第32話 初めての市井練り歩き
我の名はカミラ・カルロッツェ。魔国であるアルメロ国第23代魔王である。
国で一番偉いんだぞ。
そんな私は副官であるフィアに頼み込んで仕事の許可を得た。私からの提案、プレゼンをして訥々《とつとつ》とたどたどしくおどおどと、お願いをして仕事の許可を得た…
国で一番偉いのにだぞ。
我自ら市井を練り歩き民達をねぎらいたいと申し出たのだ。最初は渋っていたフィアも我の熱意に心をうたれて、ため息を吐きながらも了承してくれた。絶対に市井で暴れたり魔法をぶっ放したり破壊したりしないでくださいよと何度も何度も念を押されて、さらにお供を最低1人は必ずつけるようにと言われて了承してくれた。
…我は本当に国で一番偉いのか?
というわけで手始めに城下町に出てきた。我が城の門から出入りするなどとても珍しい事だ。いつもは魔法で空とか瞬間移動した方が早いからな。もちろん城には障壁が張ってあるのだが我には関係ない。
城から出て100mも歩いていないうちからすぐに気づかれて囲まれた。うおっすごい熱気だ。我ものすんごい人気あるのだな。魔王様コールがすんごいわ。まだ1分も経っていないのに民衆に囲まれている。
護衛に連れてきた二人も予想外の反応にめちゃくちゃ戸惑っている。供の1人、魔王11将軍の第7将 ドルツ、身長2m超えのごっつい強面だが気が弱い奴だ。
「か、カミラ様、ど、どうしましょう、こんなに人が…」
「慌てるでない、そこはお前らが我の歩く道を確保せよ。もちろん民に危害を加えるなよ。」
「はっ」
もう一人は実務方のインテリ系だ。名は知らぬ。多分フィアから派遣された者だろう。インテリが仕切ってくれて民衆も道を開けてくれた。その間を我達が通る。
もっとこう、一人一人とふれあいながら練り歩きたかったのだが、ただ単に我を見るだけの練り歩く会になってしまったのが残念だ。左右の民衆に笑顔で答えるだけの人形と化してしまっているような…
我は表には滅多に顔を出さんから珍しいのだろうか? と思ったらインテリが教えてくれたのだが、我の武勇伝が絵物語として発売されているとの事。一応絵姿なんかも売っていて大人気らしい。もちろん情報の秘匿性のために我とは似ても似つかぬ絵姿も売っているらしい。
…我の肖像権は? 著作権による収益はどこに入ってるの? 我には1銭も入ってないのだけれども…。
インテリ曰く全てフィアが管理しているらしい。もちろんお金だけではなく絵物語のストーリーからキャラクターまですべてフィアが思いのままに操って指示を出しているらしい。我の絵物語だけではなく魔国における情報の全てはフィアが統制しておるらしいから魔王様は何も心配せずにお過ごしくださいとインテリが言ってくれたのだが…
えっ本当の魔王はフィアなのか? 裏魔王だったのかあやつ?
全然安心できないのだけど…聞いたら余計に心配になってきたよ我。そのうち消されるんじゃないだろうか我。
もしかして知らぬ間に今現在もフィアに操られておるのでわ…と疑心暗鬼に陥った頃には市井練り歩きツアーは終了した。結局1時間ぐらいで少ししか進めなかったな。まあこれで一応仕事を果たしたか。
城に戻り休憩をするために自分の部屋に戻る。ソファーにドカッと体を投げ出し背もたれに体重を預ける。
「ふううー」
体は全然疲れてはおらぬが気疲れというか、何というか民衆の熱に当てられた感じだ。あんなにも熱狂されるとは思わなんだからな。
黄金のカードを取り出してオープンと唱えた。
すると入金額が表示された。82250円、おお昨日より20000円増えておる。1時間歩いただけでこんなにももらえるなんて。今までは寝てるだけの450円だけだったから44倍もの金額がものすんごく眩しく感じられるな。
よしでは次はと、クローゼットから用意してあった上着をとる。今着ている上着を脱ぎ捨て着直した。う〜んものすごく胸元が強調されておるな。今まで着てたダボッとしたものじゃなくて身体の線にピタッとした上着だ。我の双丘がこれでもかと良い形で強調されている。胸元は開けてはいないけどな。それを着る勇気はまだないな…
こんな服初めて着るから恥ずかしいってもんじゃないのだけれども、ユウタとの約束でいつものやぼったい服でのパレードと、ちょっと女を意識したお洒落な…いやぶっちゃけ男の目を意識した性的な服装でパレードをして入金額の違いを考察しないといけないのだからしょうがないと自分に言い聞かせる。
フィアに服の事を相談してみたら、大賛成してくれたのだ。やっぱり我の服装がやぼったいと思っていたようで昔から進言はしてくれてはいたのだが、全く興味がなかったので聞き流していた。
相談してみたら前から我に似合う服を各種取り揃えてくれているらしかったので、そのコレクションの一部を見せてもらったのだが…引いた! クローゼットには引くぐらいたくさんあり過ぎた…これで一部なのか? お金は?
中にはユウタが好きそうな全身ピッタリとしたスーツやミニスカート、胸元が空きすぎておへそまで空いているV字な服など本当に我に似合うのか? と疑問を呈したくなる服もたくさんあったのだが、そのなかでも比較的オシャレ初心者の我にも着られそうな胸元を強調するだけの服があったので手始めはそれを着る事にした。
我の身体の寸法を測ったかのようにピッタリだった…さすが魔国における全ての情報を統べる裏魔王だ…こわっ!
「う〜む、普段着なれないからちょっと恥ずかしいのだが…次はこれで行ってみるか。」
部屋を出てフィアに会いに行くと大絶賛してくれた。まだまだお洒落初心者どころか見習い丁稚奉公クラスではあるものの服に関心を持ってくれた事自体が嬉しいらしくてものすごく褒めちぎってくれた。
そう褒められると我も嫌な気はしない。
「そうだろうそうだろうとも! 我はどんな服でも着こなせる自信はあるぞ! もっと褒めたたえよ!」
と調子に乗って気持ちよくなりついのけぞって高笑いしてしまった。
さらに賛辞を述べるフィアの眼鏡がキラリと光ったように見えたのは太陽のせいだよな? くもりだけど。




