンチにソースをかけたり、ケチャップをかけたりと味変にも果敢にいどみご飯も進みまくっているようだ。
食べ終わったぼくは片付けをしながらも、美味しそうな顔をして食べている二人を見る。今日は僕が作っていないのに自分の事のように嬉しい気持ちになる。
こんないつもの光景が……
ーーーープチッーーーーーー
あれ? 真っ暗だ停電?
でもおかしい、二人の気配がしない。また僕だけ異世界に飛ばされたのか?
?????????????????
おーい、みんなー、カミラさん? レインさん?
自分の声が出ているかどうかもわからない。
真っ暗すぎてだんだん上と下の区別も付かなくなってきた。
“まだ寝てるのかよ”
えっ何?誰の声?
“いいかげん目を覚ませよ”
はっ?訳がわからない…なんなんだこ…
…思考が遠のく…考えが…まとまらな…
ーーープチッーーー
「おい、どうしたユウタ! 大丈夫か?」
「気づいたかユウタ!」
僕の目の前にはレインさんとカミラさんが心配そうに僕を覗き込んでいる。ん、どゆこと? えっ床に寝ているみたいなのだが…。
「僕はいったい…どうしたんですか?」
「いきなり倒れたんだ、椅子に座ってたのに。」
「痛いところはないか? ユウタ。」
僕が倒れた…? 全く覚えていない。意識がなかった。
「どのくらい、僕は意識を失っていました?」
「10秒ぐらいか…倒れたんで俺が直ぐに駆け寄ったんだが呼びかけても返事がなかったからびっくりしたぞ。」
「我も駆け寄ってビンタしたのだが、反応がなかったぞ。」
いや、ビンタしたんかい! どうりで何か頬がヒリヒリするなとは思っていたけどもよ。カミラさんビンタに峰打とか無いですから…手加減したっていってもあなた魔王ですから加減を間違えないでくださいよ。僕はか弱い一般人なんでっすからと一応苦情を言っておいた。
「ふふ、ふふふふはははは。」
僕は急に笑えてきた。
「何で急に笑っているんだ、ユウタ? 頭を打ったのか?」
「打ち所が悪かったのだ! 我のビンタのせいじゃなくて打ち付けた床のせいだと思うぞ! 我は悪く無いぞ!」
「ふふ、いえ違うんです。お二人が口元ベタベタのままで真顔だったものですからつい可笑しくなっちゃって。」
「ああ、食事の途中だったからな。それどころじゃなかったんだぜ。」
「そうだぞ、食事よりユウタを優先した我をもっと崇めてもいいんだぞ。」
「心配してくれてありがとうございます。一瞬気を失っただけで今は大丈夫ですから食事を再開しましょう。」
そういって僕は立ち上がり、二人に食事を促した。
二人は気を使ってくれながらまた食事を再開しうまうま言い出した。もう残り少なくなったコロッケとメンチカツをゆっくり味わって食べている。
そんな二人を他所に僕は後片付けを始めながらさっきの意識を失った時に聞いた声を思い出していた。




